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2017年01月15日15:31

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何がカープを優勝させたのか?(2016年カープ回顧・後編)

四半世紀ぶりの優勝となった2016年シーズンのカープ。
その原動力の一つとして、打線の全体的な成績の良化…特に得点圏打率が増加しているという話を前回書きました。
また、その得点圏打率の良化の要因としては打線全体でじっくりとボールを見極めた結果としての、打線全体で更に高くなった出塁率にあるという事も書きました。

一方で、カープ打線がそのような攻撃が出来ていたもう一つの要因としてはリーグ全体での投手成績の低下というのもあったかもしれません。

2015年と2016年のセ・リーグ投手成績の比較
防御率 3.24→3.69
WHIP 1.27→1.31
四球 427→445
※数値はいずれもリーグ平均
※左が2015年、右が2016年

上記を見てみると、昨年に比して軒並み数値が悪化しているのが分かります。
WHIPや四球も増加している訳ですから、投手自らが全体的に走者を出してしまい、それが失点に繋がっていたというように見えます。
その一方で、前田健太というアンタッチャブルな存在を失ってしまったカープ投手陣はどうだったでしょうか?

広島東洋カープ(2016年)
防御率3.20(1位)
先発防御率3.29(1位)
リリーフ防御率3.04(1位)
失点497(6位)
WHIP1.26(1位)
QS率62.24%(1位)
ホールド99(1位)
四球418(5位)

広島東洋カープ(2015年)
防御率2.92(2位)
先発防御率2.96(2位)
リリーフ防御率2.81(3位)
失点504(4位)
WHIP1.24(2位)
QS率66.4%(1位)
ホールド71(5位)
四球419(2位)
※()はリーグ内での順位

あれだけチーム全体では圧倒的な差をつけて優勝したわりには意外ですが、軒並み昨年に比べて数値は悪化しています。
しかし、2016年だけで眺めれば軒並み数値はリーグトップ。
全体的に昨年に比べて低調だったリーグ全体の成績に引きずられるように悪化はしているものの、その差分が他チームに比して小さかったと言えるかもしれません。

全体的にリーグトップな成績で特に注目したいのはホールド数。
全体的に悪化している数値の中で、大きく良化しています。
これまでのカープは先発が高いQS率を誇り、抑えも比較的安定はしていたにも関わらず、ホールドに関しては例年リーグ下位でした。
これが、なかなか出塁が得点に繋がらない打線と共に、カープが接戦に弱かった要因だったように思えます。
しかし、今季は、この数値が良化している事から元からリーグトップだったQS率と共に中盤以降で威力を発揮した打線の援護がくるまで耐える事が出来、結果として「45」という驚異的な数の逆転試合に繋がったと言えます。
とはいえ、ホールドを記録した投手の数は2015年と2016年では大きな差はありません(10人→11人)。
そうなると、やはり大きかったのはシーズン当初から8回にジェイ・ジャクソン、9回に中崎翔太加えて、7回でもブレディン・ヘーゲンズや今村猛という投手でメンバーを固定出来たのが大きいかと思います。
これまでのカープと言えば、中田簾、大瀬良大地、それに復活したとはいえ今村と良いリリーバーを発見すれば、イニングも起用シチュエーションもメチャクチャな起用をした挙句半年から1年程度で使いつぶすような刹那的な継投が多かったのを思い出します。
しかし、2016年に関してはその一人の投手に被さるリスクが分散できていた事がリリーフの安定とホールドの増加を促したと言えるでしょう。
とはいえ、このチームも2016年4月半ばまではなかなか7回の投手が安定せずにジャクソンや中崎に負担が大きくなる可能性は大きかったのです。
もっとも、それを解消する要因となったのは、エクトル・ルナの故障というまさに「怪我の功名」という形で周ってきたチャンスであまり本職とは言い難い中継ぎで活躍したヘーゲンズの存在という偶然。
これが、中継ぎのみならず、シーズン全体の成績を左右した転換と言えたかもしれません。

一方、前田健太が移籍したうえに、その穴を埋める事を期待されていた大瀬良大地が故障で大幅に出遅れ、加えて福井優也の不振という事態に陥ったにも関わらず、大きく崩れなかった先発陣。
クリス・ジョンソンと黒田博樹の奮闘に加えて、上記二人より期待値が高いとは言い難かった野村祐輔の復活もありましたが、見逃せないのは規定投球回数に届かない投手たちの勝ち星の多さでしょう。
2015年が「21」に比べて2016年が「31」と大幅に増えていて上手く全体でカバー出来ていた印象です。
その中にはシーズン序盤だけで活躍した横山弘樹や、同じく終盤のみで活躍した薮田和彦のようなパートタイム的な投手が大半を占めていてその内訳も最大がせいぜい5勝だった福井くらいです。
勝率10割を数え、交流戦での躍進の原動力の一つとなりながら不注意による怪我という愚行でリタイアした戸田隆矢のような投手がいても容易に大崩れしなかったのはこれらの投手がそれなり(場合によってはそれ以上に)試合を作ってくれたからでしょう。
そして、その作った試合を特定の投手への依存が軽減されたリリーフ陣が上手く引き継ぎ、打線が逆転もしくは突き放す事が出来た事がこの数字の増加に繋がっていたといえるかと思います。
これまた、主戦とローテ候補の隔たりがあまりにも大きかったこれまでカープでは考えられなかったような事態です。
先発・ブルペンと、それぞれのセクションで特定の選手への依存を抑え、リスクが上手く分散出来ていた事が当初大きく懸念されていた投手陣の崩壊を防いだと言えるでしょう。

全体的に利他的な動きが多く穴を見出しにくい陣容を作り上げた打線と同じく投手においても穴を群の力で埋めていた。
この事実があの打線と共にあの2016年の大勝劇を生んだ要因の一つでしょう。

また、守備面も見逃せません。
2015年は「88」を数えた失策数が2016年は「67」に減りました。
元々、菊池涼介や田中広輔とRF(レンジファクター)やAZR(アルティメットゾーンレーティング)が高い数値を誇る選手がいる以上は失策数が必ずしも守備が脆いという事を示す訳ではなかったのですが、失策が減ったという事はより強固になったという証です。
カープの三振数は2016年は「966」で実はリーグで2番目に低い数値。
しかし、それでもあの防御率やWHIPを実現出来た以上は、守備の強固さも大きな要素だったかと思えます。

2016年、投打守備と様々な部分で数値が良くなった或いは現状の維持に成功したカープ。
MVPに輝いた新井貴浩や、沢村賞に輝いたクリス・ジョンソンなど主力が軒並み個人成績で躍進した事は勿論ですが、それと同時にこれまでなかった「それなりの選手」が攻守共に上手く活用出来ていた印象です。
それら一つでも欠けていればこのような素晴らしい結果は生まれなかったでしょう。
つまり、全体として一つの事柄だけで優勝がもたらされていた訳では決してなかったという事です。

願わくば、この流れがそのまま続いてくれる事を祈って…。


【各種数値を参考にさせて頂いたサイト様】
「プロ野球ヌルデータ置き場」様
http://lcom.sakura.ne.jp/NulData/

「データで楽しむプロ野球」様
http://baseballdata.jp/

「プロ野球データFreak」様
http://baseball-data.com/

「NPB.jp 日本野球機構」様
http://npb.jp/

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