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2019年04月02日14:27

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(読書)『日本語の古典』(山口仲美著:岩波新書)

藤原正彦さんが、自身の著作『国家の品格』や『国家と教養』の中で、「西暦500年ごろから1500年ごろまでの約1000年間にこの国で生み出された文学は、同時代の諸外国(主としてヨーロッパ諸国を想定しているようだ)にて生み出された文学と比較すると、質的にも量的にも圧倒している」ということを述べている。私は藤原さんのこの発言がとても気になっていた。藤原さんのこの発言はいったいどの程度真実なのだろうか。この疑問に対するヒントとして、日本の古典の作品群について、自分なりのイメージを持っておきたいと考えた。

そうはいっても、古典の原作を自分自身で一つ一つ読むことは到底できないし、第一、どんな作品からアプローチしていけばいいかもわからない。日本古典の作品群に対するイメージを形成することに役立ってくれそうなガイドブック的な本を探していた。そこで手にしたのが本書、『日本語の古典』である。

読んでみると、日本古典の代表的な作品について、現代風な視点からわかりやすく、かつ親しみやすく解説されていることが分かった。本書で解説している作品は、以下に示す目次のとおりである。

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【目次】

プロローグ

機仝斥佞卜醂呂宿る―奈良時代

  1 古事記―言葉が生む悲劇
  2 日本書紀―リアルな歴史叙述
  3 風土記―タブーと地名由来

供ゝ族文化の花が咲く―平安時代

  4 竹取物語―成長するかぐや姫
  5 伊勢物語―命をかける、それが愛
  6 うつほ物語―理想の男性を造形する
  7 蜻蛉日記―告白日記を書かせたもの
  8 大和物語―歌物語から説話文学へ
  9 落窪物語―セリフから人物が見える
  10 枕草子―エッセイストの条件
  11 源氏物語―言葉に仕掛けられた秘密
  12 堤中納言物語―カタカナを書く姫君は何歳か
  13 大鏡―権力闘争を勝ち抜く男
  14 今昔物語集―落差のある言葉遣いの魅力

掘〕霎い鮴犬た人は語る―鎌倉・室町時代

  15 方丈記―見事なドキュメンタリー
  16 平家物語―鮮烈に描かれる若武者の死
  17 とはずがたり―愛欲に生きた人
  18 徒然草―兼好法師は女嫌いか
  19 太平記―「武者詞」の活躍
  20 風姿花伝―経験と情熱の能楽論
  21 狂言―短い時間で笑いを作る
  22 伊曽保物語―450年前から愛された翻訳文学

検―醋韻楽しむ言葉の世界―江戸時代

  23 好色一代男―近代的なプレーボーイ
  24 おくのほそ道―句を際立たせる
  25 曽根崎心中―言葉が人形に魂を吹き込む
  26 雨月物語―怪異のリアリティ
  27 東海道中膝栗毛―シモネタの生む開放感
  28 蘭東事始―翻訳者の良心の告白
  29 南総里見八犬伝―迫力満点の戦闘シーン
  30 春色梅児誉美―心を揺さぶるエロチシズム

エピローグ

参考文献
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現代人が日本の古典作品を読む意義は何だろう。私の考えでは2つあるように思う。一つは、この本の著者が本書の「プロローグ」でも述べている通り、相対化する視線が養われるということだろう。私たちが現代で使用している日本語が日本語の姿としては絶対だと思い込んではならないと思う。そうではなく「現代では私たちは日本語をこれこれこういうふうに使っているが、昔はこんなふうに日本語を使っていた…」というような視線で日本語を見る視線が獲得できるのではないだろうか。

もうひとつ、現代人が日本の古典作品を読む意義は、JT生命誌研究館館長の中村桂子さんがかなり以前に新聞紙上で言っていたことだが、グローバル化など社会の構造が時代とともに激しく変化する今日であるが、私たちの心に変わっていいものと変わってはならないものとについての哲学を得ることが必要である。そのための一つの教材として、中村桂子さんは『平家物語』を挙げていた。多分、必ずしも『平家物語』でなくとも、日本の古典作品群の中には、そういう期待に応え得るものが多数含まれていることだろう。
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