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2020年01月14日23:18

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妄想探偵社

〜京都まで〜

もう丹波口まで来てしまった
僕のあの人達の記憶はいつ消されてしまうのだろう
心配しているという事はまだ消されてないのか‥

『あー先生!まだ宿に帰られてなかったんですね』

一気に現実に引き戻す聞き慣れた声が聞こえた
藍尾君と伴尾君だ

「あのねぇ それはこっちのセリフ
君達は嵐山のフードコートに寄り道した後
とっくに宿に帰っているかと思ったよ」

『それがですね みたらし団子にお焼きにお煎餅に‥
とにかく魅力的なお店がいっぱいあってですね‥』

伴尾君にしては歯切れが悪い

「結局全部食べたんでしょ?」

炭水化物パーティだなこれは

『はいっ!』

藍尾君は歯切れが良すぎる ていうか素直すぎる

『先生 ひとつ質問していいですか?』

藍尾君はだいたい想った事はストレートに発言するのに
こう言う前置き的お伺いがある場合は要注意だ

「何かな?」

『さっき〈‥こっちのセリフ〉っておっしゃいましたけど
ふつう先生だったら〈‥僕のセリフ〉って言うと思うんですけど
ひょっとしてあちらの座席に座られてる素敵な女性の方と
ご一緒だったのではないですか?』

さすが我が探偵社に所属する社員だ 天然々々とあなどってはいけない
そう ついさっきまでは通路を挟んだ向こうの席で
苗木さんに全部訊いておこうとあれこれ質問して
〈あなたに残る私の記憶を消したくありません…〉と言われ
沸騰した頭を冷やす為に反対側の座席に移って外を眺めたんだけど

『妄想探偵社の方達でいらっしゃいますか?
初めまして 私は曳田さんの古くからの知り合いで祇園に住む
苗木と申します
京都でばったりお会いするなんて奇跡の様だと話していたんです』

藍尾君と伴尾君が現れてから今の苗木さんのセリフまで
何か違和感を感じていたけどそれがなんであるかわかった
二人はもう渡月橋までの出来事の記憶がないんだ
そうか この空間でのパートナーの安土さんに消されたんだ
そしてそれを苗木さんが確認しているんだ

列車は梅小路京都西を出た もうあと一駅もない

『わーっ ロマンティック!
じゃあ今日は私達 先に宿に行きますからごゆっくりしてください』

藍尾君と伴尾君にそう言われてて僕はすぐに応えた

「いや彼女はそんなに長くはいられないんだよ」

二人は顔を見合わせて苗木さんに訊いた

『じゃあ ご一緒できるのはどれくらいですか?』

苗木さんが応えた

『京都まで…』
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