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2019年06月24日20:16

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1年の半分弱近くに至り、邦洋共に私のベストワン候補に遭遇

6月8日(土)  ラピュタ阿佐ヶ谷
                 添えもの映画百花繚乱 SPパラダイス!!
「警視庁物語 血液型の秘密」(飯塚増一)
「警視庁物語 聞き込み」(飯塚増一)
東映の隠れた人気シリーズ。1時間弱で、ロケ中心の低予算映画。芸達者は揃えているがノンスター。昭和35年当時の東京の風景が、今となると貴重な映像だが、これだけロケを多用できたのはノンスターだったこともあるだろう。時間の制約から、ミステリーとしては凝ったものはできない。ただ、この二本は今井俊二をブリッジにした連作の「遊び」があり、「血液型の秘密」のエンディングに感じた物足りなさが、「聞き込み」で見事にフォローされていた。封切も同じ月(撮影も同時だったか?)なので、当時の人にはこの洒落っ気も理解できたろう。(まあまあ)


6月12日(水)  立川シネマシティ

「ベン・イズ・バック」(ピーター・ヘッジズ)
薬物依存症治療施設に収容されている19歳の青年が、クリスマスイヴに臨時帰宅する一晩の物語。時間限定の中で、薬物依存の深刻さや、売買組織の恐ろしさが、ギッシリとサスペンスフルに盛り込まれて、グイグイ引き込まれる。青年の母を熱演するジュリア・ロバーツの愛の深さ強さが絶品だ。「ワンダー/君は太陽」の少年の母親からさらに歳を重ね、ジュリア・ロバーツは実に良い歳の取り方をしている。でも、ハッピーともアンハッピーとも感じられるエンディングは、どんなものだろう。余韻と言えばそれまでだが、ひと昔前のアメリカ映画は、淀川長治さん言うところの「やったらやれる」精神で、後味良く予定調和で納めたものだが、オールドファンの私としてはやっぱりそっちが、より趣味である。(よかった)

「さよならくちびる」(塩田明彦)
L.G.B.Tの門脇麦とSEX依存症の小松菜奈のデュオに、過去の女性関係がトラウマとなっている付き人の成田凌が絡んでの、奇妙で微妙な三角関係。と文章で記すと直接的になり過ぎて、エグい映画を想像させるが、そんな雰囲気とは無縁な爽やか篇である。行間を読ませる間接話法の、塩田明彦演出が「粋」だからだ。塩田作品としては、久々の商業主義映画に流されなかった佳作になったと思う。(よかった)


6月18日(火)  Bunkamura ル・シネマ
「僕たちは希望という名の列車に乗った」(ラース・クラウメ)
1956年、東独の高校生が、祖父の墓参りのついでに、西ベルリンの映画館にヌード映画目的で潜り込み目にしたハンガリー動乱のニュースフィルム。東独の学校にもどり軽いノリでクラスメートと行った行為が、国家反逆として泥沼にまきこまれていく。ナチ支援者の過去を持つ親、レジスタンスだった親、様々な背景を巻き込んで、社会主義国家は、ゲシュタポと同質の過去の再現の恐怖にすらのめり込んでいく。戦後70年を越えての、ドイツの戦後検証の奥深さには感嘆した。実話とはいえ、決して負け犬の遠吠えだけには終わらない高校生達の、最後の決断に爽やかな感動が残る。(よかった。ベストテン級。目下、洋画ベストワン候補)

 日本の戦後は、分断国家にはならなかった。人間天皇の下に国体は護持され、戦犯は連合国に丸投げ(BC級戦犯の問題はあるにせよ)、大多数の国民は一部軍部にだまされたとの言い逃れで終焉させた。それが、良かったのか駄目なのか、ドイツの苛烈な戦後検証を改めて観るにつけ、深く考えさせられるが、だから日本はお粗末とは、私は単純に言いたくない。


6月19日(水)  上野オークラ劇場

「ギャル番外地 シメさせてもらいます」(山本淳一)
文明が崩壊しネット空間が壊滅した未来。ビジュアル的にはCGを駆使して、それなりのスケール感を出しているが、紡ぐドラマが古風なスケバン物の変型で、もうひとつだった。(まあまあ)

