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2019年10月24日01:01

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恐竜の装飾物の機能<装楯類における装飾物の個体発生:ステゴサウルスの板と棘を例として>装楯類における皮骨の系統発生

2.恐竜の装飾物の機能
ワニやアルマジロの背にみられる皮骨とよばれる皮
膚の下に発達する骨は,脊椎動物の進化の中で比較的
頻繁に発生するものであり,その機能としては捕食者
からの防護や種内でのディスプレイなど動物の生態と
密接に関わっていることが知られている.特に装楯類
恐竜にみられる皮骨は,脊椎動物の進化史上もっとも
最大で,その形態も棍棒・棘・板状など非常に多様化
したもので,その機能と進化過程について長年議論さ
れてきた(Main et al .,2005).ここでは,様々な装楯
類恐竜がもつ皮骨の「個体発生」と「系統発生」に伴
う内部の骨組織の変化に着目し,その機能と進化につ
いて考察した二つの研究を紹介する.



装楯類における装飾物の個体発生:ステゴサウルスの板と棘を例として

ステゴサウルスは背に大きな板,尾に大きな棘状の
皮骨をもつことで特徴づけられる恐竜である.幼体か
ら成体までの,ステゴサウルスにおける体骨格と皮骨
の骨切片を作製し,その骨組織の特徴の変化から,そ
れぞれの骨の相対的な成長速度の変化を推定した.そ
の後,それらを比較することよって,体骨格に対し
て皮骨がどのような成長をしたかを明らかにし,皮骨
の巨大化のメカニズムと機能を推定した(図3;
Hayashi et al .,2009,2012a).
幼体では,体骨格と皮骨の骨組織はともに,成長速
度が非常に速い骨に形成される,大量の血管を伴った
組織を示した(図3の組織1).亜成体の体骨格では,
その組織にいくつかの成長停止線が発達するといった
特徴がみられた(図3の組織2と3).これは幼体で
見られた骨組織よりも成長速度が遅いことを示す組織
である.一方,その皮骨は,幼体と同様の成長速度の
速い骨組織を示した.成体では体骨格と皮骨の骨組織
ともに成長停止線を伴った組織を示す.しかしなが
ら,いくつかの大型の成体個体における体骨格では,
血管がほとんど見られず,成長停止線が非常に密に発
達することで特徴づけられるExternal fundamental
systems とよばれる組織を示した(図3の組織4).
これは骨の成長が停止していることを示す組織
(Erickson et al .,2007)である.このような組織が体
骨格に観察されたにもかかわらず,その個体の皮骨は
いまだ成長をし続けている組織が観察された.
この結果は,ステゴサウルスの皮骨は成長を通じて
体骨格よりも速い成長速度を維持し,体骨格が成熟し
図2.鎧のない幼体(左)と鎧のある成体(右)の手足の骨の断面の微細組織
鎧ができていない幼体と,鎧ができた幼体と成体の体の骨の微細組織を比べてみると,鎧をもつ成体の骨組織
(右)では,鎧の形成のために骨が溶かされ,カルシウムを使用した痕跡がたくさん見られた.一方,鎧が未発達
の幼体の骨組織(左)は,緻密でカルシウムを使用した痕跡はほとんど見られなかった.復元画は足寄動物化石博
物館 新村龍也氏提供.詳細なデータと記載については Stein et al(. 2013)を参照.
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図3.ステゴサウルスにおける体骨格と皮骨の成長様式
上の線グラフは体骨格の成長曲線.下の棒グラフは,成長に伴う体骨格と皮骨内部の骨組織の変化を示す(骨組織1が最も
成長速度が速く,2〜3にかけて遅くなる.4は骨の成長が停止したことを示す組織).皮骨は体骨格が成熟した後も速い
成長速度を維持するため,皮骨の機能がディスプレイなど性成熟に深く関連していた可能性が考えられる.骨組織の模式図
は Horner et al(.2005)の図を改変して使用した.詳細なデータと記載については Hayashi et al(.2009)を参照.

