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2020年04月09日18:36

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(読書)『「ファインマン物理学」を読む 力学と熱力学を中心として』(竹内薫著:講談社ブルーバックス)

『ファインマン物理学』(岩波書店)は、大学で物理を専攻する学生のみならず、機械工学や電気・電子工学など、いわゆる「物理工学」を専攻する工学系の学生にとって、いわばあこがれの書物である。物理学を専攻する学生にとっては、1,2年レベルのいわば「通過点」にある書物に過ぎないかもしれないが、物理学そのものをかならずしも専攻しない工学系の学生にとっては、工学系の科目の教科書の記述方法とは全く異なっているので、やややっかいな書物でもある。この本の著者竹内薫氏の説明を読むと、その理由がわかる。と同時に、なぜ古今多くの学生を魅了してやまないのかの理由もわかるような気がする。

この『「ファインマン物理学」を読む 力学と熱力学を中心として』は、「ファインマン物理学」を読み解くうえでのいわば「参考書」あるいは「ガイドブック」のようなものと期待すると、この期待は裏切られる。むしろ、著者の竹内薫氏が、「ファインマン物理学」からどんな影響を受け、啓発を受けてきたのか、それを縦横無尽に語るエッセイのようなものとして読むと、面白く読めると思う。4点ほど特に興味をもった点をピックアップしてみたい。

(1)この本の「はじめに」という項目を読むと、量子力学の形成史のようなことが書かれている。ボーアによって本格的に開始された量子力学は、その後シュレディンガー流の波動方程式と、ハイゼンベルグ流の行列力学という2大潮流に発展した。しかし、その後ディラックによってこの2つの手法は数学的に同等であることが証明された。

その後、ファインマンによって「量子力学の第3の定式化」がなされる。それが「経路積分」というもので、「量子は、時空のあらゆる経路をさまざまな確率で通る」という内容だ。あらゆる経路について足し合わせると「量子力学」になるらしい(P8)。

(2)物理学を認識する基本的なスタンスとして「実在論」と「実証論」がある。やや大げさなたとえになるが、「月は人間が見ているときも見ていないときも存在する」という見方が「実在論」である。そして「月を見ていないとき、月の実在を云々するのは意味がない」というのが実証論である。

それぞれの代表的な物理学者は、

実在論:アインシュタイン、シュレディンガー、ペンローズ
実証論:ボーア、ハイゼンベルグ、ホーキング

だそうだ。そしてファインマンはどちらかというと実証論派に近いらしい。

量子屋さん、相対論屋さんという言葉も登場する。一昔前はこの両派が縄張りを形成していたらしい。ところが、超ひも理論やループ量子重力理論のような学理を追求するには、量子論も相対論も両方勉強しなければならないので、この縄張りは崩れてきたとのことである(P105)。

(3)物性における「磁性」は、電磁気学では説明できないということを、この本を読んで初めて知った(P150)。電気と磁気は相互に密接にかかわりを持っているが、これらを「電磁気学」という言葉でくくってしまうのは、一種の方便に過ぎないのだろう。そういえば、私はコロナ社の『基礎電磁気学』という本で電磁気学を勉強したことがあるが、この本における磁気の説明を読むと、なんとなく木に竹を接いだような印象をぬぐえなかった。「磁性」は、電磁気学では説明できないということを踏まえると、その理由も納得できるというものだ。

(4)量子コンピュータというもののアイディアも、ファインマンが創始者らしい。彼の量子コンピュータについての研究は、『ファインマン計算機科学』(岩波書店)という本によって接することができる。ただし、この本は大学上級レベルだそうである(P178)。
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