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2019年06月25日01:00

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「虚構推理 スリーピング・マーダー」本

『虚構推理 スリーピング・マーダー』
<ストーリー>
 妖の巫女である岩永琴子は余命僅かな大富豪の老人音無剛一から奇妙な依頼を受ける。かつて自分は妖狐に頼んで妻を殺害したのだが、子供達に自分が不可能な状況で妻を殺したことを納得させて欲しいというのだ・・・
<コメント>
 バカミスというジャンルがある。もちろんロジカルなミステリなのだけれども、論理やトリックがあまりにアクロバティックすぎて“あまりに現実離れ”した、しかしだからこそ魅力的な作品である。城平京という作家も実はかなりロジカルな物語を得意とし、どんどん可能性を呈示してはこれを次々と否定していくロジックのための物語だとも言える。
 そしてこれがかなりアクロバティックであり、一歩間違えばバカミスとなりかねない。そして思考機械じゃあるまいし、次々とロジックを展開してはこれを否定していく探偵役も異常であるし犯人がこれを唯々諾々と聞く状況も現実的にはありえないシチュエーションだといえる。
 ところが『虚構推理』シリーズがこれをいかに回避しているかと言うと、なんと主人公のコンビを異形の存在としてあらかじめ読者に認識させてしまったのだ。なにしろ幼い頃に妖怪の知恵の神となって片目・片足を失った少女と、人魚と件の肉を食べたために不死身の肉体と未来決定能力を持った青年というこれ以上はありえないアクロバティックなコンビとして2人が活躍するのだ。そしてこの物語の最大の肝は事件の真相をあっさりと妖怪や死人から聞きだしてしまい、あらかじめ答えを知ったうえで事実の上に虚構の推理を展開させて皆を納得させてしまうということ。もう、二重三重の論理のアクロバティックが行なわれるのである。
 今回もメインとなる「スリーピング・マーダー」も虚構を積み重ねながらもそこから関係者から真実を引き出していくという駆引きがぞくぞくさせられる。

虚構推理 スリーピング・マーダー (講談社タイガ)
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