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2020年02月25日06:07

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走れ!月火水木金曜日! 第二話

息子の影響で #おはスタ を見るようになり、 #おはガールfromGirls2 のファンになりました。
趣味で小説を書いているので、彼女達をモデルに一筆書いてみました。
とても短く仕上げました。もし、お時間ある方いらっしゃいましたら、お付き合いください。
タイトルは『 #走れ!月火水木金曜日! 』
作中には実在する人物名や団体名、商品名等が出てきますが、くれぐれもフィクションです。登場人物もおはガールをモデルとした架空の人物です。


第二話 火曜日  「柚原 風(ゆずはら ふう)」

「すごいじゃないですか、先輩!!昨日は全然踊れていなかったのに・・・」

 驚きつつも、なんとか笑顔を作ってそう言ったが、内心では驚きを通り越して悔しさに似た感情が沸き立っていた。
 わたしの名前は 柚原 風(ゆずはら ふう)。
 ダンス部所属の高校一年生。ダンスは小さいころからずっとやっていて、多分5人の中ではダンス歴が一番長いと思う。皆に声をかけてダンス部を結成したのもわたし。
 そんな訳で一番長くやっているからこそ、一番うまくなきゃいけないと思っている。
 といっても、うちの部は自信家ぞろいだから多分全員が『自分が一番うまい』って思っていると思う。わたしも口には出さないけど、自分が一番うまい、と思っている。
 そんなわたしをびっくりさせる、いや嫉妬させるほどうまいダンスを、いま目の前で踊って見せたのは、なんと昨日まで素人丸出しだった金木先輩だ。
 信じられないことに、昨日わたし達が踊ったダンスを完コピしている。
 わたしの10年の努力と根性が、たった一日で?昨日の部活のあと先輩は明らかにくたくただった。練習を続けられる状態には見えなかった。いったい何を? あ、データを取るとか言ってたけど、まさかそれ?データがあると一日で10年分の練習ができるの?わからない・・・。ただ、このまま悔しい気持ちのままでいることはできない!!!
「先輩!そんなに踊れるなら、わたし達とダンスバトルやってみませんか?」
 バトルっていうのは、一人ずつ音楽に合わせて、即興で短いダンスを踊って見せて勝負すること。まぁ、文字通りダンス力でバトルってこと。
「あ、それが、その・・・僕が踊れるのは昨日君達に見せてもらったやつだけなんだ。応用とかアドリブとかそういうのはまだ全然・・・」
「えぇ・・・それだけ踊れてるんだから、行けますよ!」
「まぁ、待って。それならもう一日くれないかな?明日になったら応用力を身につけてくる。昨日と違ってもうモーションキャプチャは必要ないんだ。カメラアプリを脳内にインストールした。目の前で起こったことをいつでも脳内で録画、再生できる。君達のデータのほかにネットでダンス動画もチェックしてデータを蓄積してくるよ」
 また、データ・・・それがあれば、たった一日でわたし達にダンスバトルで勝てるって?
 言ってくれるなぁ!
「わかりました。じゃぁ明日、よろしくお願いしますよ!」
「あぁ。それじゃ、今日のところは僕が一日で手に入れたダンスを見てみてくれ」

 **************************

 先輩は、くるくると舞った。昨日のわたし達のダンスが目の前で完全に再現される。そこでは5人全員分の個性が順番に再現されていった。動きの切れだったりダイナミックさであったり、またはしなやかさであったり。さらに、ほんのちょっとよろけてしまったところや、ほんの少しだけ遅れてしまった動きに至るまで、完全に昨日のわたし達のダンスそのものだった。
 これが、データの力?科学的な技術に全く詳しくないわたしにはどういう原理なのかさっぱりわからない。
 その後、昨日より遥かに気合の入った練習が始まった。きっと悔しさを感じていたのはわたしだけではなかったのだろう。
金木先輩を昨日よりも遥かにくたくたにしてやったことは、間違いない。
 わたし達はそのまま2時間程踊ってから、練習を終えた。
「金木先輩、今日もお疲れ様でした。明日を楽しみにしていますね!!」

