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2021年03月17日23:17

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スタニスワフ・レム「枯草熱」(サンリオSF文庫)>カバーアートガイド

久利洋二画
『枯草熱』
スタニスワフ・レム作
 糸状のものが拡がり散らばり絡みあう上に、透明なガラス様の人型が歩いているようだ。
裏表紙の情報では、ナポリで連続怪死事件の捜査の依頼を受けたアメリカの元宇宙飛行士と思われる。「火星探検という純粋体験をしてしまって(向こうでなにを見聞したのかはかかれない)、地球ではまっとうな仕事をする気になれない」https://odd-hatch.hatenablog.jp/entry/20130304/1362352710
ので、自己心象が透明なガラス様の人型になってしまったか。どうやら犯人は存在せず、枯草熱によるものらしい。日本では花粉症という。
 日本では戦後復興のため杉を大量に植林した。垂直に速く成長する杉が木材として使い易いからだ。その杉が成長し、花粉を大量にまき散らすようになったのである。アメリカ合衆国ではブタクサが原因花粉で、日本で戦後米軍基地の周辺から広まったようだ。ポーランドの「クラカウの賢人」といわれたレムから話が離れたが、レムなら許してくれるだろう。
 ヨーロッパではイネ科の花粉症が多いが、カモガヤやネズミホソムギなどの牧草が花粉症の原因植物になる。「日本人の主食の米となるイネは、開花期が早朝でごく短く、水田で栽培されるため、花粉症の原因になることは少ない。 」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%B1%E7%B2%89%E7%97%87#世界史
 それにしてもレムの『枯草熱』から離れすぎた。『枯草熱』の訳者解説から「そのセンセーショナルな、同時にきわめて科学的な推理の展開のなかに、作者は自身の哲学的な文明観を浮かび上がらせ、読者に文明の発展がもたらす危険に思いを向けさせる。」という一文を引用して、『枯草熱』のカバーアートのガイドを終わることにしましょう。アレレどこからも拍手がありませんねぇ。
戦後復興も米軍基地も芝生も、まぁ文明発展の顕れなんです。はい、お粗末でした。


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odd_hatchの読書ノート

エントリーは2400を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2020/10/13

2013-03-04

スタニスワフ・レム「枯草熱」(サンリオSF文庫)

