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2020年03月09日13:18

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【バレエ】パリ・オペラ座「オネーギン」(7日ソワレ)

「バチルド嬢は本当はとても良い人」と言うと、バレエ・ファンの多くは「んなわけない!」と否定すると思うが、実はオネーギンもバレエ・ファンが思っているほど悪い人ではない。(笑)

タチヤーナがまだ野暮ったい頃は冷たくあしらっていたくせに、変身したとたん手のひらを返すサイテーな奴、というのがクランコ版の彼のイメージだが、原作では背伸びする少女(タチヤーナ)を大人(オネーギン)がたしなめているだけ、レンスキーとのいきさつも、オリガを横取りしようとしたのではなく、結果は最悪のものになってしまったが、彼女(オリガ)と共謀してレンスキーをちょっとからかうだけのはずだった。

レンスキーのことは、田舎者と馬鹿にしていたのではなく、その素朴な人柄に惹かれ、本音では友人と思っていた。だからこそ、決闘後は悲しみと自己嫌悪にさいなまされて村を離れたのだし、タチヤーナとの再会後の彼の心情は、心変わりではなく、この時初めて彼女に恋心を抱いた、と言うのが正しい。

クランコさんの本当の意図は不明だが、東バのユカリューシャさんの舞台に心を打たれたのは、原作を熟知する彼女が、クランコ版の物語に深みを持たせたからではないかと思っている。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1968954533&owner_id=3210641


私は病院に立ち寄る事が多く、万一自分がコロナに罹患したら高齢者にうつしてしまう可能性が高いので、今回のパリオペ定点観測は諦めたが、我が師が感想を伝えてくれた。お師匠さまも頑丈な方ではないので、できれば自粛してほしかったが、電車や街中でうつされるくらいなら大好きなバレエの公演会場でうつされる方がマシ! とのことだった。...うつされるのが前提なんですね。(苦笑)

感染力や潜伏期間など、まだ新型の素性が十分明らかでない以上、防疫的には中止すべきだが、大人の事情で強行された公演だけあって、会場の様子は普段と大分異なっていたようだ。入り口付近にはサーモカメラが設置され、体格のいい男性数名も近くに控えていたという。現場でダメ出しされるような人は自制できない人だから、ごねる可能性が高い。それを見越しての対策なのだろう。

博物館や動物園が休館しているため上野駅は空いていたが、文化会館はいつも通りの混み具合、パリオペにしては少なめかな? という印象はあるもトイレの行列は変わらなかったそうだ。マスク着用が観客に推奨され、会場の職員もマスクを着用していたが、それでも外国人(欧米人)はしていないとのこと。郷に入らずんば郷に従え、と言いたいところだが、手に入らないか。プログラム販売員は使い捨て手袋着用、あちこちに消毒、手洗い敢行の貼り紙が。文化会館というより小学校の雰囲気。

「でも、そのあたりを通過すると大きなお花が飾ってあったりと、なんとか雰囲気を保とうとしている感じ。物販の飲み物は紙コップで使い捨て、なぜかソフトドリンクのみでアルコールは無し。サンドイッチなどの軽食は有り」

アルコール飲料は喉や鼻の消毒が多少は期待できそうだが、紙コップでは花見の宴会だな。(笑) 観客はいつもより静かで、上演前のざわめきも少ないとのこと。マスクを着け慣れていない人が、喋りにくかったり息苦しくて黙っていたのかもしれない。

今回のパリオペ公演は初日が2月27日だったから、仮に潜伏期間を2週間とすると、今週12日がその日に当たる。実際はそれよりも長い気がするし、個人差もあれば、27日以前に罹患していた人もいるかもしれないが、杞憂か蛮行か、危機管理が成功か失敗かは、来週には判明することだろう。どうか何事もありませんように。


さて、舞台の様子はと言うと、我が師の御覧になった回の配役は次の通り。
https://www.nbs.or.jp/publish/news/2020/03/-371800.html

