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2018年09月19日20:29

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「二十四時間の情事」

9月18日にNHK-BSでアラン・レネ監督の「二十四時間の情事」(元題”ヒロシマ・わが愛”、原題”Hiroshima mon amour イロシマ・モナムール)が上映された。
この映画は50年以上前に見てその後2度ほど見たが、今回数十年ぶりに見る機会を得た。

この映画については以前主演のエマニュエル・リヴァについて書いたとき触れたことがあった。
 http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1901530922&owner_id=39904538
この映画は素晴らしい。60年近く前の映画だけど今見てもその素晴らしさはまったく色あせしない。

以前書いたとき、昔見たのを思い出しながら書いたのだが、勘違いしていた部分やなぜそのように感じたか思い出せないところもあったが、今回見直したことではっきりしたので改めて感想を書いてみたい。

あらすじは前回書いた内容でほぼ合っている。
主演はエマニュエル・リヴァと岡田英次だが名前はなく”男”と”女”だ。
勘違いしていたのは前回岡田英次は学校の教師と書いたが正しくは建築家だった。映画の中で女に”自分は建築の仕事をしている”と言うところがある。
あらためてあらすじを書いてみると
男と女の行きずりの情事のシーンから始まる。
情事の合間に女は”私はヒロシマを見た、資料館も見た、ニュース映画も見た、病院も見た”と言うが、男は”君はヒロシマを何も見なかった”と言う。

女はフランスから平和の映画を撮りにヒロシマに来ている女優で男は広島にいる建築家だ。二人は知り合いつかの間の情事を過ごす。
ホテルで朝になって女はうつぶせで寝ている男の手がかすかにぴくっと動くのを見て昔の恋人の死を思い出す。
男は女に昔のことを聞こうとするが女は話したがらない。
男は原爆投下時は戦場にいたが家族は広島にいたことを話し、女はヌベールにいたことだけを話す。
(ホテルはHOTEL NEW HIROSHIMA 新広島ホテルとなっており当時としては非常に近代的なホテルだ。 調べてみた。今はもうなくなっている。https://ja.wikipedia.org/wiki/新広島ホテル。)

この”見た””見ない”の掛け合いはその後のアラン・レネの作品「去年マリエンバードで」のなかの”会った””会わない”のフレーズに繋がっている。

女は”ヒロシマを見た”というとき原爆の惨劇やケロイドなどのニュースフィルムや劇映画「ひろしま」などのショットが所々に挿入されているが、アラン・レネはそれらがケロイドという表面的なものでヒロシマの本当の意味ではないと否定している。
(ちなみに「ひろしま」も昔見た。関川秀雄監督で山田五十鈴や月丘夢路などが出ていた。授業中に机からぱたりと教科書が落ちるシーンが印象に残っている。)

映画の撮影現場で原水爆反対のデモのシーンを撮っているところへ男が訪ねてくる。女は”自分のシーンはすべて終わった、明日の飛行機で帰る”と話す。
デモのパレードを見ながら男はもうい一度会いたいと言う。二人はデモのなかに紛れ込み離れてしまう。
(デモは大勢の広島市民が出ていたがプラカードはフランス語で書かれていた。)
(この映画のセリフは大半がモノローグか2人の会話しかないが岡田英次のフランス語が大変流暢だった。)

男は女に”もう一度会いたい”と言い自分の家に連れてくる。
男は妻がいて今里帰り(たぶん)していると話す。
女も自分には夫がいて子供もいると言う。

情事の合間に昔の事がよみがえる。
女はヌベールでの出来事を語り始める。
女は進駐してきたドイツ軍の兵隊の一人と恋仲になり、逢瀬をしのぶ。
2人で駆け落ちしようと待ち合わせ場所へ女が行ってみると、恋人は狙撃されて倒れている。
まだ息があり、女は抱きしめているがだんだんと死に至っていく。
死んだドイツ兵はトラックでどこかへ連れ去られる。
次の日ドイツは降伏しヌベールは解放される。
女はドイツ兵と通じたということで制裁を受け村人から坊主頭にされ、さらし者にされる。
女は精神に異常をきたし叫び声をあげる。
女の両親はそんな彼女を地下室に閉じ込める。
髪が伸び始めると精神も安定し、元の部屋に戻される。髪がほぼ戻ると母親はお金を渡し、女は夜中に家を出て自転車でパリへ向かう。

女はドイツ兵の恋人を”あなた”と呼び、日本での男も”あなた”とよぶ。

夜になると二人で喫茶店?でお酒を飲みながら女は男のことを”あなた”と呼びながらヌベールの事を話す。
女は”あなたを思い出せなくなる。忘れるのが怖い”と言い、男は”今の君になり始めたのがそこだろう”と言う。

(女のヌベールでの出来事がカットバックのように挿入されている。)
(ちなみにこの喫茶店かバーはtea room どーむ という店名になっていた。ノレンが下がっていた。)

女は男と別れホテルに戻るが、部屋を出て広島の街をさまよう。
(広島の街はネオンサインにあふれていて原爆の傷跡など全くない。この街をふらふらとさまようとき、ヌベールの村の景色がカットバックで挿入されている。
”あなたを忘れる、忘れた”と言ったようなモノローグがあり、女の不安定な気持ちを表している。)

街なかで男と出会い短い会話をする。男は”ヒロシマにいてほしい”と言い、女はヒロシマに残る”と言う。
女は駅へ行く。(たぶん広島駅)待合室で老婆の隣に座る。男もやってきて老婆を挟んで座る。男は老婆ごしに女にたばこを渡す。
老婆が男に”この人はどこの人ですか?”とたずねる。男は”フランス人です。もうすぐ帰ってしまいます。僕たちは愛し合っていますから別れるのがつらいのです”などと説明する。
(このシーンだけが日本語。)

女はタクシーに乗りキャバレー?に行く。男も後からその店に入る。
女たちと飲んでいた一人の男が近づき、英語で何人でどこから来たのかなど誘いをかける。女は何も言わずじっとしている。
男はその様子を別の席からじっと見ている。(男は心が乱れる。)
夜が明けて女は店を出てホテルに帰る。男はその部屋を訪ねる。
女は男を部屋に入れ、男は”来ずにはいられなかった”と言う。
女は”あなたを忘れる、ほらもうこんなに忘れた”と泣き崩れる。
女は男を”ヒロシマ”と呼び、男は”ああ僕の名前はヒロシマ、きみの名前はヌベール”と呼び合う。
映画はここで終わる。

女は自分のヌベールでの体験をヒロシマと重ねることでヒロシマを知り男を愛する。
男は家族をすべて失った原爆と女のヌベールを重ねることで女を知り愛する。

セリフはモノローグも会話もなかなか難解なのだが、女は男を愛するために”ヌベールを忘れる”と言い”あなたを忘れたくない”と思いが交錯する。

この映画は60年前に広島でロケを行って作成されたものだが、その当時(戦後15年目)なのに広島は原爆から復興して戦争の傷跡は全く見られない。
街にはネオンがあふれているし、原爆ドームはモニュメントとなっている。
原爆のとき沢山の死体が浮いた太田川は市民が夕涼みをしている。
あらゆるものが忘れられようとしている。


最近の若い人がこの映画を見たら何を感ずるだろうかとおもったが次のような感想があった。
これはたぶん若い人だろうと思われるが、私のような年寄りはこのような映画を見るとすべてを破壊してしまう戦争の残酷さが心に突き刺さる。
movienreview.blog.jp/archives/21838015.html


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