〜渡月橋〜
京料理を堪能して店を出る頃には
嵐山一帯に夜のとばりがおりて
山は黒い影となり
川は黒い絨毯となっていた
伴尾君が落ち着かないそぶりなので訊いてみた
「どうしたのかな?伴尾君」
『えーっと そのおー』
伴尾君のこういう反応は珍しい
『ごめんなさい 私が探偵事務所で今回の依頼をした時
嵐山で鵜飼を観る事を条件にいれました』
「えっ!?嵐山で鵜飼?」
江成さんの意味深な条件の謎解きは後にするとして
とにかく驚き そして興味が湧いてきた
『はい 舟もチャーターしてあります』
江成さんの段取りの良さにこれは単なる人探しじゃないなと直感する
で 今度は藍尾君がうかない顔になっている
「どうしたのかな?藍尾君」
『舟ってこの流れの中をいくんですよね』
「違うよ ここいら辺りは保津川で下流の桂川までは普通の川だけど
鵜飼を観るのならおそらく堰の上流で流れの穏やかな
大堰川から上桂川の方だと思うよ ねっ 江成さん」
『はい 先生のご推測のとおりです』
僕は《先生のご推測》という言葉にテンションが上がり
藍尾君も《流れの穏やかな》という言葉からカリブの海賊を連想し
アトラクション系的なテンションが上がった
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