お岩さまモドキ

　数日前から眼のあたりがくしゃくしゃし、そのうち、顔のあっちこっち、さらに首といふか、喉のあたりももやもやして来、かゆくなって来た。手鏡で見てみると、あっちこっち赤くなってゐたり、ちょっとふくらんでゐたり。たゞでさ見場わるき面相が「ギャッ」、お岩さまもどきである。慌てゝ皮膚科のある病院に駆け込んだ。
　ていねいによ〜く調べてくださり、結果、数日前にめったにしない庭の草むしり、それも前住者=家主者の残して行った紫露草、緋扇、どくだみ、ほたるぶくろなどを摘んだり、ほんのちっょとのま、かまったりしたせゐと判明した。
　前住者は庭つくりに興味があった人らしいのだけれど、途中でやめてしまったらしい。庭石は四、五枚打っただけ、残り数枚は庭の隅に積んだまゝ。池は築山が崩れて草蓬々。軒下の沓脱ぎ石は外来植物に覆われ、そのほか所々に大きな石が、据えたのか、運び込んだまま転がしたなりになってゐるのか。
　ま、お化け屋敷になりかゝってゐるのを、そのまゝ、おもしろがって住んでゐるのだけれど、いゝかげんにしないと蛇が住みつくぞ、ムカデが出て来るぞとおどかされ、長靴にゴム手袋といふ重装備に蚊取り線香を焚くといふ用心をして、わづかな時間、庭遊びをしたたけなのに、お岩さまもどきとは、なさけなや。