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2016年01月31日22:37

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『知の教科書 プラトン』 ミヒャエル・エルラー著>著者も訳者も、みな私より年下だな。<「魂の不死性}p226>プラトンの魂は今も生きている?

評・前田英樹(批評家・立教大教授)

『知の教科書 プラトン』 ミヒャエル・エルラー著


2015年11月16日 05時25分






「対話篇」は至上の文学



 古代ギリシアの哲学者プラトンを知らない人は、日本人でも少ないだろう。2400年ほど前に生まれ、80歳で死んだこの人物は、今でもその著書が世界中で読まれ、第一線の哲学者によって読み方が更新されている。改めて考えれば、これは、実に不思議なことなのである。本書の著者、ミヒャエル・エルラーは、現在のプラトン研究で頂点に立つひとりだと思うが、この不思議さの感覚を生き生きと保持している。それが、一番深いところで本書の魅力となっている。

 この本は、一般読者を想定した紹介書だが、その紹介は堂々としていて、平明で、何の俗っぽさもない。このような本は、ありそうでいて、なかなかない。プラトンの波瀾はらんある生涯が簡略に語られ、彼が生きた時代、その先人たち、文字通り唯一永遠の師となったソクラテスとの出会い、などが念入りに描かれる。そうした環境のなかに綿密に織り込まれていくプラトン哲学は、歴史の出来事を懸命に、しかし確固とした足取りで生き抜いたひとりの剛健な男の顔をしている。

 本書で印象深いのは、プラトンが遺のこした多くの「対話篇へん」を至上の文学として扱い通しているところである。彼が思想の対話劇として創り出した文章は、ホメロスが叙事詩において成したところと何ら遜色のない高さを示している。エルラーは、そう言う。ただ、面白いのは、これらの「対話篇」が、文学作品を書くことになど一向に関心のない、いや、むしろそうした所業を心底から厭いとう人間によって、絢爛けんらんとした技法で産み落とされていることだ。中心にあるのは、<人間はいかに生きるべきなのか>という精神の問い、これに尽きる。この問いが主題として秘める無限の単純さと、入り組んだ対話劇の言葉が発揮する精緻極まる吸引力、これら二つは完全に合致し、融合して読者に迫ってくる。「対話篇」が、今も人類の古典たりうる理由がここにある。三嶋輝夫ほか訳。

 ◇Michael Erler=1953年生まれ。ヴュルツブルク大教授。国際プラトン学会や古代哲学学会の会長を務める。

 講談社選書メチエ 1850円

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー以上転載ーー
http://www.yomiuri.co.jp/life/book/review/20151109-OYT8T50057.html


内容説明

ソクラテスの弟子にしてアリストテレスの師、プラトン。『ソクラテスの弁明』『国家』『饗宴』『政治家』をはじめとする作品で提示されたイデア、魂、宇宙と人間といった概念は、二千年を超えてわれわれの思索の礎でありつづけている。プラトンの生涯と作品、思想内容、そして西洋思想史における展開を丁寧に解説する、最新研究をふまえたプラトン入門の決定版!

目次

その人物と生涯
作品と著者
文脈の中のプラトン
継承と刷新―プラトンの文化批判
ソクラテスの徒プラトン―認識への道
プラトンと言語
プラトンの人間学
「この世からかの世へ」(『テアイテトス』176a‐b)―経験界とイデア
プラトンの主要教説
プラトンの実践哲学
魂のセラピーとしての自然についての考察
プラトンと善き生
後世への影響

著者紹介

エルラー,ミヒャエル[エルラー,ミヒャエル] [Erler,Michael]
1953年生まれ。ヴュルツブルク大学教授。国際プラトン学会会長や古代哲学学会会長等を務める。専門は古代ギリシャ哲学、古典学

三嶋輝夫[ミシマテルオ]
1949年生まれ。国際基督教大学教養学部人文科学科卒業。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。元青山学院大学教授、放送大学客員教授。専門は古代ギリシャ哲学、倫理学

田中伸司[タナカシンジ]
1960年生まれ。北海道大学文学部哲学科卒業、北海道大学大学院文学研究科哲学専攻博士後期課程中退。静岡大学人文社会科学部教授。博士(文学)。専門は古代ギリシャ哲学、倫理学

高橋雅人[タカハシマサヒト]
1966年生まれ。東京大学文学部第一類倫理学専修課程卒業、東京大学大学院人文科学研究科倫理学専攻博士課程単位取得修了。神戸女学院大学文学部教授。博士(文学)。専門は古代ギリシャ哲学、倫理学

茶谷直人[チャタニナオト]
1972年生まれ。北海道大学文学部哲学科卒業、神戸大学大学院文化学研究科修了。神戸大学大学院人文学研究科准教授。博士(学術)。専門はギリシャ哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

出版社内容情報

西洋哲学、ここに始まる! 哲学の源流と謳われる知の巨人の思想の全体像を俯瞰。最新の研究成果をふまえた決定版「プラトン入門」!

西洋哲学、ここに始まる! 哲学の源流と謳われる知の巨人の思想の全体像を俯瞰。最新の研究成果をふまえた決定版「プラトン入門」!

【著者紹介】
ミヒャエル・エルラー(Michael Erler)
1953年生まれ。ヴュルツブルク大学教授。国際プラトン学会会長や古代哲学学会会長等を務めた。専門は古代ギリシャ哲学、古典学。著書『Der Sinn Der Aporien in Den Dialogen Platons』『Kleines Werklexikon Platon』など。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー以上転載ーー
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784062586115
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