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2020年01月29日11:12

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山の魅力(その4)

一般的な「山の魅力」(その4)

日本中の山々が、年中あまり色彩的変化のない針葉樹林に覆われるよおうになったのは、ここ100年ぐらいのことである。植林されたことのない山は、劇的にカラフルであった。春から夏にかけて、その緑は日増しに濃くなっていく。まるで赤ん坊の細かくて柔らかい髪が、大人の太くて硬い髪に変わっていくようだ。秋がやってくると、その毛皮の緑色が、誰の仕業なのかいきなり燃え立つような赤や黄色に変わってしまう。紅葉は細胞内の葉緑素が分解しておきる現象などという無粋な科学的知識を持ち合わせなかった古代人は、その音楽的といえる色彩の変化に身体全体で感動していたのかもしれない。(中略)山は生きている。きっと生きている。古代人はそう感じていたにちがいない。いや色彩だけではない。山はいくつも自分の声を持っている。春風のそよぎは楽しい山の笑い声、走り抜ける木枯らしは山の悲しみを伝えるため息、猛り狂う吹雪は山の咆哮(ほうこう)。その声を聞いているだけでも、山が感情を持っている激しい生き物であることを古代人誰も疑わなかったのではないか。おまけに山は動く。雨の中では遠く霞んで見えた山も、雨上がりには手の届くほど近くに寄ってくる。いつの間に動いたのであろうか、恐ろしく速足(はやあし)である。
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