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2020年01月28日22:17

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Karajan2

亡父のCD棚より。

「親父,何でカラヤンなんだよ。嫌いじゃなかったのか?」
「いいじゃないか,安かったんだから。」(2枚組1,800円。当時としては安い)
「俺は,カラヤンのブラームスなんて聴きたいと思わないぞ。」
「まあ,そう言わず,たまには聴いてみろ」
こんな会話をしたのは,かれこれ20年程前だっただろうか・・・。

以前も述べたが,この手(どの手)の音楽を聴くようになってから,私はカラヤンという稀代の演奏家が,どうしても好きになれなかった。
高校の同級生に,無類のカラヤン好きが居て(多分カラヤンしか聴いていなかったと思うが),何でも最高はカラヤンというのに反発したことと,大いに期待して,大枚はたいて(2,600円)買ったカラヤンのチャイコフスキー(75年録音の第5)が,今二つだったこともあって,私はカラヤンの演奏から距離を置いた。
唯,FMでは結構聴く機会が多く,3種類のチャイコフスキーや2種類のベートーヴェン,マーラーの第4とか,聴いては居た。
まあ,それらに関する感想は置いておくとして,この77年10月から翌年2月にかけて録音されたブラームスについてである。
カラヤンとベルリンフィルによるブラームスには三種の録音があって,60年代初頭の1回目,当盤を挟んで,80年代後半の3回目となる(何れも,独グラモフォン−以下DG−への録音)。
これは確か78年の暮れに,シューベルトの交響曲全集(東芝EMI)とモーツァルトの後期交響曲集(DG)と一緒に,一気に発売された。
あの頃のカラヤンの勢いは,とにかく凄かった。
前年の77年には来日記念盤と称して,10数年ぶりのベートーヴェン交響曲全集が発売されていたし(DG),チャイコフスキーの後期三大交響曲(DG),「新世界」+「モルダウ」(EMI),ブルックナーの第4,第8(CG)等,毎月のように新譜が発売されていた。

当時組み物でもレギュラー盤のLP1枚2,300円の時代であり(1枚ものは2,500円か2,600円),とても買える代物ではなかった。
CD1枚200円〜の現代とは大違いである。
そんな時代への懐旧の念もあって,虚心に耳を傾けてみた。
何せ,私が10代から好んで聴いてきたブラームスの交響曲である。
当時のカラヤンがどのように料理していたのか,興味は尽きなかった。
77年の来日公演で「燃焼度が高かった」と絶賛された第1番。
いやはや立派な音である。
底光りするような重低音,完璧な音程で分厚い弦楽合奏。
第一楽章主部のアレグロは,心地良いテンポで前進する。
粒だった見事なティンパニは,ウェルナー・テーリヒェンかオスヴァルト・フォーグラーか・・・。
流れと見通しの良い第2番。
ホルンの完璧なソロは,ゲルト・ザイフェルトか,ノルベルト・ハウプトマンだろう。
終曲も快適なテンポで,一気に走り抜ける。
83年のザルツブルク音楽祭のライブと同じ印象だ。
録音のせいか,響きが立体的で,奥行きが感じられる第3番。
アナログ録音が,完成の域に達していた証左でもある。
オーボエのソロは,ローター・コッホか,カール・ハインツ=ホリガーか・・・。
フルートはカール・ハインツ=ツェラー,クラリネットはカールライスターか??
名手揃いの木管群の響きが明滅する第2楽章は,抜群だ。
そして定評のある第4。
カラヤンにしては,作為のない直截な演奏だ。
勿論,オケの効果は絶大で,寸分乱れぬ見事なアンサンブルであることは,類を見ない・・・。

・・・ということで,2日かけて4曲を通して聴いたのだが,見事なベルリンフィルの演奏だった。
正確無比にして,効果絶大。
ここでこうすれば,聴き手は引き込まれるだろうな・・・ということが,自然に行われているのが凄い。

で,感想だけど,だからどうの??という感じ。 
ブラームスが,これらの交響曲に託したた思いとは,何だったのだろう。
古典的様式感への回帰,鋼ののように強靱な構成力の陰に秘められた燃えるような情熱と憧憬(第1),微細な感情のの揺らぎ(第4の前半2楽章のような),感情の抑制の不徹底(第3),率直な喜びと自然賛美,そして一抹の憂い(第2)といったものは,分熱く美麗な響きのどこにも感じることはできない。
否,そうしたものを一切排除することで,純粋な音として勝負をかけてくるのがカラヤンなのであり,それが故にスポーティーで恰好良いのであろう。
それが人気の秘訣だったのかも知れない。
仏作って魂入れずなどということを,この20世紀の天才に対して,私如きが言うのは失礼を通り越していると思うが,ゲルマン>ラテン&新大陸を標榜する私が,旧大陸の欧州人であるカラヤンを好まず,新大陸のバーンスタインを好むのは,その辺の違いなのだろう・・・。

何れにしても,偉大なる天才が残した遺産であることは間違いないのだが,やはり私の好みではなかったようだ。
カラヤンの演奏で,私が心底凄いと思ったのは,74年のザルツブルク音楽祭のライブであるドヴォルザークの第8だけだ(正規音源は無い)。
但し,これはベルリンフィルではなく,ウィーンフィルなのだが・・・。
https://www.youtube.com/watch?v=zfP29uN33L8&t=1749s
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