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2020年10月08日10:14

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【続編】 孫帝国の危機!!成長モデルの限界(その1)

孫正義氏(62)率いるソフトバンクグループ(以下、SBG)の経営の変調が

2020年3月期の連結決算で明らかになった。

成長期待分野への果敢な投資と借入の繰り返しで巨大化したグループは、

傘下企業の経営不振から赤字に陥り、他の保有株売却で穴埋めに追い込まれた。

世界的な株価回復に伴い、同社株は2020年7月に年初来高値を更新したが、

経営破綻につながりかねない潜在的なリスクが解消されたわけではない。

借金をテコにグループを巨大化してきた成長の歯車はいつまた逆回転してもおかしくない。

「株主価値が重要な指標」。

孫氏は2020年6月25日に東京都内で開いた株主総会にて、

2020年3月期連結決算で創業以来最大の営業赤字1兆3646億円計上を踏まえながらも、

経営不安を一蹴してみせた。

株主価値とは、SBGの保有株式から単体の純有利子負債を差し引いた金額を示す。

孫氏はグラフを示して、2020年3月末時点で21兆7000億円だった株主価値が、

総会前日に23兆3000億円になり、新型コロナウイルス感染拡大前の

2019年12月期よりも増えたとして、一時大暴落した株式市場を

「オーバーシュート、過剰反応だった」と切って捨てた。

身一つで事業を興し、巨大な投資会社となったSBG創業者の自信に満ちた振る舞いと、

同時期に公表された米通信会社Tモバイル株の売却などによる

4兆5000億円の負債圧縮や最大2兆5000億円の自社株買いの一部実行もあり、

SBG株は2020年7月、年初来高値をつけ、同年3月の年初来安値の2610円から大きく戻した。

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■アリババ株頼みの危うい現状

しかし、株価上昇の見かけほど、経営状態が劇的に改善されたわけではない。

総会で示したグラフを分析すると、保有株式は3月末の28兆円から6月末で30兆円と、

2兆円増えている。

だが、増額分のほとんどは、保有するアリババ・グループ・ホールディング株が

14兆2000億円から16兆2000億円に増えたことによるものだ。

この間、通信会社ソフトバンク株は3000億円減、英半導体設計会社アーム株は1000億円減、

投資ファンド会社ソフトバンク・ビジョン・ファンド(以下、ビジョン・ファンド)株は

1000億円減と振るわなかった。

スプリント時代に保有し、4月に合併した米Tモバイル株が4000億円増だったものの、

25%保有する同株の3分の2は売却する。

つまり、SBGの株主価値の源泉は現状、アリババ株頼みなのだ。

株式市場もそれを見越して、SBGの時価総額は7月10日終値で約13兆1000億円に過ぎない。

アリババ株保有分にも満たない金額だ。

その頼みのアリババ株をSBGは債務圧縮の原資として一部(1.25兆円)売却を余儀なくされた。

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それでも、上場会社でありながら投資会社であることを理由に、

