前回の日記以降に観た自宅観賞映画は次の９本。相変わらず節操の無いＣＳ録画セレクトで、キッズ ステーションでアンパンマン２本、アニマックスで銀魂アニメ版と３本のアニメ三昧、アジア ドラマチックＴＶ（アジドラ）で「国家が破産する日」「第３の愛」と韓国・中国映画、映画・チャンネルＮＥＣＯと日本映画専門チャンネルからピンク映画２本といった按配だ。
「国家が破産する日」「第３の愛」「はしれ！わくわく アンパンマン グランプリ」
「それいけ！アンパンマン ブラックノーズと魔法の歌」「空に聞く」
「劇場版 銀魂 新訳 紅桜篇」「リンカーン／秘密の書」
「疑心乱交 闇夜にうごめく牝尻」「童貞幽霊 あの世の果てでイキまくれ！」
でも、私としては節操が無いわけではなく、映画とはこれだけ多種多様だからこそ面白いのである。荒井晴彦さんに「お前、映画なら何でもいいんかョ」と冷やかされても、ここに私の映画を愛する根幹があるのだから致し方ない。
この中で「国家が破産する日」は、私にとってベストテン級の傑作であった。１９９７年に韓国が国家破産し、ＩＭＦから資金を導入した時代を活写した大型社会派ドラマだ。
これを、国民優先目線の韓国銀行（日本なら日銀に相当か）通貨政策女性チーム長・財務省幹部・ＩＭＦ派遣委員や黒幕の米財務官・富裕層の利益を護ることのみ腐心する政府高官・金融危機に翻弄される庶民の経営者・間隙を縫って退職独立し暗躍して一攫千金を目論む銀行マンと、多彩な人間ドラマが展開する。山本薩夫「華麗なる一族」を彷彿させる鳥瞰的視点が見事だ。
いや、「国家が破産する日」は徹低的にスケールが違う。「華麗なる一族」は所詮（失礼！）たかが太陽と神戸の都市銀行合併に過ぎず、こっちは国家破産のスケールだ。しかも、日本の社会派映画は全部が右翼・保守反動・自民党政権が悪いのよといったあたりに収斂し、踏みにじられる庶民の哀感で終わってしまうのに対し、「国家が破産する日」では敗北した女性チーム長が、２０年後の現在民間機関に転出し、国の陰謀に一矢報いるべく牙を研ぐ。このあたりも、日本映画との違いだ。
日本にも「沈まぬ太陽」「空母いぶき」「Ｆｕｋｕｓｈｉｍａ５０」の若松節朗のような、左翼小児病的な視点を脱却したスケールの大きい社会派作家はいるのだが、赤い色気が付いていないと一般マスコミ受けしないようなのが残念だ。
韓国映画の題材のスケールは、逆立ちしても日本映画には敵わないものがある。集団抗争劇「シュリ」の迫力で韓流が日本映画興行のメインに躍り出たのだが、深作欣二「仁義なき戦い」を越えるものとは思えなかった。ただ、こなた広島やくざ戦争、かたや分断国家の民族闘争とあっては、スケール感では太刀打ちできない。もっともこういう題材がゴロゴロあるのが、幸せな国家かどうかかは別問題だが…。
「国家が破産する日」の日本公開は２０１９年。ここで私の同年ベストテンを紹介したい。
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ということで、「国家が破産する日」は私にとってのベストテン級ではあっても、ベストテンそのものは変動しません。韓流ではすでに「金子文子と朴烈」が入っており、どちらを選ぶかといえば、やはり日本と関係の深い題材の「金子文子と朴烈」を採ります。私は寺脇研さん程に韓流オンリーではないので、２本も並べる気はありません。
外国映画ベストテンの意味は、このように多種多様な国々の映画が並んできたので、かなり変わってきた。昔は単に私にとり良かった・面白かった順に羅列していればよかったが、今は様々な魅力のタイプの映画を、万遍なく並べることを意識している。だから、前にも記したが私にとっての年間ベストテンの意味が空無化しているのは事実だ。そこは映画は多種多様だからこそ面白いとの、私の映画愛にも通底しているところでもある。ま、全てはお遊びに過ぎないのだが。
最後に私自身のメモリアルとして全作品の感想を残すことにしたピンク映画の、ＣＳ録画観賞した３月７日（月）「疑心乱交 闇夜にうごめく牝尻」、３月８日（火）「童貞幽霊 あの世の果てでイキまくれ！」について記します。
「疑心乱交 闇夜にうごめく牝尻」（竹洞哲也）
ヤバい取引がこじれ、銃撃戦の果てに山奥の保養所に、女管理人を巻き込み転がり込んだ女一人を交えた５人組の悪党達。こんな事態に至らせた裏切者は誰か？そんな疑心暗鬼の興味で引っ張っていくかと思いきや、唐突に主人公の過去が絡んだホラーに転調していく。監督＝竹洞哲也、脚本＝当方ボーカルは名コンビなのだが、時に要領を得ない怪作を生み出す。私には、これもそんな一本としか思えなかった。（あまりよくなかった）
３月８日（火）
「童貞幽霊 あの世の果てでイキまくれ！」（塩出太志）
深町章作品「いんらんアパート 毎晩いかせて！」という楽しいコメディがあった。処女のまま他界してしまったうら若い女が、四十九日の間はこの世をさまよえることから、性に目覚め淫乱の限りを尽くす一篇である。御贔屓里見瑤子嬢が、ピンク映画女優として処女に映像的説得力を魅せた白眉の映画だったが、そんな余談はさておいて、今回はその男性版といったところ。本作の仕掛けは、主人公が仮死状態の幽霊だが、失神中の人間の肉体をその間だけ乗っ取れるということだ。多くの死者の幽霊と知り合いになり、その範疇ではイキまくることもできた。死者の幽霊も失神者乗っ取りの能力を有していることが判明。全員に関係するＤＶ男への復讐を目指して、男女関係なく乗っ取りを繰り返す。オチはＳＦ頭があると思っている私にも、作者だけは判っているみたいだけで、やや説明不足の感は否めない。閻魔大王まで巻き込んだ壮大な法螺話だけに、７０分のピンク枠での説明が限界のような気もするが、黒幕の悪魔めいた存在の意味も不明瞭。ネタバレになるので、これ以上の言及はご容赦ください。でも、男と女の肉体と心が無茶苦茶に入り混じって醸し出すカオスのドダバタは、なかなかに楽しい見物だった。（よかった）
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