※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
コムギの回想は続く。
「コムギ、今度、ラーメン食い行こうな」
「ああ、次は僕の領内にある有名店を紹介するよ」
「じゃあ、またな」
「おう、ツバサも元気でな」
帰り道、僕は、ツバサ達と別れ、お供も連れず1人歩いていた。
すると、突然、何かに引っかかり、倒れた。
「なんだ…?誰だ、こんな所にロープを張ったのは…?」
僕は起き上がろうとすると、その前に蹴り飛ばされた。
蹴られた箇所を押さえながら、悶えると、そこにいたのは、カリスマだった。
「さっきはどうも」
「お前、これは何の真似だ」
「いや、別に、ちょっと散歩していたら、道に石ころが落ちていたので蹴った、という設定ですよ」
笑顔で答えたカリスマに、言い知れようのない恐怖を感じたのも事実だった。
「一方的に殴られる痛さと怖さを教えてやろうか!」
「ぐはっ、ぐはっ」
「オラ!オラ!どうだ?ああ、石ころは喋れないもんなァ」
まるで抵抗できない僕をカリスマは蹴り続けた。
「や、やめろ…もうやめてくれ……」
ボロボロになった僕を見下ろしたカリスマの嬉しそうな笑みを僕は生涯忘れることはないだろう。
その数ヶ月後、針射・右院守遁が盗まれる事件があった。
犯人は、間違いなくカリスマであった。
というより、今思えば、まるで自分の存在をアピールするかのように、置いてあったのだ。美々庵の特産品が…。
僕はすぐさま、カリスマ領へ向かい、返還を求めた。
当時の領主、カリスマの父は、もちろん知らないで通した。実際そうだったのだろう。
逆上した僕は、その場で、カリスマの両親を攫い、人質として、カリスマを脅迫した。
もしも、返還なき場合、殺す、と書かれた手紙を送ると、カプセルに入れて、平原に放置した。
当然、すぐに狙撃できるように準備をして…だ。狙いはカリスマ、こいつらはただの囮というわけだ。
だが、奴は現れなかった。
そして、狙撃するはずだったカプセルは、何者かによって、撃たれた。カリスマはそれを受けて、すぐに新しい領主となった。
「なんだ…!いったいなんだというのだ、この不愉快さは!」
カリスマは回想する。あの日の事を。
コムギと因縁があった僕は、針射・右院守遁を盗み、わざと証拠を残した。
それに激怒したコムギの行動は、予想以上だった。実に素晴らしい収穫だ。
手紙を見た僕は、家臣達の前で、わざとらしく怒りを表現した。
「なんと…破廉恥な」
僕はコムギの要求通り、1人で助けに行くと言い、強引に出発した。針射・右院守遁を携えて…。
「あなたは何やってんです!そんなところで!」
隠密が僕をつけていることを知り、わざと激昂した姿をアピールしてから、まいた。
これで、僕の悲痛な思いも伝わることだろう。嘘だが。
コムギが狙っていることは、すでに読めていた。
なので、僕は、針射・右院守遁を構えると、両親を狙撃した。
「ふぃ〜!さすが針射・右院守遁!素晴らしい出来だ!」
僕は針射・右院守遁に感激しつつ、邪魔だった義父母を抹殺し、新たな領主となった。
このままだと義弟に領主の座を奪われかねなかったからな。うまくコムギが踊ってくれたよ、あはは。
あとは、適当な罪をなすりつけて、義弟を殺す。全ては僕の計画通りだ。
「いつかこの針射・右院守遁も、女神様に献上しよう。それまでは僕の役に立ってくれよ、針射・右院守遁」
パパ活中に国を追われたノコッチは、ニシと合流すべく、ニシが逗留している温泉宿を目指していた。
「くそー、ショーヘーめ…パパだよ初リプ、とか言ってる場合ではなかった」
森を進み、山を越える長いトンネルへとさしかかった。
「このトンネルを抜ければ、近道だな」
ノコッチは、述懐する。この時、こんなトンネル通らなければ良かった、と。
トンネルの中盤まで進んだ時、人がいるのが見えた。
「こんな所で、いったい何を…」
「おっ……その声は、ノコッチじゃねぇか」
「げっ…!もしかして、大将軍ステゴ……!?」
そして、そこにもう1人、厄介な男が駆けつけた。
「ステゴーーー!飯代踏み倒すな!!…む、ノコッチ!?」
「ユーヤ…だと!」
3人は顔を合わせると、身体1つ同時に後ろに下がり、構えた。
「ここであったが100年目」
「誰が1番、鮫の女神に相応しいか」
「決着をつけるしかねぇな、おい」
互いに一通りやり合った後、ノコッチとユーヤは、示し合わせたかのように、協力してステゴを攻撃した。
三つ巴の戦いにおいて、まず強い奴を倒すのは、常套手段である。
さすがの大将軍も2人の攻撃には押し込まれた。
ユーヤが機を見て言葉を吐く。
「強さが常に最良とは限らないんだよ」
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