「経常利益よりも株主価値を重視する」と孫氏は主張する。

その姿は利益よりも売上を重視したあげく、事実上経営破綻した大手スーパー、

ダイエー創業者の故・中内功氏の「売上はすべてを癒やす」と重なる。

ダイエーもまた、新規出店で購入した土地の含み益をテコに、出店を繰り返した。

株価と土地の違いはあれ、上昇局面から下降局面に転じると、

成長の歯車が逆回転する弱点は同じだ。

より深刻なのは、SBGがアリババ株頼みの経営を余儀なくされている原因が、

孫氏の目利き力に陰りが生じたことにある。

その典型例のひとつが、米シェアオフィス大手ウィーワークを運営する

「ウィーカンパニー(以下、ウィー社)」だ。

10兆円ファンドをうたうビジョン・ファンドが、新規株式上場(IPO)の目玉としていた。

だが、ウィー社が2019年9月のIPO向け目論見書を公表すると、

ずさんな経営体制が露呈され、IPOの中止と

創業者(アダム・ニューマン)の辞任に追い込まれた。

ウィー社は資金繰りが悪化して経営難に陥り、SBGはウィー社の公正価値

(取引の知識がある自発的な当事者の間で、独立の第三者間取引条件により

資産が交換されたり、負債が決済される価額)を

2020年3月末に約29億ドル(約3100億円)に減額し、株主価値の低下を招いた。

SBGはウィー社に約1兆円を投資している。

にもかかわらず、目論見書に記されている水準の経営数値を把握していなかったことになる。

そして、現時点での同社の公正価値は投資額の3分の1に満たない。

孫氏は2020年の株主総会で、ウィー社への投資は社内の反対を押し切って

実行を決めたことを明かし、「私に最大の責任がある」と述べた。

このほか、米配車大手ウーバー・テクノロジーズはコロナ禍で経営不振となり、

やはり公正価値を下げた。

米衛星通信会社ワンウェブは事業が軌道に載る前の今年3月、連邦破産法第11条を申請した。

ファンドである以上、当たり外れはある程度避けられない。

ただ、ウィー社投資失敗は、孫氏の目利き神話の終わりの始まりと言えるほど

経営を揺るがせた。

孫氏の目利きが神がかり的と評価されたきっかけとなり、現在もSBGを支えるのが

アリババへの投資だ。

孫氏は2000年、創業者ジャック・マー(馬雲)との10分間の面談で、

2000万ドルの投資を決めたとされる。

アリババは2014年9月、米ニューヨーク証券取引所に上場し、時価総額は約25兆円に達した。

発行済み株式の約3割を保有するソフトバンク(当時)は約8兆円の含み益を獲得した。

単純計算で4000倍の投資効果を得たことになる。

一方、ウィー社への投資はアリババと異なり、孫氏が企業価値10億円以上の

非上場会社「ユニコーン企業」を起業直後に見つけ出せないまま、

上場間近の企業に巨額投資したことを意味する。その結果、財務負担が膨らんだのだ。

アリババ投資は僥倖(ぎょうこう)であり、その成功体験を孫氏は再現できない

という懸念をウィー社への投資失敗は示した。

また、孫氏が社内の反対を押し切ったウィー社投資の決定過程は、

SBGの企業統治(ガバナンス)不在をうかがわせる。

■ガバナンス強化とカリスマ経営の二律背反

ガバナンスの問題は他の投資案件でもある。

経営破綻した独フィンテック(情報通信技術を使った金融サービス)企業、

ワイヤーカードを巡る対応だ。

ワイヤーカードは19年9月、SBGと戦略的パートナーシップを結び、

転換社債9億ユーロ(約1080億円)をSBG子会社に発行すると発表した。

同社は資金繰り悪化がささやかれており、SBGからの資金提供は信用補完に役立った。

だが、同社は今年6月、約19億ユーロの現金の所在が不明になっていることが明らかになり、

破産申請に追い込まれた。

関係者によると、転換社債を購入したのはSBG傘下のファンドで、

経営幹部が出資しているものの、会社としての関与はないという。

私的な投資がSBGの提携と紐付けられ、ワイヤーカードの延命に関わった

との印象を与えたのであれば、ガバナンス不在のそしりは免れない。

SBG広報は「グループの一社が提携したことになります。詳細についてはコメントを控えます。

SBGは本件に投資しておらず、財務に影響はございません」としている。

ウィー社への投資判断の一件もあって、SBGは今期、社外取締役を2人増員し、

ガバナンス強化を図るとしている。

それは孫氏のカリスマ経営から遠ざかることも意味するが、

孫氏が個人保有するSBG株の4割以上を金融機関に担保提供している現状を踏まえれば、

実効性は疑問だ。

SBGの経営の変調の原因は極めて単純だ。

株価が上昇している間は見えにくかった過剰債務の問題が、

株価の下落で露呈したに過ぎない。

SBGは今期、債務圧縮による「守りの経営」を進めるが、

それは借金をテコに資産を膨らませてきたSBGの、孫氏の成長モデルの限界でもある。

(つづく)




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