事態が大きく動いた。
セスの動向を探っていた彼の元上司・ハスタムの隊が少女・ジェスベルを誘拐したのだ。
1巻では有能だが冷酷な指揮官として紹介されたハスタムだが、
この巻では、さらに残忍で野心家という側面が強調される。
地震をおこす「何か」を呼び込んでしまうジェズベルのことを
「兵器」として高く売れると踏んだのである。
懸命にハスタム隊を追うセスは、忌地と外を隔てる長大な城壁に至る。
どうやら、ハスタム隊は朽ちて壊れた城門の隙間から外の国に出たらしい。
ということで、セスはここで忌地の若手リーダー・ルドーとも別れることになる。
忌地の者は、外に出ることが許されていない。
それにしても、崖の奥深く消えた黒呪術師のカイルといい、
今のところ、カイルとの縁と忌地からの移住計画の説明役に留まつている導師といい、
セスは、ようやく出会えた信頼のおけそうな人たちをみんな忌地に残したまま、
単身、故郷のある東方諸国に戻るのだった。
なんというか、スピード感はあるのだけれど、
こう次々と人が退場していくと、世界観についていくのに苦労する。
よもや、ここへきて、ハスカム隊との対決が物語の軸になるとは。
しかも、次が最終巻とのこと。
セスはジェスベルと再会できるのか、地中に消えたままのカイルの運命やいかに、
ジェスベルを追う「何か」の正体は何か、なぜジェスベルは誰とも話が通じるのか、
誰も知らないジェスベルの故郷・カルワリアのセミタ村はどこにあるのか、
ひょっとすると、すべての謎の根源なのかもしれない忌地の移住計画はどうなるのか。
そして、この盛りだくさんの謎の数々を、本当にあと一巻でたたんでしまえるのか。
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