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2020年06月16日14:07

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(読書)『100分de名著・純粋理性批判』(その3)

昨日、『100分de名著・純粋理性批判』の第3回放送があったので見ていた。今回は、「宇宙は無限か、有限か」ということがテーマである。そして今回のお話の主要な内容はアンチノミーである。番組では、相対立する二つの命題の双方を背理法によって否定し、元々の問題がアンチノミーに至ることを証明している。

また、人間が、あたかもレンガを積み上げるかのように論理を積み上げる時、最初にレンガを設置する場所が必要だというたとえ話も興味深い。一旦レンガを設置する場所が固まれば、その上にどんどんレンガを積み上げることができる。しかしその積み上げプロセスの最初のレンガは、レンガがないところに積み上げなければならない。レンガがないところにレンガは積み上げられるのか。ここに、「論理構築」というものの危うさが潜んでいる。

このたとえ話を読んだとき、私は藤原正彦著の『国家の品格』(新潮新書)を思い出した。この本にも、「論理には出発点が必要」ということが書かれている(P50)。藤原氏によれば、この論理の出発点を選ぶ力は情緒力であるとしている。「情緒力」とは、論理以前のその人の総合力であるという。

カントはこのように、理性や推論や論理構築といった人間の営みの限界を鋭く描き出しているわけだが、では、カントは人間の理性や推論や論理構築といった人間の営みを否定しているのかというと決してそうではない。彼は、人間のそのような営みがもっとも有効なものとして発揮されるのは、実は認識や理論の領域ではなく、行為(道徳)の領域であると考えている。第4回(最終回)では、「自由と道徳を基礎づける」というテーマでこのあたりの問題を掘り下げる予定のようだ。

【関連項目】

(読書)『100分de名著・純粋理性批判』(その1)

https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1975889897&owner_id=3879221

(読書)『100分de名著・純粋理性批判』(その2)

https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1975949365&owner_id=3879221

NHK番組HP

https://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/98_kant/index.html#box01

第3回 宇宙は無限か有限か

【放送時間】2020年6月15日(月)午後10時25分〜10時50分/Eテレ
【再放送】2020年6月17日(水)午前5時30分〜5時55分/Eテレ2020年6月17日(水)午後0時00分〜0時25分/Eテレ※放送時間は変更される場合があります
【指南役】西研(東京医科大学教授)…著書『哲学は対話する』『読書の学校・ソクラテスの弁明』等で知られる哲学者。
【語り】小坂由里子
理性が本来の限界を超えて推論を続けると必ず陥ってしまう誤謬。中でも「世界全体についての認識」を例にそうした誤謬の検証を行うカント。例えば「宇宙は無限か、有限か」。宇宙に時間的な始まりがあるとすると、その前には時間が存在しないことになり、いかなる出来事も生じず宇宙は誕生しないことになる。逆に宇宙に時間的な始まりがないとすると、現在までに無限の時間が経過したことになるが、無限の時間とは経過し終えないもののはずだから現在という時間は決して訪れないことなる。このように、対立するどちらの論も成り立たない矛盾をアンチノミー(二律背反)と呼び、この検証を通じてカントは理性の限界を鮮やかに浮かび上がらせる。第三回は、理性が自ら陥ってしまう誤謬の解明を通して理性や科学的思考への過信に警告を鳴らす。
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