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2020年06月06日23:50

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妄想物語

〜二人だけの音楽室〜

「君ねえ 入っちゃ駄目だとは言えないけどね 毎週毎週忘れ物をするにも
程ってものがあると思うんだけど」

今日も学校の警備員さんに校門のフェンス越しに言われてしまった
毎週日曜 学校に来ているのは僕と外堀さんだけだから 普通だったら
こっちの方がおかしいって思いそうなもんだけど この警備員さんは
職務に忠実と言うか真面目と言うか

「すみません…これよかったら飲みませんか?」
缶コーヒーを差し出すと

「賄賂?貰わなくても訪問者帳に書いてもらえれば入れるから」
ほんとにお堅い

「さっき自販機で当たっちゃったから」
ようやく受け取ってくれた


いつものように音楽室がある二階への階段を上がるそして廊下に入ると
いつもとは趣が違うメロディーと歌が聴こえてきた フランス語かな?
今日みたいな曇天の日によく似合う

「こんにちは!今日も来ちゃった」
外堀さんのピアノと歌が止まる

『あっ…ここんにちわ‥っす』
あわてて楽譜をとじてる

「いまさあ ピアノ弾きながら歌ってたの映画のシベールの日曜日の
やつでしょう?あっ やつじゃわかんないよね 主題歌っていうか
挿入歌っていうか そんな感じ 内容はよく知らないけど」
外堀さんが驚いた顔してる

『そそっす この映画‥大好きで‥日曜日のこの教室で聴いてもらえ‥
いいえ‥その‥ピアノで歌えたらいいかな‥って』

「日曜日の音楽室…なんかいいね 秘密っぽくって」

『そっす‥ 映画が幻想的で切なくて‥年の離れた‥いや汐ゐ君は
離れてないけど‥あっ違う‥それは関係なくって‥男女の疑似的親子
みたいな関係とか 恋‥人‥同志とか そんな二人の‥日曜だけの逢瀬‥
が‥』

「ねえ もういっかいピア弾きながら歌ってもらえる?
さっき聞いてて なんか心地よかった」

『い今‥?』

「うん 今」

『汐ゐ君の‥前‥で?』

「うん」

『ちょっとだけ‥時間‥ください‥落ち着きたい‥から』
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