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2020年06月04日14:40

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(産業経済)名ばかり事業主

この記事を読むと、「名ばかり事業主」という言葉が出てくる。私はこの言葉に大変興味を持った。私はかなり以前ではあるが、特許事務所において「個人事業主の外国特許技術者」として事務所内就労したことがある。特許事務所経営者から、「雇用ということじゃなく、事務所内で働いてほしい」という要請を受けたからだ。

この「雇用ということじゃなく、事務所内で働く」ということがどういうことなのか、そのときはピンと来なかった。私は「雇用じゃないんだから請負なのだろう。そうすると、どういう業務をどういう条件で請け負うのか、契約書を作成して明確にしていくつもりなのだろう」と予想していた。

ところが、この特許事務所経営者は、契約書をつくるという工程にはちっとも入ろうとせず、いきなり「明日から来てくれ」のように言ってきた。この特許事務所経営者には、契約書を作ろうという意思はなさそうだった。この「契約書を作ろうとしない」ということが何を意味しているのか、モヤモヤとしていて胡散臭い雰囲気がプンプンだったが、そのときはとにかく成り行きで事務所内就労に入ってしまった。

だいぶ後になって、私が体験したこの就労形態は「偽装請負」ではないかと考えるようになった。厳密な意味では偽装請負に至るプロセスとは異なるが、結果として私が置かれる就労環境は「偽装請負」と実質同じようなものとも言えるからだ。

しかし、ここで「名ばかり事業主」という言葉に出会ってみると、私が特許事務所で体験した胡散臭い就労形態は、「偽装請負」というよりは「名ばかり事業主」と言った方がぴったりだったという気がする。そうだとすると、この特許事務所経営者の私に対する「雇用ということじゃなく、事務所内で働いてほしい」という要請は、平たく言うと「名ばかり事業主として働いてほしい」ということだったのだ。

この実態に即して契約書を作成するとしたら、その契約書の中身は、さしずめ「名ばかり事業主就労契約書」ということになろう。特許事務所経営者としては、こんな胡散臭い契約書はわざわざ作りたくないだろう。

なお、この記事には、労働者と個人事業主はどう違うか、その対比を示す表が掲載されている。すっきりしていてわかりやすく、有用な表であるが、ひとつこの表には重要な点が欠落している。それは「解雇をどうとらえるか」における違いである。この特許事務所経営者の視点に立つと、事務所内就労させる労働者を「(名ばかり)事業主」ということにしておけば、表向き「雇用しているわけじゃない」ということになるので、実質の解雇も「個人事業主さんとの契約終了だ」というふうに丸め込むことができると考えているのである。

このあたりがこの特許事務所経営者のずるくて卑怯で胡散臭いところなんだな。特許事務所経営者が労働者に「雇用ということじゃなく、事務所内で働いてほしい」という要請をした場合、その要請を受けた労働者は、「雇用じゃないんだから請負なんだろう…」と了解してしまうことには一定の合理性がある。

すると「自分は請負の身分なのだから、特許事務所経営者から指揮命令されるいわれはない」と了解してしまうことにも、一定の合理性があると言わざるを得ない。そうだとすると、「指揮命令」という要素を経ずに仕事を依頼して、その成果を計量し、報酬を支払う「しくみ」をあらかじめ契約書によって規定しておくことは欠かせないと思われる。

もうひとつ、この日記を書いたのちになってから知ったことであるが、ヤマハ英語教室の講師のような職業の場合、税法上は「給与所得者」ということになっているらしい。もし税法の規定するところを誠実に順守するのであれば、ヤマハ英語教室が、事業所で就労させている講師らを個人事業主として扱い、報酬を支払う手続きは、税法上の脱税行為に該当する可能性がある。

つまり、もしこの英語講師らが給与所得者であるならば、所定の社会保険料を納入し、給与に関するもろもろの税の源泉徴収をすることによって、はじめて「必要経費」として売り上げから控除することが許される。それをせずに単に講師らへの報酬を必要経費として控除すると、これは脱税になる可能性があるのである。

【関連項目】

(産業経済)税法上の給与所得者

https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1975958373&owner_id=3879221

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■ヤマハ英語教室、講師に雇用制度導入へ 組合に方針提示
(朝日新聞デジタル - 06月04日 05:07)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=6106634

 楽器大手ヤマハの子会社で全国で英語教室を展開する「ヤマハミュージックジャパン」(東京)が講師らに雇用制度を導入する方針を、講師らでつくる組合側に提示したことがわかった。講師らは会社の指示で社員と変わらない働き方をしながら労働者の権利を持たない「個人事業主」とされたため、組合を結成し、会社と交渉した。個人事業主が労働者として雇用される道を切り開いたのは異例だ。

 労働問題に詳しい弁護士や研究者は、働き方の多様化の中で、学習塾の講師や配達員、訪問販売員など様々な職業で今回の講師らのような「名ばかり事業主」は増えているとみる。だが厚生労働省にも統計がなく、実態は判然としない。今回のケースは、新型コロナウイルスで立場の弱さが浮き彫りになった個人事業主、人材確保を図りたい会社側双方にメリットとなりうるモデルの一つとして注目されそうだ。

 約1200人いる講師全体の約1割が加入する労働組合「ヤマハ英語講師ユニオン」によれば、講師らは「ヤマハ英語教室」で働く。同社と1年更新の委任契約を結び、教材の選定や勤務の時間や場所などについて会社の指揮命令を受け、働き方の裁量はほとんどない。労働者として扱われないため休業補償や最低賃金などの制度が適用されないという。

 こうした実態を踏まえ、一部の講師が2018年、同ユニオンを結成。実態は労働者だと主張し、雇用契約の締結を求めて団体交渉に臨み、今年2月、会社側から21年度中を目標に講師らと雇用契約を結ぶ制度を導入する基本方針が文書で伝えられた。現在、講師全員と雇用契約を結ぶよう会社側と交渉を続けている。
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