教科書における「歴史」と、大学受験における「歴史」とがダブルスタンダードになることがもっとも警戒すべきことだと思う。この記事を読むと、「大学入試で教科書に載っていない言葉が出題されると、次の教科書改訂時に追加される形で増え続け、1950年代の3倍近くになった」と書いてある。ということは、教科書編纂をする側に主体性が欠如しており、「高校におえる歴史教育はどうあるべきか」はそっちのけになり、「大学入試への傾向と対策」に引っ張られてばかりいるという、これまでの現状が透けて見える。
この現状を打破して高校での歴史教育のあり方を抜本的に改めないと、また「大学入試で教科書に載っていない言葉が出題されるたびに次の教科書改訂時に追加する」という傾向が発生してしまうだろう。この記事では詳しく載っていないが、「高校や大学の教員らでつくる研究会」というのがどうも胡散臭い。やはり文部科学省がイニシアチブを発揮するべきだろう。しかもそのイニシアチブは、大学入試における「歴史」の試験科目において、安易に語彙を拡大しないように歯止めをかけることも併せて行うべきである。
研究会は教科書の用語を減らすことで、歴史の流れをつかみ、社会や生活が変化した理由などを考える授業を推進したいらしい。それはとても結構なことだと思う。しかしそうだとしたら、大学入試における歴史科目の入試問題作成の場においても、「用語を減らし、歴史の流れをつかみ、社会や生活が変化した理由などを考える能力を試す問題」を作成していくべきだ。
************************************************************
■教科書から消える候補 信玄も
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=2&from=diary&id=4924779 高校や大学の教員らでつくる研究会が、高校の歴史教科書に収める用語を半分に絞る「精選案」をまとめた。暗記中心になっていた歴史の学習を、思考力を育てる内容に変えるのが狙いだ。精選案には人気のある坂本龍馬や上杉謙信、武田信玄らが含まれておらず、波紋も広がっている。【水戸健一】
信玄・謙信も候補に
精選案をまとめたのは、教科書の執筆者を含む全国の高校、大学の教員ら約400人が所属する「高大連携歴史教育研究会」(事務局・京都市)。
研究会によると、高校の日本史と世界史の主な教科書に収録されている用語は現在3400〜3800。
大学入試で教科書に載っていない言葉が出題されると、次の教科書改訂時に追加される形で増え続け、1950年代の3倍近くになった。
一方、文部科学省は小中高で「主体的・対話的で深い学び」への転換を進めている。3年後に大学入試センター試験に代わって始まる大学入学共通テストでも思考力や記述力が重視され、見たことのない資料に関する問題を基礎知識を活用して解く力が試される。
研究会は教科書の用語を減らすことで、歴史の流れをつかみ、社会や生活が変化した理由などを考える授業に変えることを目指す。
精選案は日本史1856語、世界史1835語。日本史では坂本龍馬が「知らなくても明治維新は理解できる」として外されたほか、蘇我馬子、桶狭間の戦い、大岡忠相(越前)、吉田松陰が含まれていない。世界史ではクレオパトラ、マリー・アントワネット、ガリレオ・ガリレイなどが省かれた。
精選案は先月、インターネット上で公表。教科書出版会社や学会、教員などから意見を募っている。ツイッターで「明治維新は坂本龍馬を抜きに学べない」といったつぶやきが相次ぐなど反響が広がっている。
研究会会長の油井大三郎・東京大名誉教授(現代世界史)は「選んだのは教科書の本文に掲載すべきもの。他の用語も、授業で挙げることは否定しないし、教科書のコラムにあっても構わない」と話す。
歴史関係は学会が時代や地域ごとに細分化されているほか、取り上げ方によって政治的な議論を呼ぶ用語もあり、これまで教科書に収録する用語を絞る動きは活発にならなかったという。
ログインしてコメントを確認・投稿する