スタニスワフ・レム サンリオSF文庫


 火星飛行士だった「私」は探偵に転職し、ある「事件」の調査を依頼される。50歳過ぎの中年男性が泳ぎに出て溺死したり、狂って窓から飛び降りたり、高速道路を歩いて轢き殺されたり、拳銃を口にくわえて自殺したり。その数12人。共通点はというと、50歳くらいの独身男性、美食、禿げ頭、重要なのは枯草熱の治療をしていること。初出の1976年だと、枯草熱、今の言葉で花粉症はそれほど話題になっていなかった。実際、自分が花粉症にかかったのは25歳の1980年代で、そのときにはTVや新聞のニュースになっていた・・・閑話休題。
f:id:odd_hatch:20130304081811j:image
 レムが探偵小説を書いた、それもハードボイルドだ!! と驚愕したいわけだが、この生粋のSF作家が書くと奇妙な方向にずれてばかり。すなわち、「私」が探偵になったのは、警官だったとか身近に探偵がいたからとかではなくて、火星探検という純粋体験をしてしまって(向こうでなにを見聞したのかはかかれない)、地球ではまっとうな仕事をする気になれない(おしきせの会社のひとつはもらえたろうけど)。それに探偵とはいいながら、およそ地道な捜査には不向きで、関係者の誰かに会った形跡はない。では何をしていたかというと、事件の概要を何度も読み返すか、別ルートで捜査している警官ほかの調査の進展を聞くことくらい。ホテルにいるか、当地の研究者の家を訪問するか、がせいぜいの行動。
 しかし、世情は1975年当時をほぼ正確になぞっていて、すなわちローマの空港で前を行く日本人が手りゅう弾を取り出し、自爆テロを決行するし(テルアビブ空港で日本人テロリストが小銃乱射の末に自殺するという事件が起きている)、左翼過激派のハイジャックや高官誘拐が起きているし、LSDほかの向精神薬がたやすく入手できるし。火星探検ができるというから、この地球ではないのだが、おおよその歴史とテクノロジーは地球と同期している。
 という具合に、およそ探偵には向かない男が間違っていてばかりの捜査と推理をしているわけだ。このとき、探偵が興味を持つのは「事件」ではなくて、その解釈か「私」の内面そのもの。探偵する私とはなにものか、「私」の体験は事実を再構成することができ、「真実」を発見することが可能なのか、もっとおおきくいうと、「私」の理性は世界を解釈できるのか、どこかに思い込みとかドクサで勝手に作り上げたイメージを世界に押し付けているのではないか。こんなあたり。まあ、ダメな探偵がいい加減な捜査をするというので、ゴダールの映画「アルファビル」「探偵」を思い出しました。あれほど構成やプロットをぐちゃぐちゃにしているわけではないけど。それでも、冒頭は雨中で運転している「私」のモノローグ、次章はローマの自爆テロ、三章は事件の概要。ここまでで小説の半分。そのあとも、「私」と精神科医との会話が延々と。という具合に探偵小説らしいストーリーは進展しないし、それらしいシーンも現れない。あげくの果てには「さて皆さん」から始まる事件の説明もないという次第。いや、もちろん「事件」は解決する。複数の化合物を別々に飲むことで、向精神作用が発生し、自殺衝動が高まるというわけだ。化合物の正式名称も登場する説明は、どうも小栗虫太郎の法水探偵にふさわしい。
 あと、ラストシーン近くで「私」の体験する幻覚の描写が緻密で的確(そんな経験はないのに言い切る自分)。この迫真的な描写で思い出したのは、PKDのいくつか(「火星のタイムスリップ」「暗闇のスキャナー」など)。ドスト氏の「白痴」は未読なので比較できない。
 マーロウやアーチャーの捜査は限られた関係者の網を丹念に追うことで、過去の因果と現在の桎梏を明らかにする。でもここではそのような関係者の網はないし、因果の結ばれも、現在のコンプレックスも存在しない。となると、「解決」できたのはひとえに偶然だった。なにしろ「私」が被害者と同じ性質をもって、「事件」を追体験したので、真相が明らかになったのだ。となると、探偵は偶然と必然について憮然とするのだが、最後の精神科医の3行が素晴らしい。そこにおいて、読者が小説の登場人物にされてしまい、読む行為はそのまま探偵である「私」の行動に重なるのだ。小説の中と読者の垣根をぶち壊す仕掛けがしっかりと決まった(クイーン「エジプト十字架の秘密」のよう)。
 みかけはできそこないの探偵小説。中身は多義的な実験小説。こんなストーリーは他をちょっと思いつかないな。すげえ。(そのかわり本文はそうとうに退屈なのだがね。)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー以上転載ーー
https://odd-hatch.hatenablog.jp/entry/20130304/1362352710




スタニスワフ・レム・コレクション


テンノコエコソウネツ

天の声・枯草熱


スタニスワフ・レム 著
沼野充義/深見弾/吉上昭三 訳


発売日 2005/09/01

判型 四六変型判 ISBN 978-4-336-04503-4

ページ数 409 頁 Cコード 0397

定価 3,080円 (本体価格2,800円)




【内容紹介】 【著者紹介】 【同じ著者・訳者の作品】


内容紹介

偶然受信された宇宙からのメッセージは何を意味するのか。学者たちの論議をたどりながら認識の不可能性を問う『天の声』と、ナポリで起きた連続怪死事件をめぐる確率論的ミステリー『枯草熱』。


著者紹介

スタニスワフ・レム (スタニスワフレム)

1921年、旧ポーランド領ルヴフ(現在ウクライナ領)に生まれる。クラクフのヤギェウォ大学で医学を学び、在学中から雑誌に詩や小説を発表し始め、1950年に長篇『失われざる時』三部作を完成。地球外生命体とのコンタクトを描いた三大長篇『エデン』『ソラリス』『砂漠の惑星』のほか、『金星応答なし』『泰平ヨンの航星日記』『宇宙創世記ロボットの旅』など、多くのSF作品を発表し、SF作家として高い評価を得る。同時に、サイバネティクスをテーマとした『対話』や、人類の科学技術の未来を論じた『技術大全』、自然科学の理論を適用した経験論的文学論『偶然の哲学』といった理論的大著を発表し、70年には現代SFの全2冊の研究書『SFと未来学』を完成。70年代以降は『完全な真空』『虚数』『挑発』といったメタフィクショナルな作品や文学評論のほか、『泰平ヨンの未来学会議』『泰平ヨンの現場検証』『大失敗』などを発表。小説から離れた最晩年も、独自の視点から科学・文明を分析する批評で健筆をふるい、中欧の小都市からめったに外に出ることなく人類と宇宙の未来を考察し続ける「クラクフの賢人」として知られた。2006年に死去。

