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2016年01月08日19:38

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少女像の撤去が日韓交渉の条件だ (by池田信夫)

本日(2015年12月28日)、注目の日韓外相会談が行なわれる。きのうの局長級協議では、日本側が数億円の「償い金」を提示したのに対して、韓国側は20億円の賠償を要求したようだが、話にならない。交渉が決裂すると窮地に陥っている朴槿恵政権は困るだろうが、日本は困らない。

韓国の反日感情は、そう古いものではない。日本の占領時代を知っている世代には反日感情はほとんどなく、朴正煕大統領は日韓基本条約という「経済援助」に感謝した。しかし全斗煥政権になってから、1980年の光州事件で大量虐殺を行なったりして反政府運動が強まった。

ちょうどこのころ、日本の文部省が高校教科書の「侵略」を「進出」と書き換えさせたという誤報事件が起こり、全斗煥は国民の怒りを日本に向けさせようと「独立記念館」を建設した。ここには毒々しい蝋人形で「日帝」の悪業が展示され、韓国の小学生は全員、遠足で見学して日本への憎悪を植えつけられる。

このように反日感情は80年代に軍事政権によって創作されたものだが、その中で慰安婦を「挺身隊」と呼ぶ反日団体(挺対協)ができ、これに迎合して高木健一や福島瑞穂が、韓国まで行って原告を募集した。最初はこれは戦時賠償訴訟だったが、すべて原告が敗訴した。

そこで今度は吉田清治の嘘をもとにして、慰安婦が日本軍に「強制連行」されたという報道を朝日新聞が繰り返し流したため、福島らはこれに合わせて、問題を戦時賠償から国家犯罪にすり替えた。

当然この話は吉田の捏造なので、強制連行の証拠は出てこなかったが、1993年に外務省は、「日本が強制性を認めれば賠償は求めない」ということで韓国と政治決着をはかり、河野談話を出した。このときは金泳三大統領みずから「最終決着」と決断した。

しかし挺対協はこれに納得せず、日本の国家責任と賠償を求めて政府を攻撃した。韓国のすべてのマスコミも朝日新聞などもこれに合流したため、1995年にアジア女性基金という民間基金に政府が出資する形で決着した。

ところが今回、同じ話が蒸し返されている。その後、日本政府が慰安婦を強制連行したという新証拠が出たならともかく、むしろ朝日新聞が大誤報を謝罪して社長が辞任したのだから、客観情勢は韓国側に圧倒的に不利である。日本がいま譲歩する理由はない。

ただ北朝鮮や中国の情勢が不安定化している情勢では、日韓で軍事情報の交換もできない状況は危険だとアメリカが判断したのだろう。北の政権が崩壊すると、日本にも大量の難民が押し寄せる可能性がある。

しかし日韓で正常な外交交渉を行なうには、まず韓国政府が挺対協に少女像を撤去させることが必要条件だ。それもできないようでは、挺対協が政府より優位にある状況が変わらないということなので、政府間で何を約束しても守られない。
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2015年12月29日
日韓外相会談で追い詰められたのは朴大統領だ

あわただしく開かれた日韓外相会談が終わった。双方とも準備不足とみえて、協定文書も残せず、「合意事項」を日韓別々に口頭で発表し、記者会見もなしという異例の形だった。

その結果がどう出るかは、今の段階ではわからないが、経緯をメモしておく。外務省のサイトでは、日本側は
安倍内閣総理大臣は,日本国の内閣総理大臣として改めて,慰安婦として数多の苦痛を経験され,心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し,心からおわびと反省の気持ちを表明する。
韓国政府が,元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し,これに日本政府の予算で資金を一括で拠出し,日韓両政府が協力し,全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復,心の傷の癒やしのための事業を行うこととする。
と具体的に書いている。日本政府が予算(10億円)を出すのに、財団の運営は韓国政府が行なうというのは、日韓基本条約と同じく使途の不明な「つかみ金」だ。これに対して韓国側は
韓国政府は,日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し,公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し,韓国政府としても,可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて,適切に解決されるよう努力する。
としか書いていない。日本は首相がおわびして10億円出すのに、韓国は「努力する」だけだ。「安倍首相は譲歩しすぎだ」と怒る向きもあるが、それ以前に少女像の撤去さえ実行されるかどうかわからない。「努力したけどできなかった」ということもありうる。

