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2019年10月10日14:31

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(社会)在職老齢年金制度と高齢者の就労意欲

政府の当局者は、在職老齢年金制度が高齢者の就労意欲を損ねていると分析しているようだが、私の考えでは、在職老齢年金制度の存在と、高齢者の働く意欲とはほぼ無関係だと思う。高齢者の働く意欲を損なっている要因があるとすれば、それは在職老齢年金制度ではなく、むしろ、高齢の労働者が安心して働ける職場が少ないことにあると思う。

日本の事業体経営者は、事業の収益力が低いため、労働搾取を平気で行う傾向がある。このため、法律で定められている労働者の権利保護水準が踏みにじられていると思う。そんな職場に、健康や体力にそれほど自信が持てない高齢者が安心して出かけていけるはずがない。高齢者の就労意欲を高めたければ、まず企業の労働法を中心とした法令コンプライアンスをしっかり維持すべく行政指導をするべきなのではないだろうか。

あと、上記のことと関連することだが、個々の職場がメンバーシップ型社会になっていることも、高齢者が職場に入っていくうえでバリアになっている。メンバーシップ型社会では、メンバー共同体の利益に直結する仕事をたくさんすればするほど、そのメンバーシップ型社会での出世競争で勝ち残りやすくなる。雇用主も従業員同士でこの出世競争をさせたいという思惑がある。このため、「メンバーシップ型社会では、死なない程度のギリギリまで長時間労働することが長期的には最も合理的な選択となる」(濱口桂一郎著:『日本の雇用と労働法』日経文庫 P140)。

働く高齢者は、いまさらメンバーの一員として出世競争をしたいとは思っていないはずだ。出世競争よりも「自己の利益のために」就労するという、労働者本来のマインドセットになっている。そういうマインドセットにある高齢者が安心して働ける職場とは、決してメンバーシッ型社会の職場ではなく、当然に「ジョブ型雇用契約」の職場だろう。

結論をまとめると、高齢者の就労意欲を促進するためには、在職老齢年金制度をいじくるよりも、日本の職場を「ジョブ型雇用契約」の職場にしていくことのほうが先決であるということになる。いや、実を言うと、日本の労働法は、日本の職場がジョブ型で動いていくことを前提として法制されているのである。だから、法律上は、日本はすでにジョブ型社会なのである。

だが、日本の事業主の多くは、従業員にメンバーシップ型社会の幻想を植え付け、出世競争をさせたいと思っている。日本の事業主の多くがそう思っている限り、そこに「ジョブ型雇用契約」のマインドセットの高齢者が入って溶け込めるはずがない。つまり、個々の事業体が「ジョブ型雇用契約」のマインドセットの高齢者をうけいれてハーモナイズすることができるためには、職場全体の仕組みをジョブ型にしていく改革が必要になるのではないだろうか。

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■収入ある高齢者の年金減額、継続へ 基準は月62万円軸
(朝日新聞デジタル - 10月07日 14:18)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=5816813

 働いて一定の収入がある高齢者の厚生年金を減らす「在職老齢年金制度」について、厚生労働省は来年の制度改正では廃止しない方針を固めた。廃止すれば年金支給額が年1兆円以上も増え、年金財政に影響が大きいことなどを考慮した。65歳以上の年金減額の基準は、今の「月収47万円超」から「62万円超」に引き上げることを軸に検討する。

 在職老齢年金制度は、給与と年金の合計額が、60〜64歳は月28万円超、65歳以上は月47万円超の場合、超えた分の半額などを年金から差し引く仕組み。現在、60〜64歳の対象者は約88万人で減額総額は年約7千億円、65歳以上は約36万人で年約4千億円。高齢者の就労意欲を損ねているとの指摘から見直しを進めている。

 廃止は見送るが、厚生年金保険料の算出のもとになる標準報酬月額(月収)の最高区分が「62万円」であることなどを踏まえ、65歳以上では対象を月収62万円超に引き上げることを軸に検討する。この場合、対象者は今の約半数の約18万人に減ると見込む。
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