沼野充義 (ヌマノミツヨシ)

1954年,東京生まれ。東京大学卒,ハーバード大学スラヴ語学文学科に学ぶ。ワルシャワ大学講師を経て,現在,東京大学教授。著書に『徹夜の塊 亡命文学論』(作品社),『徹夜の塊 ユートピア文学論』(作品社),『W文学の世紀へ』(五柳書院),『ユートピアへの手紙』(河出書房新社),『200X年文学の旅』(共著,作品社),編著書に『東欧怪談集』(河出文庫),『世界×現在×文学 作家ファイル』(共編,国書刊行会),『世界は文学でできている』(光文社)などがある。

深見弾 (フカミダン)

1936年、岐阜県生まれ。早稲田大学卒業。ソビエト・東欧SF翻訳家。特にストルガツキー兄弟やレムの作品を精力的に翻訳・紹介した。おもな訳書に、レム『宇宙飛行士ピルクス物語』(早川書房)、『泰平ヨンの航星日記』『ロボット物語』(ハヤカワ文庫)、『すばらしきレムの世界1・2』(講談社文庫)、ストルガツキー兄弟『収容所惑星』(早川書房)、『ストーカー』(ハヤカワ文庫)、『そろそろ登れカタツムリ』(群像社)、『ロシア・ソビエトSF傑作集』(創元推理文庫)などがある。1992年死去。

吉上昭三 (ヨシガミショウゾウ)

1928年、大阪生まれ。早稲田大学卒業。ポーランド文学専攻。東京大学教授。ポーランド文化研究誌『ポロニカ』主宰。ポーランドとの文化交流にも尽力した。おもな訳書に、レム『宇宙創世期ロボットの旅』(共訳、集英社)、『星からの帰還』(ハヤカワ文庫)、シェンキェヴィッチ『クオ・ヴァディス(上・下)』(福音館書店)、『世界SF全集9 エレンブルグ・チャペック』(共訳、早川書房)、共著に『ポーランド語の入門』(白水社)、共編著に『白水社ポーランド語辞典』などがある。1996年死去。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー以上転載ーー
https://www.kokusho.co.jp/np/isbn/9784336045034/


花粉症の原因植物​[編集]





ヤシャブシ




ブタクサ




カモガヤ。花期は5-7月で、スギのシーズン後に起こる花粉症の原因としても知られる
花粉症を引き起こす植物は60種以上が報告されている。

春先に大量に飛散するスギの花粉が原因であるものが多いが、ヒノキ科、ブタクサ、マツ、イネ科、ヨモギなど他の植物の花粉によるアレルギーを持つ人も多くいる。

特にスギ花粉症患者の7 - 8割程度はヒノキ花粉にも反応する。また、「イネ科」と総称されることからもわかるとおり、その花粉症の患者は個別の植物ではなくいくつかのイネ科植物の花粉に反応することが知られている(○○科と総称されるのは光学顕微鏡による肉眼観察では区別がつかないためでもある)。これらは花粉に含まれているアレルゲンがきわめて類似しているため、交差反応を起こしている。

花粉症には地域差もあるといわれる。例えばスギの少ない北海道ではスギ花粉症は少なく、イネ科やシラカバ(シラカンバ)による花粉症が多い。中国地方、特に六甲山周辺において、大量に植樹されたオオバヤシャブシによる花粉症が地域の社会問題になったこともある。北陸の稲作が盛んな地域では、他地域よりもハンノキ花粉症が多い。シラカバ、ハンノキ、ヤシャブシ、オバヤシャブシなどは口腔アレルギー症候群をおこしやすい。

   【略】

日本人の主食の米となるイネは、開花期が早朝でごく短く、水田で栽培されるため、花粉症の原因になることは少ない。

   【略】

アメリカ合衆国ではブタクサ、ヨーロッパではイネ科の花粉症が多い。北欧ではシラカバ等カバノキ科の花粉症が多い。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー以上転載ーー
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%B1%E7%B2%89%E7%97%87#世界史



イネ科植物にはさまざまな種類があり、イネといってもお米がとれる稲の花粉だけというわけではありません。稲に反応してしまう人もいますが、多くのイネ科花粉症の原因植物は、カモガヤやネズミホソムギなど、海外から輸入された牧草になります。家の近くに田んぼがないからと安心はできません。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー以上転載ー
https://brand.taisho.co.jp/allerlab/articles/024/
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