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2015年10月30日15:25

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文芸大聴講〈文化と芸術C〉第5回〜リズムの解放

10/29(木)、静岡文化芸術大学の授業〈文化と芸術C〉の聴講第5回。

テーマ;リズムの解放、または打楽器の解放
講師;上山典子

1908年、シェーンベルクによって無調音楽作品が発表され、これを「不協和音の解放」と呼んだ。
それに対し、数年の後、「リズムの解放」と呼ばれる改革があった。
それはバレエ音楽として作られた。公演の主体はバレエ・リュスである。

◆バレエ・リュス(ロシア・バレエ団)

・ロシアの興行師セルゲイ・ディアギレフ(1872-1929)が率いたバレエ団。…彼の仕事は、現代で言えばプロモーターというより、コンサートプロデューサーと呼ぶべきもの。
・パリを拠点にして活動。20世紀に最も影響力のあったバレエ団と言ってよい。
・1909〜29の20年間に70のバレエ演目を上演した。終了年1929年は、つまりディアギレフの没年。彼の死によってバレエ・リュスは実質終焉を迎えた。
・ディアギレフは、当時最も高い評価を得ていた前衛芸術家達を終結させた。またはそうなるであろう新人を発掘した。

◆イゴール・ストラヴィンスキー(1882-1971)

・リズムの解放と呼ばれる革命的バレエ曲『春の祭典』を作曲した。
・長生きした為、現在も著作権問題が尾を引く。
・おしゃれで、いつも正装していた。

1907年 サンクト・ペテルブルクで初めての作品発表。
1908年 ディアギレフにより新作バレエ『火の鳥』の作曲を委嘱される。…ディアギレフは全く新進の作曲家のストラヴィンスキーに目を付けた。新しい逸材を見出す力があった。
1910年 『火の鳥』初演の為、パリへ。結果、ヨーロッパに長く定住する事になる。

1913年 『春の祭典』初演。
…伝統的音楽とバレエを大胆に破壊し、初演は大きなスキャンダルとなった。
ニジンスキーによる革新的振付の為、バレエ・リュスのダンサーには120回もの稽古を強いた。
初演は5/29、完成したばかりのパリ・シャンゼリゼ劇場にて。
客席には、超保守派のサン=サーンスや、新しい時代の印象派(または象徴主義)作曲家ラヴェル,ドビュッシーもいた。
この公演は同劇場の杮落し公演の第2回の位置付け。ちなみに第1回はドビュッシーだった。
音楽とバレエ両面の前衛的性格に反撥した客からは、ヤジや罵倒の声が上がり、劇場は大混乱となった。

1914年 スイス(仏語圏)に定住。
1934年 フランス市民権を獲得、帰化。しかし、その前年にナチスが政権奪取している。
1940年 米カリフォルニアに定住。戦後シェーンベルクもカリフォルニアに。…但し、ストラヴィンスキーはユダヤ人ではない、音楽創作の自由を求めて移住を繰り返した。
1945年 米市民権を取得、帰化。
1969年 ニューヨークに定住。

◆『春の祭典』の特徴

・物語;
キリスト教以前の太古のロシアが舞台。スラブ民族の信仰に基く春の祭。(仏語タイトル「ル・サクレ・デュ・プランタン」は祭の意味だが、ロシア語タイトルには聖なる儀式的な意味が濃厚だった。)
春を迎えて、人々は愛に、争いに、活発になる。
神への生贄として、1人の乙女が選ばれる事となる。
彼女が踊りながら息絶えると、長老達によって太陽神に捧げられる。

・曲は2部構成。更にシーンに分かれる。下記参。演奏時間は約35分。
・超巨大な5管編成オーケストラ。特に金管の増強。スコアは30段にもなる。
・変拍子(5拍子,7拍子,11拍子etc.)を多用。
・可変拍子;数小節で拍子が変化する。
・原始的、根源的迫力を生み出す多様なリズム。
・複調;異なる調を同時に使用する。
    ex.2部序奏、嬰ニ長調とハ短調、同「生贄の踊り」、ト長調と変イ長調。当然不協和音が発生する。

・構成;
第1部「大地への礼賛」
 序奏…初演ではここで聴衆が既に騒ぎ始める。バレエでなく音楽に対しての非難だった事が判る。
 春の兆し(乙女達の踊り)…内股の女達の脚。バレエ伝統の否定。
 誘拐の儀式…男女の群集。対の衣装。
 春の輪舞…民謡旋律。
 敵対する部族の儀式…2つの旋律の対立。
 長老の入場…白髪の老人。クライマックス。
 長老の大地への礼拝
 大地の踊り…地鳴りのような大太鼓。打楽器フルに活躍。

第2部「生贄の儀式」
 序奏…背景も衣装担当が描いた。不吉な空。
 乙女達の神秘な集い…珍しいva6重奏。13人の乙女。1人はみ出す事になる→生贄決定。ホルン強奏。1人中央で動かない乙女。
 生贄の賛美…11回の大太鼓連打。変拍子は生贄の鼓動の乱れ。
 祖先達ま呼び出し…秘儀的な低音楽器。
 先祖達の儀式…静寂。
 生贄の踊り…1人中央で踊る乙女。変拍子のアクセント。斜めにジャンプの繰り返し。疲労していき、痙攣、ついに息絶える。

◆ヴァレリー・ゲルギエフ

2008年、モントゥー/ニジンスキーの初演(1913)を再現したマリインスキーバレエ公演を実現。→同DVD視聴。
原始主義的性格のバレエ、大地をとどろかす音楽を見事に再現した名演。

指揮 ヴァレリー・ゲルギエフ
演奏 マリインスキー劇場管弦楽団指揮。
バレエ マリインスキー・バレエ団
生贄ソロ アレクサンドラ・イオシフィデー
振付 ヴァーツラフ・ニジンスキー(ミリセント・ホドソンによる再構築)
舞台・衣装 ニコラ・レーリヒ(ケネス・アーチャ―監修)
 
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