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2020年07月23日14:43

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在りし日の歌(地久天長 So Long, My Son)

 「北京の自転車」「我らが愛にゆれる時」で知られる中国第6世代の名匠ワン・シャオシュアイが、「薄氷の殺人」のワン・ジンチュンと「黒衣の刺客」のヨン・メイを主演に迎えて描き、第69回ベルリン国際映画祭で最優秀男優賞と最優秀女優賞をダブル受賞したヒューマンドラマ。国有企業の工場に勤めるヤオジュンとリーユン夫婦は、中国の地方都市で幸せに暮らしていたが、大切なひとり息子シンシンを事故で亡くしてしまう。悲しみに暮れるふたりは住み慣れた故郷を捨て、親しい友人とも距離を置き、誰も自分たちのことを知らない町へと移り住む。そして時は流れ……。1980年代から2000年代の激動の中国を背景に、喜びと悲しみ、出会いと別れを繰り返しながらも共に生きていく夫婦の姿を映し出す。(映画.comより)







 都会でも夜一回上映だった作品。田舎者の私にとっては、貴重な経験になりました。実に185分の大作。よくできた作品だったと思います。眠くなることもなく、一生懸命鑑賞できました。さすが歴史の長い国。なんだかんだ言っても、まねできないだけの文化的素地を持っていると思いました。

 1980年代からの一組の夫婦の軌跡を描くのですが、時はまさに「一人っ子政策」の真っ最中。人口爆発していたというバックグラウンドは理解できるのですが、やはり単純すぎる政策だったんではないでしょうか。一人息子に恵まれていても、愛し合う夫婦ならもう一人できてしまうこともあって当然、でも当時は許されることではなく、強制堕胎。妻は二度と妊娠できない体になってしまいます。しかも「言いつけを守って堕胎した立派な夫婦」などと皆の前で表彰される。こんな悲しみの後で、満面の笑みで表彰式に臨席しなければならない現実。それも一張羅を着て。なんで誰も「おかしい」と言わないんですか。いや言えないんでしょうけど。そして起きる不慮の事故。たった一人の息子を失ってしまった夫婦にどうしろと?しかもその後のリストラ政策で「模範市民なんだから、率先して地方へ出向くべき」と、真っ先にリストラ対象に。

 どうすることもできない夫婦は、知り合いのいない地方へ移り住み、養子をとって息子と同じ名前で育てます。でも、うまくいかないんです。誰が悪いわけでもないのですが、物事が回らない時って、回らないんです。とうとう家を飛び出してしまう息子。たった二人になってしまったもう若くない夫婦は、また人知れず住処を変え、静かに生きていきます。

 彼らだって、いつも一人だったわけではありません。亡くなった息子と同じ日に生まれた同僚の息子もいたし、彼らとは義兄弟の契りを交わすほど親しかった。締め付けの厳しい時でも、陽気な仲間はいたし、仕事も続けてきたからそれなりに認められてもいた。それでも次々に降りかかる試練の数々。黙ってそれに耐えるしかない人生。人生って、そんなものかもしれません。苦労のない人なんて、いないでしょうし。でも、見ていてつらかったですね。みんなそうでしょうが、結局人生なんて、なるようにしかならない。アグレッシブに挑戦を続けたら、道が開けていたのでしょうか。よく「自分が選択してきたのだから」とか「目標を定めて挑戦を諦めなければ、必ず叶う」とかいう人がいます。もちろんそうなんでしょうけれど、誰もにあてはまるわけではない、と私は思っています。皆がみんな、そんなにアグレッシブに生きてたら、世の中は大混乱すると思うのです。そういう風に”波風を立てない”のも”自分で選択した”ということになるのでしょうけれど。

 夫婦って、本当に奥が深いですね。いろいろ考えてしまいました。考えるものでもないのかもしれませんが。ただ、この映画、よくできていたのですが、時間軸がよく前後するので、突然時間が戻ってたりして、どこがいつに当たるのか、とてもわかりづらいと思いました。もう少しわかりやすい造り(時間軸通りに進む、とか)だったほうが、より感動も深かったのではないかな、と思います。

 それでも、よくできた映画でした。長いので、根性がいるかとは思いますが、おすすめです。

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