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2020年03月08日22:24

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妄想探偵社

〜祇園〜

京風お好み焼きが来るまでの間ぼーっと店内を眺めていて
天井から紐に吊るされゆらゆらと漂うUFOが目に映り
僕は思わず声をあげた

「あーっ!」

あちこちに設置されている‥と言うか座っている
冷や汗の様な結露が付いている人形やマネキンたちが
僕の声の振動でピクっと動いた気がした

『先生 何か思い出されたんですか?』

伴尾君が僕に訊いてきた

《あーっ!?》

いつの間にか奥の部屋にいる藍尾君が何か面白い物を
見つけて大声をあげた
またマネキンたちがピクっとした気がする

「いやあ あのね さっき伴尾君が〈ここはタイムスリップ
じゃなくて時空の境目みたい〉って言ってた事を
あのゆらゆら揺れるUFOを見て間違いないなって
想ったんだ」

ひょっとこの人形が椅子からずり落ちた

『どういう事でしょうか?』

「目撃されたUFOってどんな動きしてる?」

『そうですねえ まず飛行機みたいに飛んでる音がしなくて
空に静止していたかと思うとあっという間に消えちゃう‥』

「そうなんだよ 音がしないのは見えているUFOが実体の
無い可視化された空気の塊みたいな物だからじゃないのかな
って思うんだ
だいたいこの地球って世界は物体が動くにはエネルギーか
風力か磁力が必要でその移動には音を伴うんだ
それぞれ動力音と風切り音と振動音がね
音がしないエネルギー…考えられるのは引力かな地球の
でもこれって磁石みたく引力に反発する力を生み出さなきゃ
いけないわけだけど 地球にやって来るまでの宇宙空間では
どういうエネルギーを使っていたのって話さ
だからやっぱり魂みたいなものが架空の物体を形成して
サイコキネシスみたいに操っているんだよきっと」

こんどはおかめがずり落ちた
ちゃんと座らせる様に店員さんに言っとく必要があるみたいだ

《お待たせしましたー》

『ありがとうございます そこに置いといてください
実体がない‥ホノグラムみたいですね
じゃあ あっと言う間に消えちゃうのはどういう訳ですか?』

伴尾君が三人分のお箸を取り訳ながら言う

『わっおいしそう オムレツみたいなお好み焼きだあ
いっただきまあーっす』

いつの間にかテーブルに戻っていた藍尾君が即食べ始めた

「消えるというより地球に存在する異次元への境目を
通り抜けただけだよ そうだろう? さっき藍尾君が
向こうの部屋に移動すると見えなくなっちゃったのと同じさ」

『そうかあ なんかスッキリしました いただきまーす』

藍尾君と伴尾君がお好み焼きを美味しそうに食べるのを見て
僕もビールをグッと一口飲んだ

店内の人形やマネキンたちの冷や汗の様な結露が
ビール瓶と同じくらいにびっちょり付いている
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