〜十石橋〜
真上の青空の遥か向こうから
雷鳴が聴こえてきた
低気圧一過の京都は真夏の様な暑さで
外国から来た観光客は木陰の下の階段に腰を下ろして
侘び寂びの京都にこの暑さはアンビリーバブルといった表情
《今の季節 京都に来たら雷雨に気をつけておくれやす》
祇園に住む知り合いがそう言っていたのを思い出した
先を急ごうと声を掛けようとした藍尾君と伴尾君は
すでに観光地第二段の小芝居を始めていた
『百合谷さん‥百合谷さんのお姉様が妹さんを探される理由を
差支えなければお聞かせ願えますでしょうか?』
橋の向こうに伴尾君と立っている藍尾君が
反対側の欄干近くで川を眺める百合谷姉に改めて訊いた
伴尾君は百合谷姉の一言一句を聞き逃すまいと
藍尾君の後ろでメモを取っている
『そんな事より 私さっき佐良さんに似た人を見かけたんです‥』
『えーーーーーっ!?なんでクライアントさんが京都まで?』
予期しない百合谷姉の発言に藍尾君と伴尾君がまた絶句する
《へぇーーーーーくちょん!》
橋の下に雷から避難していた拝観料金収受の彼女が可愛いクシャミをした
僕は彼女達の小芝居を遠巻きに見ていて
それが何であるかはかは判らない違和感を覚えた
ログインしてコメントを確認・投稿する