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2020年02月24日00:52

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妄想探偵社

〜南禅寺〜

9月の京都は夏と秋の境目
急な雷雨が通り過ぎたかと思えば
抜けるような青空のずっと高いところに雲

山門を降りた時どこからかゴーっという音がした
真上から聴こえたかと思い空を見上げても
何もない‥というか空の端っこに飛行機が見えるだけ
えっ!?この感覚って初めてじゃない気がする‥

「伴尾君どうしたのかな?神妙な顔して空見上げたりして」

『あっ 先生なんでもないです‥』

「なんでもあるっていうっていう感じがするけど」

『さっき ゴーっていう音が空からして見上げたんですけど
なにもなくって それって初めてじゃないような気がして‥』

「飛行機見えた?」

『はい 音がする方向とは違う空の隅っこに飛んでました』

「ふむふむ それはね伴尾君が過去を覗いちゃったんだよ」

『過去を覗くってタイムマシンに乗ったみたいにですか?』

「そう さっき伴尾君が見た飛行機の過去を見たんだよ」

『どういう事ですか?』

「タイムマシンに乗らなくても光も音も速度があるから
伴尾君は飛行機の機影は超一瞬 ゴーっていう音は10数秒
過去を見聴きしたって事」

『頭がこんがらかってきました』

「えーっとね
飛行機の機影が伴尾君の目に飛び込んで来る時間は
光の速さとほぼ同じなんだけど 厳密に言へば光には
1秒で地球を7週半回っちゃう速さというものが存在するので
5千メートルくらいの高度じゃ超一瞬だけど過去の機影を見てる
ことになるんだ 理論上はね」

『思考回路が寸断されました』

「だよね あっそうだ 光の速さでもっとわかりやすい例がある」

『私でもわかりますか?』

「うん 月って光が1秒で地球7回り半する距離より離れているから
1秒ちょっと前の過去の姿が地球に到着してるんだよ」

『そうですか‥今思考回路リカバリ再起動中です
ではゴーっていう音が飛行機とずれているのはどういう訳ですか?』

「おーっ リカバリ終了 実にいい質問
音の速さはね1秒間に331メール進む速度だから 5千メートル
上空で飛行機が出したゴーっていう音はだいたい10数秒かかって
地上に着く訳で 飛行機は音が聴こえてきて見上げた位置から
10数秒先のところまで飛んじゃっているんだよ
光の速さと音の速さのズレが伴尾君の違和感の正体だよ」

『はい なんとなくわかりました でも初めてじゃないような‥』

「それデジャブ…
って言いたいところだけどそうも言いきれないかな」

『デジャブじゃないとすると何でしょうか?』

「時間と空間の歪みというか隙間というか割れ目というか
 とにかくそれを通り抜けた瞬間が過去だからね」


《これはやっぱりこの人たちの記憶が消えてない気がする》

苗木と百合谷チームの報告を受けたリーダーが偵察に飛ばした
牛若丸はこの人たちを祇園に誘導するミッションに入った

《そこのお客さんたち どちらまで行かれるんですか?
祇園までだったら四条辺りを案内しながら1800円で
いいですよ》

寺の門前のハイヤー待機場所でハイヤーごと疑似変身した
牛若丸が妄想探偵社の三人に声をかけた

「おっ 電車で移動するよりいっかな」

妄想探偵社代表兼名探偵疋田が即反応する

『先生‥このハイヤー運転手 なんか変です
後ろのハイヤーに頼みましょう』

藍尾君の直感で…というより誰が見たって牛若丸の着ぐるみを
着たハイヤーの運転手は変だと思う‥先生に耳打ちした

《ミッション成功…》

牛若丸は実体のない疑似変身のハイヤーではこの空間の人たちを
乗せる事はできないしその世界のルールでもあるので
後ろのハイヤー運転手に暗示をかけていた

『運転手さーん 祇園まで案内付きで1600円でいいですか?』

この状況で200円値切る藍尾君のしたたかさに疋田は感心する

「えっ!? あれっ!? なんだかわかんないけどいいよ」

こうして妄想探偵社ご一行は祇園へと向かった
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