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2021年05月10日15:02

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(産業経済)特許事務所の明細書作成業務はリモートワークになり得るか

「特許事務所の明細書作成業務はリモートワークになり得るか」という問題を考察してみたい。業務の内容だけから判断すれば、十分リモートワークになりうる、つまり在宅で明細書作成はできるといっていいだろう。その意味で、特許事務所の業務は比較的リモートワークになじむ業務であると言える。

ところが、この「明細書作成業務」という業務、弁理士の資格を持っていない特許技術者が行う時は、ちょっとやっかいな問題が発生する。というのは、クライアントからの依頼を受けて、業として特許出願手続代理業務(明細書作成業務を含む)を行うには、弁理士の資格を持っていることが必要なのである。弁理士の資格を持っていない人が、クライアントからの依頼を受けて明細書作成業務を行うと、その明細書作成をしている無資格の特許技術者の明細書作成行為は、弁理士法75条に抵触する可能性がある。

また、その無資格の特許技術者に明細書作成を命じている(雇用主の)弁理士は、その「明細書作成を命じる行為」が、弁理士法31条の3の「名義貸しの禁止」の規定に抵触する可能性がある。しかし、特許事務所業務の現状では、特許事務所の弁理士が、従業員の弁理士資格を有さない特許技術者に明細書作成を命じることは日常茶飯事に行われている。

では、この法律抵触をどういう方便で対処しているかというと、「無資格の特許技術者の明細書作成行為は補助業務である」という方便を使っているのである。つまり、無資格者の明細書作成行為も、弁理士の「適切な指示及び監督」の下で作成されたものならば、その明細書作成行為は補助業務のカテゴリーに入り、名義貸しの禁止規定に抵触しないとしているのである。

そうすると、特許事務所の弁理士としては、このリモートワークで明細書作成業務をしている無資格の特許技術者に対しては、「適切な指示及び監督」をしなければならないということになる。ここで仮に「適切な指示及び監督」をせずに、あたかも明細書作成業務を外部業者に丸投げ発注しているかのようにやらせていたとする(リモートワークだとそういう図式は発生しやすくなろう)。すると、これは、外部発注する弁理士側の発注行為が名義貸しの禁止規定に抵触することになる。また、特許技術者側も、その明細書作成業務をあたかも個人事業主が受注しているかのような就労形態をとると、その無資格の特許技術者の業務受注行為が弁理士法75条に抵触してしまうと考えられる。

特許事務所経営者は、事務所所員の新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点からは、やはり、雇用している特許技術者にリモートワークで明細書を書かせる行為は、ある程度は避けて通ることはできないのではないかと思われる。しかしそこには、弁理士法75条や弁理士法31条の3への抵触のリスクが潜在しているので、十分注意が要るのではないだろうか。
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