良かったですか? の問いには「すごく良かったわけではないけれど、ジゼルよりは満足感があったと思う」とのこと。以下、印象を箇条書きすると、

・マルシャンくんを観たくて取ったが、彼にオネーギンらしさがあるかどうかまでは考えていなかった
・冷たい雰囲気は出せていたが、オネーギンのイメージではない
・踊りは大きく伸びやかだが、同時におおらかさもあるので、そこもオネーギンぽくはない
・体格が良いのでどこにいても目立つが、そもそもオネーギンに鍛えているイメージないし
・都会からきたことを鼻にかける嫌な奴感は出せていた
・タチヤーナを拒絶する怒りの表現が強い(原作ではそこまで怒っていない)
・感情表現は総じて強めで、決闘前に気合いを入れる様子は体育会系
・鏡のPDDは一般的にはアクロバティックな印象があるが、ドロテちゃんとの体格差がありすぎて、軽々とやっているかのよう。こんな振付だったっけ? というほどやすやすとやっていた
・ただしこの時のオネーギンは、意外にもあまり甘さがない。彼女の理想像のはずなのに
・手紙のPDDは、情熱的で若さほとばしるオネーギンの様子があたかもロミオのよう
・あそこまで情熱的に迫られてよく耐えたなタチヤーナ、という感じ
・一方タチヤーナからは落ち着きも感じられたので、年上のタチヤーナに若者が迫っているかのよう
・結果として、2人の実年齢が出てしまった

・レンスキー役(マルクくん)はマルシャンくんと比べると小柄で線も細いので、決闘場面では戦う前から(レンスキーは)絶対死んじゃう感がある
・マルクくんの踊りは綺麗だが、彼も含めてソリスト級まで着地音がうるさいのはなぜ
・マルクくんはエトワール候補だと思うけど、今後オネーギン役をやるとしたら、相方は小柄な人でないと厳しいかも(リフトが多いから)

・足音は、群舞どころかオリガ役のデュボスクさんなど他のソリストまでうるさい
・そのため3幕の幻想シーンは幻想感がまったくない。足音をバタバタさせて次々出てくるだけ
・1幕の群舞はテンポは早くないのに揃っていない
・舞踏会の燕尾服姿や軍服姿の男性群舞は豪華で格好いい
・その一方で1幕の男性群舞、村人スタイルはまったく似合わない
・よって1幕と3幕の振れ幅の違いは、そういう意味では面白い
・名の日の老人たちの演技は、本物をつれてきた? というほど上手い

・という感じなので、それなりに良い舞台で破綻はしておらず、良い踊り手も揃っていたけれど、作品のバランス的には「?」だった

マチュー回と両方観た知人によれば、マチューくんの方がオネーギンらしさがあり、近寄りがたい冷たさなどの雰囲気作りは上手かったとのこと。ただし相方のアルビッソンさんが大柄なので、彼でもリフトは厳しそうだったという。経験値的には完全にベテラン組と若手組になってしまうが、体格的、演技的にはマチューくんはドロテちゃんと組ませた方が「舞台の完成度」は上になったことだろう。若手に経験を積ませたいというのは口実で、知名度を考慮した集客的な意味合いが強かったのではないだろうか。なおマチュー回のレンスキーとオリガ(ルーヴェ&ボラック組)はバランスが良かったそうだ。

少なくとも土曜日ソワレのオケは微妙とのこと。あからさまなミスはないが、誤魔化した感が多々あったという。給料的に余裕がある上手い人たちは感染を恐れて降りてしまい、背に腹は変えられないあまりうまくない人たちがやむなく参加した? というブラックジョークがもっともらしく思えてしまう出来だったそうだ。

〈追記〉

日記をアップしようとした直前に、お師匠さまから追記のメールが。

「マルシャンくんのオネーギン、原作の雰囲気とは違って、田舎には退屈しているけど人生に退屈しているわけではないし、陰りもない。加えて自分の魅力を自覚している傲慢さがある。その魅力で都会では友人の彼女にちょっかいを出して遊ぶなんて日常的だったのだろうな。皆も一途さなんてないから、お互い様で享楽的に生きてきた。それをオリガとレンスキーにやってしまったのが誤り。若さと激しさのあるオネーギンなので、決闘も勢いで受けてしまうし、憤りも覚えるけど、実際にレンスキーを殺めたことで、自分のしたことや過ちを痛感したような感じ。大きな身体をかがめて顔を覆う仕草には、後悔の念が確かに見えた」
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