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2019年12月14日17:20

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Scottish Symphony・・・

嘗てマーラーが音楽の全てだ,男のロマンだと豪語していた友だちが,「つまんねえ曲」と一笑に付した一曲。
交響曲第3番イ短調op.56「スコットランド」(F・メンデルスゾーン)
裕福なユダヤ人の銀行員の子として生まれ,早熟の天才の名を恣にした大作曲家だが,20歳前後で,スコットランドの古城ホリロッドを訪れた際に,メアリー女王の悲劇に霊感を得て作曲したという交響曲。
各楽章の描き分けとコントラストが鮮やかで,鉛色の空と悲劇の地である苔生す古城を訪れた際の仄暗い心情を,哀愁に満ちた歌で描く第一楽章。
正に冬の交響曲だ。
続く第2楽章は,嘗て初夏を迎える頃に紹介したが,スコットランドの民族楽器であるバクパイプを思わせるクラリネットの人恋しい調べが爽やかな抒情を紡ぎ出す。
この楽章は夏だ。
人の気配も無く,淡い残照が緑なす大地を照らすような第3楽章は秋だ。
そして,春はまた巡ってくる。
悲劇的でいて疾走感に満ちた主部を終え,終楽章コーダが明るく大らかに結ばれるとき,聴き手は大いなる充実感に包まれる。
メンデルスゾーンを第一級の風景画家と呼んだのは,確か同世代のシューマンだったと思うが,正に言い得て妙だろう・・・。
育ちが良くて,しなくて良い苦労(金と・・・)をしていないだけに,何とも上品で爽やかな楽曲である。
まあ,躁鬱的で得意の絶頂から一気に地獄落ちするような大音響が至るところで炸裂するマーラーの交響曲とは相容れぬ世界だろう・・・。

演奏は,英国の俊英ラモン・ガンバの指揮するスペイン北西部の都市ガリシアのオーケストラ。
いやもう見事の一語に尽きる。
ガンバのCDは,BBCフィルを指揮したアーサー・ブリスの映画音楽集を1枚だけ持っているが,さすが劇伴が出来る指揮者だ。
各楽章の対比を鮮やかに,これ以上無いような美音を引き出している。
驚くべきは,欧州の地方都市のオケの実力である。
旧ユーゴやハンガリーもそうだが,多分人口が数10万程度の地方都市のオケが,この見事な美感に満ちた音楽を紡ぎ出す。
欧州の伝統とは,こうした底力をも含むのだろう・・・・。
そして,この曲を聴く際は,やはりシングルモルトの上質なスコッチのロックグラスを傾けたいものだ・・・。


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