（産業経済）フリーランス保護のガイドライン

本日の日本経済新聞に『フリーランスどう保護』というタイトルの記事が掲載されていた。大変興味深い記事である。この記事によると、この春、政府は「フリーランス保護のガイドライン（指針）」というものを決定するらしい。その原案に対する評価が割れているということをレポートする記事である。記事の解説によると、政府の原案は、フリーランスの人を自営業者と位置づけ、発注者側が与えた取引上の不利益を独禁法で規制すると明記している点に特徴があるという。

この解説を読んで私が真っ先に受けた印象は、政府の立法当局は、労働者保護ということの意味が全く分かっていないというものだ。たとえその人が取引相手の事業所内で就労を開始する前の立場がフリーランスであっても、その事業所内で就労を開始したとたん、その実態が「自営業者」ではなく「労働者」となってしまう場合がある。そういう場合も想定の中に組み込んで、労働者保護を達成する必要があると思う。

なお、下記に紹介するのが『フリーランスどう保護』というタイトルの記事の全文である。

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政府が今春決定するフリーランス保護のガイドライン（指針）。その原案に対する評価が割れている。フリーランスを自営業者とみなし独占禁止法などで保護する内容で、取引条件適正化への期待は大きいが、実態が労働者に近い俳優や料理宅配員には、セフティーネットの議論が抜け落ちていることへの不満が強い。多様なフリーランスの実態に合わせたルールづくりが求められている。

　指針案は２０２０年１２月、厚生労働省や公正取引委員会などの連盟で公表された。正規雇用を標準としてきた日本では雇用以外の働き方を保護する法制の整備が遅れていたが、終身雇用の見直しや副業の普及で業務委託などのフリーランスが増加。契約トラブルも頻発するようになった。政府は２０年７月、成長戦略実行計画に指針案の策定を盛り込み関係省庁が調整を続けていた。今後、パブリックコメントの内容も踏まえ３月にも運用が始まる。

　最大の特徴はフリーランスを自営業者と位置づけ、発注者側が与えた取引上の不利益を独禁法で規制すると明記した点だ。報酬の支払い遅延など「優越的地位の乱用」となりうる１２の行為類型を列挙。コンサルタントや翻訳など専門性の高いフリーランスが多く加入するプロフェッショナル＆パラレルキャリア・フリーランス協会（東京・中央）の平田麻莉代表理事は「不平等な取引条件などへの抑止力になる」と評価する。

　一方で、批判も大きい。「一番大事なセーフティネットの議論が一切ない」―。約２５００人の俳優が加入する日本は俳優連合（東京・新宿）の森崎めぐみ理事は憤る。指針案はフリーを独立したプロとして位置づけ、競争法の枠組みで救済する。このため「フリーランスが安心して働ける環境の整備」をうたいながら、社会保障のあり方に言及していない。

　俳優の多くはプロダクションなどと雇用関係にない自営業者だが、報酬などの労働条件について交渉力は乏しく実態は労働者に近い。それにもかかわらず雇用保険などの枠外に置かれ、コロナ禍でも失業給付が得られず困窮する俳優が続出した。「ビジネス系フリーと同列に扱われることに無理がある。労働者としての保護を拡充すべきだ」（森崎氏）

　指針案も実態が労働者に近いフリーについて労働法の適用を認めるが、仕事を拒否する自由がなく、発注者が勤務場所と時間を管理することなどを判断基準とする。建設業の職人や特定のホールで演奏する音楽家などが想定され、料理宅配サービス「ウーバーイーツ」の宅配員のように、ネット上のプラットフォームで仕事を請け負う「ギグワーカー」は労働者と認められにくい。ギグワーカーへの労災保険の適用拡大を提言してきたウーバーイーツユニオンの土屋敏明執行委員長は「働き手によって社会保障の手厚さが異なるのは不合理」と強調する。

　欧州では近年、ギグワーカーを「準労働者」として社会保障の対象に含めるのが主流だ。フランスは労災などで雇用者と同等の権利を認める法律を施行、英国でもギグワーカーの労働者性を認める判例が出ている。棗（なつめ）一郎弁護士は「指針案の労働者概念は古く、ギグワーカーの急増などの現実から乖離（かいり）している」と批判する。

　労働力人口が減少するなか、フリーランスのような柔軟な働き方の普及は重要だが、その就業実態は極めて多様で求められるニーズも異なる。自営業者としての保護に加え、労災の適用拡大など社会保障制度の整備も急ぐ必要がある。（雇用エディター　松井基一）