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2015年01月06日11:56

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『めぐり逢わせのお弁当』

映画『めぐり逢わせのお弁当』を観た。

(2013年 インド・仏・独 監督:リテーシュ・バトラ
出演:イルファン・カーン ニムラト・カウル ナワーズッティーン・シッディーキー
デンジル・スミス パーラティー・アーシュレーカル ナクル・ヴァイド リレット・デュベイ)

劇場にて、鑑賞。

【インドの大都会ムンバイでは、ダッバーワーラーと呼ばれる弁当配達人たちがランチタイムに弁当をオフィスに届けて回る。ある日、主婦のイラ(ニムラト・カウル)が心を込めて作った弁当が誤ってサージャン(イルファン・カーン)のもとに届く。イラは料理を通じて夫の愛を取り戻したいと願い、妻に先立たれたサージャンは久々の手料理の味に心動かされる。(シネマトゥデイより)】

ふむ、踊らないインド映画か…。珍しいよね。しかもお弁当がおいしそう。話題の作品らしいし映画館で観てみよう。旦那は「なんじゃこりゃ」って顔してたけどね…(笑)

以前観たインド映画の『きっと、うまくいく』も、インドの日常が描かれていた。でも、作品の性質上、どこか浮世離れしたような描写もあったのよね。だけど本作に限っては、等身大のインドが描かれているような気がするなあ。

まず驚くのが、独特のお弁当配達システム。インドでは、ダッパーワーラーと呼ばれるお弁当配達人が存在し、家から職場まで“確実に”お弁当を送り届けている。

インドの通勤事情って、お弁当が持ち運びできないほど込み合ってるのかしら?そりゃ大変だ。…なんてことを思っていたら、違うのね。これはインド特有の風習ということらしい。125年前、とある銀行員が自宅で食べている料理を職場で昼食として食べたいと思い、職場までお弁当として運ばせたことがダッパーワーラー誕生のきっかけなのだとか。面白いよね〜。

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そのお弁当の誤配から始まった主婦イラと退職間近の保険会社の会計係サージャンの物語。

たぶんイラの上階に住むおばさんのちょっとした悪戯心だったのかな。舐めたようにからっぽになったお弁当箱を見て、きれいに食べてくれたお礼にと、おばさんに言われたとおりにイラは手紙を次の日のお弁当の中にしのばせた。チャパティの下に手紙が出てきたらビックリよねぇ!まあ、次の日も間違って届くと思ってるところが突っ込みどころだったりするんだけど…(笑)

このおばさんが、姿を見せないところがミソ。会話の内容や声の調子、イラの手紙の内容だけでおばさんがどんな人が想像がついてしまう。そして、インドの介護事情も…。

メールでもそうだが、文章をやりとりするにも相性があると思う。誰とでも話が合うわけではない。イラとサージャンの間で交わされる言葉は、何気ない。おしゃれな便せんにしたためるわけでもない。その辺の紙やノートを破いたものに、心を綴る。きっと、お互いの筆跡から人柄も出るんだろうな。

お弁当を通じて、素朴だけど、素敵な心のキャッチボールが始まったのね。

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夫や子どもを送り出してからお弁当を作るって、斬新。インドって専業主婦が多いのかな。とにかく、イラの作る料理はおいしそう。チャパティ(ナンとはまた違うのかな)って、直接コンロにのせて直火で焼くのね。ビックリだわ〜。ちょっと作ってみたい気がするなー。

そんなイラとサージャンの暮らしぶりから透けて見えるインドは、とてもパワフルな感じがした。そして、『きっと、うまくいく』でも見えた部分だけど、インドは自殺大国であるという事実。介護の悩み。明るい部分と陰の部分の両方が見えて、興味深い。

予告編を観ていると、他のインド映画のイメージからコメディなのかなと思っていた。違うのね。インド映画にも、こういうシリアスな欧州テイストの作品もあるんだって驚いた。

妻を亡くし、自分の殻にこもるサージャンの心を溶かしたのはイラだけではない。仕事を引き継ぐことになったシャイク(ナワーズッディーン・シッディーキー)とも、不思議と親交を深めていくことになる。そのシャイクが語った言葉が印象深い。

「間違えて乗ってしまった電車でも、正しい場所に着く」

ラストシーンは、思わずこの言葉を心の中でつぶやいていた。…そうなれば、いいなあ…と。とても余韻の残る、いい作品に出逢えたかもしれないな〜。



『きっと、うまくいく』
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