天国と地獄

ただでさえ、三回忌でやっかいな悩みの種が増えてしまったが

そんなのお構いなしに、1/19という日付はやってきた。
そう、この日はNさんが俺の部屋に来る日。都内に引っ越してから、女性が自分の部屋を訪ねるということは初めてである。

朝早めに起きて、洗濯や掃除、片付けをある程度しておいた。昼飯は、Nさんが近辺の飯屋を探してくれたらしい。。。駅から徒歩数分の場所だが、部屋とは反対方向にある飲食店で、全くのノーマークな場所だった。うまい蕎麦屋があるとは…。

シェアハウスと言えども、一人暮らしを始めたって言うんで、OKストアの安さに嫉妬させようとOKストアに連れていく。道中

俺「近隣のウーロン茶2Lとアイスの価格、覚えてきたか？」
N「あー忘れてた…けど、昨日スーパーでおにぎり2個買ったよ」
俺「ほお。それは、いくらだった？」
N「確か…1個99円だったね」

店に入る。総菜コーナーに連れていく。

俺「ではこちらをご覧ください。」

おにぎり
1個49円
3個パック、138円

N「……この店大丈夫なの？」

大丈夫。それでも利益出てるから。おにぎりね…。俺が現役の頃から値段変わってないんだよな。多分サイズをちっちゃくして、原料費高騰に耐えているんだろうけど。

で。マイルーム。

N「おお、本当にテレビが無い。」
俺「どうよ。忌憚のない意見をどうぞ？」
N「そうね…。なんか、モダンテイストだね。色が決まってる。」
俺「色？」
N「壁は白、パソコンデスクが茶と白。掛け布団は青と茶、テーブルも茶、掛け時計も茶。ラグとカーテン、ソファーが青系統。スッキリしているね。」

……言われてみて気付く。確かに同じような配色ばっかだな。決して意図的にそうしたワケじゃない。完全に自分の感性に任せきった部屋だ。だから、意識してないが、これが俺好みの部屋なんだろう。

俺「……なるほど。自分でも全然気付かなかった。」

さて。テレビのない部屋で二人きり。なので、話題が無くて「テレビで話題を共有」なんていうマネは出来ない。というか、そもそも俺の部屋にきた理由は、「テレビのない部屋のコーディネートが気になる」なので、少なくともNさんもテレビに興味がないというのは共通している。なので、テレビが無いから話題に困る。ということは、無かった。


4時間ほど喋った。自分の部屋に来ると同時に、もう1個約束事をしていた。


イルミネーションを見に行きたい。と。
そして、このイルミネーション。実はクリスマスの時に誘われていたが、誘ったN自身がどうも都合つかなくなってしまい、キャンセルになったという経緯がある。


………自分の部屋に来てからの、イルミネーション…か。


18時からライトアップされるということで、17時半に部屋を出る。俺の部屋から最寄り駅まで、徒歩8分程度。通勤に使っている道を案内する…。と、同時に手を取ってみる。Nは拒否しなかった。


某所。…男一人じゃ、イルミネーションなんか見に行かないからね。正直、なんか新鮮。クリスマスだったら、もっと彩られていただろうという想像は付く。
イルミネーションを見て回る。こう、イルミネーションを何も考えずに見るのは、いいのかもしれない。ところどころでツーショットなんか撮ったりする。


晩飯を食う所を探す。俺の手をチョンチョンする人がいる。……これは失礼。


飯を食う。恋愛話とかしたと思う。後就活のことか。Nさんが現状フリーターだからね。けど、あんまりこの辺りは覚えてない。最後をどうしようかって、考えていたから。


店を出る。イルミネーションは7か所点在していて、6か所は見た。残りの1か所に行く。


うお。偶然だけど、最も雰囲気のあるイルミネーションだ。青紫がメインというちょっとアダルトチックなのが、かえって雰囲気を増している。
時間はもう20時半を過ぎているからか、人気がほとんど…いや、全くない。俺ら二人しかいない。変な緊張が生まれる。クッソ寒いのに
手の平に汗がにじみ出てるのを自覚する。イカン…こういうのは、意識するとイケナイんだよ。




Nさん「あの！聞いてください！」


！？


俺「は、はい！」

Nさん「正直、去年の12月から意気投合して、会うたび会うたび「まだ話し足りない、もっと話をしたい」と毎回思ってました！
今でもその気持ちは薄れるどころか、濃くなる一方です。なので、ずっと私と一緒にいてください！」


………………



ちょ、その最後の変化球は反則だろ！！
ていうか、先手打たれちゃったじゃねえか！


先手打たれた＝告られた。すさまじい動揺が襲ってきたが、相手の表情は真剣。ここは漢を見せる場面！


俺「あ、あの…俺でよければ…よろしくお願いします（小声」



だからチキンなんだよ俺は。けど、軽い抱擁を俺からしたぞ？ああ、そんなの普通？


というわけで、彼女が出来ました。俺も吹っ切れた。というのは「ナァナァな友達関係で留めるか否か」というのをずっと考えてたから。
けど、その状況をNが破った。それなら、俺も後に続くしかない。何年ぶりだろ。彼女出来たの。正直今でも、まだあまり実感がわかない。
頭抱えるような三回忌の次の日に、女性からの告白で、正直てんてこまい。今日の仕事は、ちょっとひどかった。反省する。