ゆったりとした流れが多い「麒麟がくる」にしては、
駿河・美濃・尾張・美濃・近江と目まぐるしく舞台が移り変わりました。
しかし、そのほとんどに光秀がかかわっているため、
ことさらに「お使い」感が強くなったように感じます。
まずは、駿河。
この場面だけならごく当たり前の家康と義元との対面シーンに見えますが、
先週の家康の辛抱強さと深慮を見ているので、
やっぱり今川家を値踏みしてるだろうとか、いろいろ考えさせられます。
美濃では、道三が光秀を織田家への公式の使者とします。
これでは41歳まで所在不明の光秀が公式の歴史に載ってしまうと心配しましたが、
平手の援軍要請自体が水面下の歴史ということなのでしょう。
尾張では、和議しかあるまいという信長の具体的かつ現実的な提案に、
うっかり織田と今川との仲介役には将軍がよいと光秀自身が言い出し、
光秀が自ら将軍への仲介策をめぐらすハメになります。
そもそも、道三が裏切れば自分は磔という帰蝶に、その像が頭に浮かんだ光秀よりも、
さっと膝枕の体勢に入りイチャつきながら絶対にオマエを守るという意志を示した
信長の方が何をするにも一枚上手です。
二度目の美濃では、
直情すぎでスキだらけの義龍に謀反を口にさせた
土岐頼芸の口先介入ぶりが名人芸でした。日銀総裁でもさせたいほどです。
地方の美濃とはいえ、この頼芸はまだ権力に対する執念が見て取れます。
一方、近江の将軍義輝は、いささか気弱でした。
和議の仲介を頼まれた将軍が近江の山村に潜んでいては格好がつきません。
1551年に義輝が和議を仲介したのは史実のようで、
京から坂本、堅田、朽木と追われた義輝が京に戻ったのは、1552年のことです。
つまり、ドラマは、光秀というカメラを通して、勃興する戦国大名の金と力を描きつつ、
足利家もしくは室町幕府という沈みゆく船の姿を「見える」化しているのでした。
というわけで、今回の秀逸は、
光秀と平手との会見の場にもいるばかりか、
その話を先に聞いているという帰蝶の正室/人質とは思えぬ無双ポジションぶりでも、
またも、うっかり義龍に「今後、そなたの申すことは何でもきく」と言ってしまう光秀の
近い将来にやってくる命運を大きく左右しかねない言葉の軽さでもなく、
いきなり鼻をかむところから膳に注がれ続ける酒まで、
相手が頼ってきた瞬間、一気に強気になる土岐頼芸を演ずる尾美としのりの
往年の大林宣彦ファンには我がことのように嬉しい
面倒くささを含みつつ余力を残している成長した大人の役者ぶり。
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