「和服のイヴ 絶品腰づかい」(珠瑠美)
義兄に犯され、横暴な夫の性愛にも耐えながら、女のししたかさでジワジワ反撃に至る。そんなドラマはどうでもよく、濡れ場の方便で転がるXces凡ピンク。神代弓子(イヴ)で魅せる正統派ピンクと言えないこともない。「和服不倫妻 恥さらしな下半身」の新版再映。(あまりよくなかった)


6月20日(木)  立川シネマシティ

「長いお別れ」(中野量太)
70歳で発症し死ぬまでの、7年間の認知症老人を取り巻く家族の物語。私は72歳、幸い認知症は発症していないが(してるのかな?)、決して他人事ではなく、素直には楽しめない。長女は海外勤務の夫に従い外国暮らし、次女は離婚妻と、現代の核家族を背景に、今風キーワードを巧みに散りばめて、泣かせどころもしっかり押さえる中野量太は、相変わらず達者である。いずれにしても、「東京物語」の大家族時代とは環境・社会状況は大きく変わっており、私も私の周辺の同世代も、似たりよったりの状態だ。私の娘などの次の世代では、非婚・晩婚・離婚・少なからぬ子の無い夫婦と、また状態は大きく変わるのだろう。そんな時の老年は、どんな風に迎えられるのか。ま、私の死んだ後のことだから、気に病んでも致し方ない。感動作だが、素直にエンタテインメントとして受け入れられないのも事実だ。(よかった)

「旅のおわり世界のはじまり」(黒沢清)
番組リポーターの前田敦子、ディレクター染谷将太、ベテランカメラマン加瀬亮、助手の柄本時生、現地スタッフのアディズ・ラジャボフの芸達者が揃い、ウズベキスタン取材のヴァラエティ制作に奔走する。現地ロケのドキュメンタリータッチが魅力的だ。日本人それぞれが、望まぬ仕事に携わっているのだが、理想を有し希望を捨てない心が愛おしい。現地スタッフの男からは、ウズベキスタンと日本の歴史の中に隠された思いが告げられるのも、社会的広がりを感じさせる。とりわけ、都市や裏通りや大自然の中を溌剌と躍動する前田敦子がチャーミングだ。(よかった)

「町田くんの世界」(石井裕也)
善意しか持たない博愛主義の高校生。でも、ここまで徹底するとサイコパス、いやそれを越えてギャグに近い。私の大好きな石井裕也のヘンな感覚が全開である。冒頭から私は、椅子から転げおちるくらい爆笑・哄笑の連続だった。ラストはキラキラ青春映画から、さらに越えてのブッ飛びファンタジー。やり過ぎだろ!と怒り出す人もいそうだが、石井裕也は俺だけが判ればいいのだ!これでいい!!悪意とエゴが蔓延し、人々がド暗いドン底に落ちた平成を越えて、それに嫌気がさした果てに、意外と令和は町田くんの世界になるかもしれない、とは深読みに過ぎるだろうか。(よかった。ベストテン級。いや、ベストワン候補)

 一年の約半分が経過して、「僕たちは希望という名の列車に乗った」「町田くんの世界」と、洋邦共にやっと私のベストワン候補に遭遇することができた。洋画は「グリーンブック」でもいいかなと思っていたが、あまりにも非のうちどころのない優等生映画なのが物足りなさも感じて(映画ファンってホントに我儘ですよね)、ベストワン!と叫びきれなかったのだ。

 私の2006年洋画ベストワンは「白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々」だった。ドイツの戦中・戦後を描いた映画は、私に大きな知的刺激を与えてくれることが多い。


6月22日(土)  上野オークラ劇場
    「好色男女 セックスの季節」公開記念 舞台挨拶&トークショー
                         サイン・握手会&撮影会
「好色男女 セックスの季節」(佐々木浩久)
事務所トップ女優売り出しの犠牲となって、枕営業要員にされる女優の卵の映画。といった内容はどうでもいい。タイトルが頻繁に出され、引用が多用され、ゴダール映画の線を狙った趣き(と、監督もトークショーで、思い切ってやらせてもらったと語っていた)。でも私にはピンとこなかった。ピンクでこんなゲージュツやっちゃうのは、どんなもんだろう。(あまりよくなかった)

 なお併映の「絶頂くらべ 人妻の味」は「誘い妻 不倫でお仕置き」の新版再映。


 ここまでで、今年の私のスクリーン初鑑賞作品は136本。

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