ふと湧き出る想い

〜僕のあるある〜

『ようっ！久しぶり！元気してた？』

この段階で目の前にいる相手の名前が
まるでこの言葉が引き金になった様に
脳みその奥深くの隙間の暗闇に落ちてしまい
もはや自力では救出できなくなる事が
往々にある

《曳田は今何してんの？》

まずい
相手は自分の名前をしょっぱなから披露して来た

『今　東京に勤めてんだ　場所はねえ〜』

どーでもいい且つ広範囲で説明を要する自分情報を
まくしたて時間稼ぎをいる間に
僕の脳みその中では膨大な数の顏と名前のデータで
トランプさながらに神経衰弱が始まっている

めくってもめくっても一致しないでデータを伏せる
データ５回めくって一致しない時は作戦を変える

『そー言えばこの間の飲み会のメンバーって誰と誰だっけ？』

話題を脈絡もなく変え
確か前回の飲み会のメンバーに居た事を思い出し
相手からメンバーとしての己の名前を引き出そうと試みる

《えーっと　俺と〜》

失敗した
第三者に言わせない限り相手が自分で名前をいう訳がない

万事休すになりかけた時　救世主が現れた

「おーっおーっ！曳田に駒田！こんなとこで何やってんだよ」

そうだそうだ　駒田だった

『たった今　駒田とバッタリ会ってさあ　俺と駒田の近況をさあ
まず駒田から聞こうと思ってさあ　でも駒田がね〜』

もう決して忘れまいと必要以上に思い出させてもらった名前を連呼する

『そうそう　この前の飲み会　お前…も…居たっけ？』

まずい
こいつの名前も顏を見た瞬間に
脳みその暗闇に落っこっちゃった