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2021年10月14日10:37

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キアロスタミの隠れた傑作に出会った

10月14日(木)

 見逃した気になる過去作の落穂拾い自宅観賞、相変わらず継続中だが落穂拾いだけあって、さすがにわざわざここに記したい程の、作品にはなかなか出遭わない。だが、12日(火)にCS放映された「ホームワーク」は、私にとってベストテン級の傑作だった。

「ホームワーク」は、ザ・シネマのアッバス・キアロスタミ特集の中で放映された1989年作品(日本公開95年)である。キアロスタミ映画はほとんど押さえていたが、これは77分のドキュメンタリー小品で、私としては落穂映画になってしまったようだ。しかし、これは相当の意欲作だった。

「ホームワーク」は、87年作品「友だちのうちはどこ?」を通じ、自分の子供の宿題に疑問を感じたキアロスタミが、このテーマで子供たちへのインタビューを集積した一篇である。それを通じて、大人達の誤った教育方針・体罰主義・文盲率の高いイランの現実etcが浮き彫りになってくる。

 ここにキアロスタミの社会批判があるのだろう。しかし、下手な発言はイランの厳しい検閲下では、言論封殺の危険が伴う。キアロスタミを筆頭にイラン映画が児童映画の体裁を採るのはカモフラージュの意味合いもあるようだ。

「ホームワーク」でのキアロスタミは、あくまでも子供に対するインタビュアーに過ぎず、主張することはない。しかし、子供の発言を累積・編集し社会矛盾を浮き上がらせる手腕は絶妙としか言いようがない。

 でも、児童映画を隠れ蓑にする苦肉の策を他人事と思ってはならない。日本でも、ホントにヤバいテーマに深くコミットしているのは、「名探偵コナン」「クレヨンしんちゃん」etcのアニメであるとの現実がある。

「ホームワーク」が撃つのは、教育問題のみに止まらない。子供たちの発言の中ではイラン・イラク戦争すら大きな影を落とす。インタビュー画像が黒味で中断されるあたりに、そこが持つ闇すら無限に想像させた。

 制約の多い国家の中で表現はどう戦うべきか。そんなことまで深く考えさせる「ホームワーク」は問題作であった。


 10月に入って観た他の落穂拾い映画は次の13本。

「アナベル 死霊博物館」「氷の接吻」「アナと世界の終わり」「弱虫ペダル」
「スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼」
「劇場版 おっさんずラブ LOVEorDEAD」
「エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ」「ハッピー・デス・デイ」
「ハッピー・デス・デイ 2U」「風をつかまえた少年」
「バッドボーイズ フォー・ライフ」「ホームワーク」「マジェスティック」

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