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2021年02月12日11:57

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(読書)『だから古典は面白い』(野口悠紀雄著:幻冬舎新書)

以前に斎藤孝さんの著書、『古典力』という本を読んで、なかなか面白かったので、今回野口悠紀雄さんのこの本を読んでみようと思い立った。斎藤孝さんの著書と比較して一番異なる点は、斎藤孝さんの本では、100タイトルほどの本をあらゆる分野からバランスに配慮して選んでいるのに対し、この野口悠紀雄さんの本では、『聖書』、『戦争と平和』、『マクベス』、『ファウスト』、『アンナ・カレーニナ』、『罪と罰』、『カラマーゾフの兄弟』など、いくつかの外国文学作品に絞って重点的に思うところを述べている点にある。それだけに著者である野口悠紀雄さんの古典によせる「思い」がどういうものであるのか、そのパーソナルな部分と深く接することができ、そこがこの本の魅力になっている。

私が読んでみて一番おもしろかった部分は、『戦争と平和』、『アンナ・カレーニナ』、『罪と罰』、『カラマーゾフの兄弟』について書いている部分(2章、5章、6章)であった。どれもロシア文学の大古典である。『戦争と平和』についての解説では、この作品が組織(特に軍隊のような大きな組織)の人間がどういう行動原理に従って行動するのかが精密に記述されており、この点では会社の経営指南をしているような本を100冊読むよりははるかに有益であるとしている(P54)。

『アンナ・カレーニナ』について解説している部分では、この作品から何か教訓を引き出そうというようなアプローチからは離れて、もっと純粋に文学作品『アンナ・カレーニナ』を楽しむことを薦めている。私は『アンナ・カレーニナ』は読んだことは無いのだが、この野口悠紀雄さんの解説を読むと、読んでみたいという誘惑にかられる。ただ、別の章ではちょっと気になることが書かれている。それは、「初読」の年齢(その作品を人生で初めて読む年齢)は、作品の登場人物よりは若いときのほうが良いとしていることである(P155)。

私はそこまで若い必要はないのではと考えているが、しかし例えば『アンナ・カレーニナ』を読むのであれば、主人公アンナと十分に共感できそうな30歳くらいまでに読んだほうがいいかもしれないという気もしてくる。私自身はそんな年齢はとうに過ぎており、「もっと早く読んでおくべきだったかもしれない」と若干後悔している。

『罪と罰』、『カラマーゾフの兄弟』について解説している章(第6章)では、作品に出てくる聖書の奇跡についての記述が、作品を読み解くための非常に重要なカギになっていることが述べられている。これは大変興味深い視点だと思った。例えば『罪と罰』では、ソーニャがラスコリーニコフに、聖書の「ラザロの復活」の部分を朗読して聞かせるシーンがある。また、『カラマーゾフの兄弟』では、アリョーシャが夢の中で「カナの婚礼」の奇跡に出会うシーンが描かれている。これらのシーンは作品を読み解くための重要なカギになっていることが述べられているのである。こういった興味深い感想に接することができるだけでも本書を読む価値があると思う。

【関連項目】

(読書)『古典力』(斎藤孝著:岩波新書)

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