図4.成長に伴うステゴサウルスの棘の内部構造の変化
ステゴサウルスの棘は幼体のうちはスポンジ状でもろい構造(海綿骨の分布域が多い)をしており,成長するに従って,堅
く緻密な構造に変化する(海綿骨の分布域が少ない).
A:ステゴサウルスの幼体の棘.B:A の点線部の棘の断面.C:B の棘の断面のスケッチ.
D:ステゴサウルスの成体の棘.E:D の点線部の棘の断面.F:E の棘の断面のスケッチ.
詳細なデータと記載については Hayashi et al(.2012)を参照.
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た後も皮骨は成長し続けることを意味する.実際に
様々なステゴサウルスの成体を観察してみたところ,
個体間で板の大きさに違いがあったことが確認され
た.従って,これらのプロセスによって,ステゴサウ
ルスは体に対して大きな板や棘を獲得できたと考えら
れる.また,成体になって大きな板を獲得するといっ
たことは,シカなど現生偶蹄類の角でみられるような
ディスプレイ機能の可能性を示唆していると解釈する
ことができる(Hayashi et al .,2009).
さらに,尾の棘は成長するにつれて,海綿質から緻
密質へと内部の構造が変化することが明らかになった
(図4).これは,ステゴサウルスの棘は成長と共に
その強度が変化し,武器としての機能は,成長の後期
にならないと獲得されなかったということを示唆す
る.従って,ステゴサウルスの化石が幼体から成体ま
で群れで見つかるのは,武器をもたない子供が,捕食
者からその身を親に守ってもらっていた可能性が考え
られる(Hayashi et al .,2012a).


装装楯類における皮骨の系統発生
装楯類とは共通の祖先から進化した剣竜類と鎧竜類
とよばれる二つの分類群から構成されるグループであ
る.それらがもつ皮骨は棘状,板状といった点で形
態が似るが,その内部組織はそれぞれ特徴的に異な
り,その進化傾向に違いがみられた(Hayashi et al .,
2010;Hayashi et al .,2012b).
剣竜類の板状の皮骨は非常に脆く,海綿状の構造を
するといった点で原始的な種や現生ワニにみられる皮
骨と類似した特徴を示したが,棘状の皮骨は,内部の
組織が緻密化し,原始的な皮骨とは異なった特徴を示
した.一方,鎧竜類の皮骨は,板状,棘状,棍棒状と
いった形態の差異があるにも関わらず,カメやアルマ
ジロの甲羅の骨組織にみられる大量の線維(Scheyer
and Sander,2007)を獲得することによって,その
内部を強化するといった特徴を示した.この結果は,
共通の祖先から進化したにも関わらず,剣竜類の棘と
鎧竜類の皮骨は別々の進化プロセスを経て,それぞれ
効果的な武器や鎧としての機能を進化させたことを示
唆すると考えられる(図5).この研究成果は,近縁
なグループがもつ形態の似る骨であればその進化傾向
も類似するといった従来の考え方とは矛盾する結果に
なった.
図5.鎧竜類の装甲における骨組織の進化
複雑にからみあった線維構造は,鎧竜類が独自に進化させたものであり,鎧竜類に近縁な剣竜類や,鎧竜類と剣竜類共通の
祖先にあたる基盤装楯類の装甲では,このような線維構造は見られない.また,鎧竜類の進化に伴って,装甲内部に観察さ
れる線維構造の密度が高くなる.そのため,鎧竜類は進化するにつれて,その装甲や武器も丈夫になっていったと考えられ
る.詳細なデータと記載については Hayashi et al(.2010)を参照.骨の断面の模式図は Ricqlès and Buffrénil(2001)の図
を改変して使用した.

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー以上転載ーー
http://www.kasekiken.jp/kaishi/kaishi_47(1)/kasekiken_47(1)_18-27.pdf
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