*******************************

 部活終了後、練習部屋に一人残っていたわたしは、後ろから声をかけられた。
「ユズちゃん、今、ちょっといいかな?」
「あぁ、金木先輩か。皆はアルバルク東京の試合を見にスポーツカフェへ行ったよ。先輩もそっちへ行ったら?」
「つれない返事だなあ、昨日もそんな風に言われた気がするよ」
 実はミサから聞いている。金木先輩は何か企んでいるみたいだ。
「できれば、君達5人と個別に話す時間が欲しいんだ。時間は取らせないから、ちょっとだけ頼むよ」
「先輩はわたしがなんで皆と一緒にスポーツカフェへ行っていないのか解る?」
「もちろん。君が一人の時間を大切にしていて、今はスイッチがOFFだからだろ?」
「いや、全然違うよ。ミサじゃないんだから」
 驚いた顔の金木先輩へ向かって続ける。
「悔しいから。
わたしの10年の努力と根性のダンスを先輩はたった一日でやってのけた。負けてられない。今日は残り練!!!明日は悔しい思いをしないために!!!」
「実は、僕が話したいのもその件なんだ。僕が一日で踊れるようになったのは理由があるんだ。神様のアプリのうわさは聞いたことあるかな?」
「え?あの何年か前にちょっと流行った都市伝説のこと?」
「そう、それそれ。僕は最近その封印を解くことに成功したんだ」
 何を言ってるんだこの人は??? 都市伝説なんて本気で信じているんだろうか?
 わたしの思いは、わたしの表情を伝って、金木先輩へ届いたようだ。
「僕が一日で踊れるようになったのは、『僕が一日で君の10年分の練習をやってのけたから』と考えるかい?」
「ありえない・・・。でも都市伝説だって十分にありえない」
「まぁ、すぐに信じられないのは無理もないので、そのまま話を進めるよ。僕は昨日君達からサンプリングしたデータを神様のアプリを使って僕の脳内へインストールした。この技術があれば、誰でも簡単に世界最高レベルのダンスが踊れるようになる。もう努力も根性も必要ない。全人類は等しく世界最高になることができるんだ」
「・・・すごいね。でも素敵な世界とは思えないな」
「・・・そうかい?君達はつらい練習から解放されるうえに、世界最高のダンサーになれるんだよ」
「全人類が世界最高ということは、言い換えれば全人類が世界最低ということになる。わたしは世界最低のダンサーになってしまうね。それに全人類が同じダンスを踊れる様になることは、一見平等なようで、実は全然違う。わたしは10年間努力してきた。この努力は他者より秀でるためにやってきたこと。努力した分だけ他者より上達している必要がある。努力した人と、していない人。両者が同じ能力を得るというのは努力した人が損をしている。やっぱり頑張った人が頑張った分だけうまくなるのが真の平等だと思うんだ」
「なるほど、一理あると思う。しかし、『努力』と『結果』というのは必ずしも比例のグラフを描いてはくれない。努力が報われる人と、そうでない人がいるという今の状態も決して平等ではないよね」
「先輩は昨日言ったよね。『ダンスには正解がない』って。わたしは、正解は無限にあると思う。先輩の得意な数学に例えるなら、虫食い問題。
1+1=□
これは正解が一つしかないけど
□+□=5
これなら正解は無限にある。
正解が無限にある以上は、一つの正解に全人類をまとめてしまうのはどうかと思うよ」
「しかし、虫食い問題には正解をはるかに上回る量の不正解が存在する。人類が間違えないように正解の一つを例示しておくんだ」
「先輩・・・『間違っても、やり直せばいい』人類は昔からずっとそうやってきた。科学に詳しくないわたしでもそんなことは知っている」
 一呼吸おいて続ける。
「それと、先輩はそんなすごい技術を見つけたというのに、全人類へ平等に使おうとしている。そっちの方がすごいと思うよ。一人占めすればスーパーマンになれるのに」
「それは僕だって科学者のはしくれだからね。車を発明した人は車を独り占めしなかっただろ?エアコンを発明した人もそうだ。科学というのは可能な限り世界へ開けているものだ。便利な道具を作ったのならそれは世界へ供給するべきなんだ。世界は次のステージへ進む。科学者は見返りにお金を得る。損はしていない」
「なるほど、科学者というのはすごいね。でも科学者と表現者とは、そもそもの考え方が違うみたいだね。表現者は、自分の力で自分だけがすごい世界をつくりたい。そのためなら努力もする。それなりにね。
わたしも表現者のはしくれだから先輩が供給する技術は、いらないかな」
「そうか、喜んでもらえると思って持ってきたんだけど・・・なかなか思い通りにはならないね。ありがとう。君のダンス論を聞けてとても有意義だった」
「それはよかった。それじゃ明日のあなたに負けないように練習にもどろうかな?」
「ダンスバトルを提案してくるところとか、残って練習までして勝ちにくるところとか、すごく勝敗や結果にこだわるタイプに見えたんだ。だからもっとトゲトゲツンツンしたキャラかと思ってたよ」
「そんなことないよ。わたしはただダンスが好きなだけ」
 笑顔でそう返した後・・・、

「ただ・・・先輩がそのアプリで、わたしの10年の努力と根性を無にするようなことをしたら・・・そんなの

   ありえない・・・許せない!!!」

 ギリッと吊り上げた目で一睨み


金木水火月は思った。
 ・・・刺さるね・・・トゲツンしてるじゃないか・・・。




                                水曜日へ続く


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