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2011年03月11日05:24

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フィル・コリンズ讃

 フィル・コリンズ(60歳)が引退を表明した。
 オフィシャル・サイト(Philcollins.co.uk)に声明を発表した。

「メディアからのひどい扱いや悪いレビューのために、やめるのではない。愛されていないと感じるから、やめるのではない。僕にはいまでも、僕のやることを愛してくれているファンがたくさんいるのを知っている。居場所がないから、やめるのではない。それは最新アルバム『Going Back』がUKチャートのNo.1に輝いただけでなく世界中で好評だったことが証明している。アラモ(の戦い)への探究に時間を費やしたいがために、やめるのではない。
 僕は、2人の小さな息子たちの父親として専念したいからやめるんだ」

 これが正直偽らざる心境なんだろう。
 でもしかし・・・・・・寂しい。
 だけど予感はあった。このひとはいつかスパッと、潔く辞めるんじゃないかと。
 この映像を観てください。07年ジェネシス再結成ツアーのリハーサルの一コマ。


 思うように叩けなくて苛立つフィル・コリンズ。正直いって胸が詰まった。
 そして、これを観てはじめて“デューク”という曲の難しさ、いや、フィルのドラミングの高度なことに、あらためて思い至った。ぼくはフィルがあまりにも容易く叩いていたため、技量の凄さに気づけなかったのである。
 
 それにしても、かつて軽々とやってのけたことが、上手くできなくなったときの気持ちは、いかほどのものか。
 ドラムはバンドのゴールキーパーだと自らを厳しく律するフィルのことだ。クソこんなはずじゃないぞと、忸怩たる思いだっただろう。
 たぶんこの数年、優れない体調を宥めすかしつつ、練習を繰りかえし、そしてついに、今回の引退発表に到ったのであろう。
 twitterのぼく宛の返信には、「ご近所でドラマーとして(フィルが)尊敬するビル・ブルフォードが、やはり還暦で引退したってのも大きいと思います」という意見もあった。そういう語られることのない諸要素もあるだろう。
 ともあれ、フィルは引退を決意した。ぼくにはそれが、あたかもアスリートのような態度に思えた。

 これまでの膨大な彼の仕事を顧みて、あらためて「巨人だな」とため息をつく。
 そして、これだけの水準を保っていたアーティストにしては、やはり評価が低いと感じてしまう。
 ドラマーとしても、ボーカリストとしても、パフォーマーとしても、プロデューサーとしても、すべて一流の職人だった。ただそれが、ややもすれば「器用貧乏」に映るむきがあるのかもしれない。
 今日もテレビをつければフィルの歌声が聞こえる。午後の紅茶のコマーシャルやとくダネ! のテーマソングで。
 EWFのフィリップ・ベイリーやエリック・クラプトンのプロデュースで名を馳せもした。コンコルドで大西洋を往復し「ワーカーホリック」と揶揄されることもあった。
 だけど、ぼくにとってのフィルは、いまでもジェネシスの凄腕ドラマーである。
 そしてメンバーへの思いやりにあふれたミュージシャンシップ――ライブの最中彼はつねに他メンバーの動きを注視している――の持ち主である。
 超絶技巧ジャズロックバンドのブランドXでの活動、ブライアン・イーノやキャメルなどのアルバム単位の客演、そしてかつての盟友であるピーター・ガブリエルやスティーブ・ハケットへの惜しみない協力。
 どれひとつとっても、まずい仕事はない。
 いま去りゆく名優に、どうか惜しみない讃辞を!



【今日の一曲】
 名曲は数しれず、さんざん迷ったあげく、フィルの人間的魅力を知っていただきたく、これに決めました。
 期待のドラムはちょこっとしか叩かないけど、タンブリンが大活躍。ビル・ブルフォードとの息もピッタリ。
“I Know What I Like (In Your Wardrobe) ” 記録映画の冒頭で前置き長いけど、じっくり観てください。


 たしかジョン・レノンもこの曲がお気に入りだったはず。


 

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