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2019年11月18日15:49

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いだてん第43回「ヘルプ!」を見る

「東京オリムピック噺」にドラマが追い付いてどうなるのかと思っていたら、
なんやかんやで、五りんは「東京オリンピック宣伝部長」になってしまいました。

いろいろな意見もあった「東京オリムピック噺」のパートですが、
冒頭に、今回が何の噺かを示す狂言回しの役割以外にも、いくつかの効能がありました。

ちぃちゃんも登場した女子体操着の変遷を紹介した場面のように、
本来ならナレーションで処理するようなドラマの補足説明を担当したり、
人見絹江を家政婦扱いした場面のようにドラマが現代の感覚に合わないときに、
視聴者目線でツッコむというのもありました。

満州事変をめぐる描写では、「関東軍の自作自演」というツッコミをしつつ、
当時は日本の都合が悪い記事が載せられなかったという補足説明もしていました。
あるいは、IOCイタリア委員にオリンピック辞退を迫る場面を吹き替えするなど、
緊張しすぎたドラマを緩和させる役割もありました。

先週の女子バレーの場面での「これは虐待ではありません」は、
現代目線との修復については森山未來の「語り」に引き継いだように見えるし、
今週のインドネシアをめぐる世界情勢についての補足説明については、
石山アナウンサー(誰?)のニュース解説が引き受けたようです。

となると、バレーボールを顔面で受ける五りんに残された役割は、
コメディリリーフでしかないのですが、本当にそれだけなのでしょうか。

さて、「いだてん」の国旗考証・吹浦忠正さん役の友達のいない学生・吹浦忠正の登場、
聖火リレーの概要決定、女子バレーの五輪参加と順調に準備が進む中、
インドネシア・アジア大会をきっかけに話が一気に政治的になっていきます。

当時、インドネシア、インド、ユーゴスラビア、時に中国を含む諸国が代表となり、
第二次世界大戦後にようやく独立を果たしたアジア・アフリカ諸国をまとめることで、
米ソの東西同盟に属さない「非同盟諸国」「第三世界」と呼ばれる国家群を形成していました。

日本は平和国家と言いつつ、当然にアメリカの側に属するのですが、
アジアの一員として、もしくはアジアにひどいことをやってきた国の責任として、
アジアの声に耳を傾けねばならない立場もありました。

とはいえ、イスラエルや台湾にビザを出さないというのはあまりに政治的で、
しかも、その情報すら断片的で、誰かがコントロールしている気配さえあります。
かといって、東京オリンピックの開催に立ち返るなら、
IOCを本気で怒らせるわけにもいきません。

なら、どうするべきなのか。
もはや、田畑は、ただ田畑としてのみシャカルタにいるではありません。
ストップウォッチの音が、田畑の中の嘉納治五郎が、田畑を追い詰めます。

オープニングでも泳ぐのをやめて立ち止まってしまうほどに苦悩した田畑は、
いつも治五郎先生の肖像画と対話してきたように、
「嘉納さんならどうしていたか」という自問自答を繰り返すのでした。

それにしても、ここに至っても嘉納治五郎。
アジア大会選手団の結団式で仰ぎ見るのも嘉納治五郎。
声だけでも嘉納治五郎。香盤のトメは今週も嘉納治五郎。
ジャカルタの日本選手団の危機を救った通訳のアレンさえも、
きれいに一本背負いを決める嘉納治五郎の化身だったのでした。

「敵の陰謀」や「迫られる決断」というのは、いかにも大河らしい展開なのですが、
むしろ、ここまで露骨に政治のイヤな話を表にされると、
かえって「いだてん」らしくないとさえ感じてしまいます。

治五郎先生の「政治とスポーツは別モノ」という理想は正しいのかもしれませんが、
スポーツがオリンピックに姿を変えてしまうと、
どうしても政治が付きモノになてしまうのかもしれません。

本当に来年のオリンピックを成功させたいなら、いち早く協力姿勢を見せるべきなのに、
自分に批判の矛先が向かうのを避けたいがために、
東京が被害者である側面を強調し、攻撃対象を札幌にすり替えた政治家がいたように。

というわけで、今回の秀逸は、
俺の絵も「飾ってくれ」と自ら言う懐かしの残念ブラザーズの片りんを見せつつ、
さりげなく紹介された、この時点でまだご存命の可児先生でも、
台本上仕方なかったのかもしれないが、どう見ても妊婦服を着ているのに、
好男子・岩ちんを見るや五りんをただの友達と脇に押しやってしまう知恵の色目でも、
アベベに金栗足袋をプレゼントして、いまだ健在ぶりをアピールした老・黒坂辛作でも、
女子バレーのオリンピック出場の報に、すかさず「大会はいつですか」と返した、
大松以上に怖かったとの伝説もある河西昌枝の番頭ぶりでもありません。

今回は、これ。
「友達いないだろ」と同志発見とばかりに声をかける田畑に対して、
嬉々として「はいッ」と返事する、おりむぴっく噺・五りんと国旗専門家・吹浦忠正の、
あまりにもわかりやすいオリンピックに対する信仰告白。
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