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2019年09月23日14:41

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いだてん第36回「前畑がんばれ」を見る

いろいろと考えさせられた先週の孫基禎の金メダルとは異なり、
今週は日本中の善男善女が手放しで前畑秀子を応援することができた45分間でした。

だからでしょうか。
なぜか現・東京市長の横にいる「どうして銀メダル」の永田元東京市長を始め、
勝手に朝日新聞社で宴会をしている「お留守番ピック」の野田、鶴田、高石や、
続々とハリマヤに集まる四三と小松に、清さん・小梅夫妻と、
本来なら、この場に登場する必然性のないたくさんの登場人物が、
「すべての日本人」を象徴するかのように「前畑がんばれ」のために集まりました。

足し算をすれば毎日20kmという走っても歩いてもつらい距離を泳ぎ続けた前畑ですが、
日本中からの期待は224通の激励電報という形に姿を変え、
ロサンゼルス以上のプレッシャーとして襲い掛かってきます。

冒頭の五りんの「前畑がんばれ」と前畑の「あと1/10秒」が交錯する映像が、
無邪気な国民の期待が前畑へのプレッシャーと重なっていることを
わかりやすく表現しています。

そんな期待という名のプレッシャーを文字通り飲み込んだ前畑の決勝が始まると、
それでも善良なる日本国民は、ベルリンまで聞こえるはずもないのに、
ラジオのスピーカーに向かって「がんばれ」と叫び続けることしかできませんでした。
そして、その滑稽さがベルリン・オリンピックの数少ない明るい側面でもありました。

帰国した田畑の手元には、笑顔の前畑と田畑自身の写真が残されました。
本当ならば、明るい記憶とともにあるべき写真ですが、
それを撮影したヤーコプのことを思うと、
しかもその時には自殺を決意していたかもしれないと思うと、
やはりつらい記憶を消すことが出来ません。

先を急がねばならない「いだてん」としては、
ナチスによるユダヤ人虐殺を取り上げる時間はありません。
しかし、そんな時代が近い将来やってくることをきちんと押さえておくためには、
聡明だが気弱で先を見通すことのできたヤーコプを登場させる必要があったのでしょう。

というわけで、今回の秀逸は、
悪意はないのだが、なかなか相手に気持ちが通じない四三の「押し花」電報でも、
幽霊だからこそ前畑の前に出てくることができた両親の慈しみの手のひらでも、
金メダルの瞬間とはいえ、思わず抱き合ってしまった小松とりくちゃんの急接近でも、
思いのほか率直に治五郎先生の言葉への疑問を投げかける副島伯爵の冷静さでもなく、
東京オリンピックの準備へのプレッシャーと組織委員会の迷走だけでは説明のつかない、
四三を前に「いだてん」という言葉さえも出てこなくなった加納治五郎の疲労と衰弱。
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