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2019年12月08日20:29

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芝居「常陸坊海尊」 AT KAAT

芝居「常陸坊海尊」 AT KAAT
公式サイトはここ
https://www.kaat.jp/d/kaison
久しぶりに唸るような舞台を見た実感がしました。
「うーん」という声しか出ないような後味でした。
しかしそれは素晴らしさゆえ出た言葉であって
ここまで作りこまれているとは思いもしなかった、というのが実の感想です。

そして「月の光」のピアノを際立たせる、スピーカーの配置。さらに低音を加えた響き具合など、
観る者へ何かを問う感じでもあると思っていました。
実のところ、この戯曲を知らないで見たのですが、まさに自分へ問いかけられるような終わり方をしました。
たぶん、1幕、2幕、3幕と別れているのでしょうが
3幕のあの激しさはとてつもない結論となる。そして観ている私へも問いかけてくるような
強いメッセージがありました。
導入部分の1幕(としておきます)でも
源平合戦の時代と現代とごちゃごちゃな設定なんだな、この後どこで接点ができるのだろう?
と思っていた私が馬鹿だった、と思いましたね。
その次元ではなく、
いつの時代も人間の中にある後悔というたぐいの気持ちを扱った普遍性があるんだと思ったときに
激しい情動が私の中に走りました。

いろいろな登場人物に
それこそ、題名の人物たる特徴をつけて、舞台の場所も
それなりに説得力のある場所であり、
いる源平時代にタイムスリップしてもおかしくはない状況は揃っていました。
ですから
こちらの飢餓感をあおってきたんです、この戯曲は。
しかしその期待は裏切られ、
唯一、
源平時代と
太平洋戦争の負け組という位置づけでは
かぶるな、というだけでした。
でもね、それも2幕までの感想なんです。
圧倒的な存在感を示したのは3幕目なんです。
これは全く予想を覆してくれた。
これだけきれいにはまるとは、と思ったものです。

ですから「うーん」という言葉が出てしまう。
これは考えされられた自分に対してと
予想通りの展開ではなかったことに対して、
さらに想像を超えた展開を提示した舞台に対して唸ってしまうのです。

でもこういうのって芝居のだいご味でもあると思う。

私から言えるのは
静かな流れの中に
大きな情念のうねりがあり、それを時代を超えて飲み込んでしまう
迫力に圧倒されたということです。

神隠し的な要素も
長く生き延びたという要素も
すべて伝説でもある。その伝説を再現しているのかというと
決してそうではない。
逆に伝説に忠実な方がすごく劇的なシーンも多く面白いに違いない。

いや、この「劇的」という言葉はどういう意味なんだろう?
この舞台に「劇的」な要素はなかったのか?そんなことはない、そこいらじゅうに
散りばめられている。
では何と言って人に話そうか?
淡々とした中にも、大きな動きが最後にきっちりと収められてそのまとめ方が
素晴らしい、というか?それでは全く伝わらないな、この舞台の迫力は、と思うのです。
でも「迫力」という言葉を使うと
それを期待して観に行くと必ずと言ってよいほど肩透かしを食らうでしょう。
また、「古典劇」というと、それも間違い。
とにかく人に紹介しにくい舞台なんだが、なんというべきか言葉を選んでしまう。
でもね
劇的空間は確実にそこにあり、物語の展開に度肝を抜かれることはある可能性があると思います。

なかなか再演が難しい演目のような気がしますので今回を機に観に行かれてもよいかと思います。

役者に関しては
白石さんを除いて弱い部分はある。しかし物語がとてもとても良いです。
本当に
本物に出会った気分です。
何を言ってもピンとこない人は見ないでしょうし、迷っているなら見るべし、かな。感想は。

ちなみに休憩10分が2回なのでトイレタイムにならない可能性が高いのでご注意を。
ここまともに20分25分取ったら歌舞伎公演と同じような時間になります。
10分2回で3時間10分。
カーテンコールあり。

最後に「うーん」。いやあ、すごいわ。
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