常識的には、政府間で合意したことを民間団体が拒否することはありえないが、韓国は常識的な国ではない。少女像を設置した挺対協は、今回の合意を「外交的談合」と否定する声明を出した。
平和の碑[少女像]は、被害者と市民社会が1000回を越える水曜日を見守り日本軍「慰安婦」問題解決と平和を叫んできた水曜デモの精神を称えた、生きた歴史の象徴物であり公共の財産である。このような平和の碑に対し、韓国政府が撤去および移転を云々したり介入することはありえないことだ。
今までは、韓国政府が何を約束しても、挺対協が拒否権を発動した。今回の発表が口頭で行なわれたのも、撤去が確約できないためだろう。今のところ韓国メディアは、これまでのような全面否定の論調ではないが、求心力を失った朴大統領が、最強の圧力団体、挺対協を説得できるかどうかは疑わしい。

少女像が撤去されるかどうかは、単なる公道上の障害物の問題ではない。それは韓国が、国際法(ウイーン条約22条)違反の行為を是正する法的強制力をもっているかどうかの試金石である。それができなければ、韓国は主権国家としての統治能力がないことを世界に示す結果になる。

韓国が今回の合意を履行しない限り、日本は財団に出資する必要はない。そうすると朴政権は、致命的な打撃を受けるだろう。今回の交渉で追い詰められたのは、安倍首相ではなく朴大統領である。

追記:中央日報によれば会談後、韓国外交部当局者は「これ[少女像]は明確には合意事項とみることもできず、日本側の憂慮の提起について韓国側が承知したということであり、交渉の対象ややりとりをしたというものではない」と説明した。 つまり韓国は少女像を撤去するとは約束していない。






【韓国は主権国家という「近代の嘘】
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時事小言1月から始まるアゴラ経済塾は、経済学の観点から政治の失敗を分析しようというテーマなのだが、その第1回が図らずも日韓関係だ。

この問題を100年以上前に、客観的にみていたのが福沢諭吉だった。晩年の『時事小言』は、彼の「国権論」を集めたものとしてリベラルな福沢ファンには評判がよくないが、加藤典洋氏はこれを高く評価している。

敗戦でアメリカに屈服したトラウマを隠蔽することが左翼にも右翼にも共通の「戦後の嘘」だが、この背景には近代国家を「独立の主権国家」として理想化する「近代の嘘」がある、と加藤氏は指摘し、それを最初に暴いたのが福沢だという。

丸山眞男も「近代日本思想史における国家理性の概念」という論文で『時事小言』を(意外にも)高く評価している。その冒頭で、福沢は「天然の自由民権論は正道にして、人為の国権論は権道なり。或は甲[民権論]は公にして、乙[国権論]は私なりと云ふも可なり」と書く。

これは「痩我慢の説」の冒頭の「立国は私なり」という言葉と同じ、福沢の一貫した政治哲学だ。国家を公と考えて「国家理性」などと呼ぶのは欺瞞で、それは戦争のための暴力装置だから、raison d'etatは「国家の存在理由」という意味で、丸山はこれを国家利害と言い換えている。

だから福沢の「立国は私なり」という言葉は、国際政治学でいうリアリズムの先駆だった。特に彼が意識したのは、清を中心とする華夷秩序との戦いだった。日本は幸いその圏外にいたが、朝鮮は清の属国として貧窮の極にある。これを救うために、彼は朝鮮国内の「独立派」を支持したが、金玉均などの独立派はクーデタに失敗して惨殺される。

このあと起こった日清戦争に福沢は賛成し、多額の義捐金を出した。これにも批判が強いが、彼にとってこの戦争は、一足先に文明化した日本が華夷秩序に支配された朝鮮を解放する「私の戦い」だった。丸山は「国家理性」論文をこう結んでいる。
権力政治に、権力政治としての自己認識があり、国家利害が国家利害の問題として理解されているかぎり、そこには同時にそうした権力行使なり利害なりの「限界」の意識が伴っている。これに反して、権力行使がそのまま、道徳や倫理の実現であるかのように、道徳的言辞で語られれば語られるほど、そうした「限界」の自覚はうすれてゆく。「道徳」の行使にどうして「限界」があり、どうしてそれを「抑制」する必要があろうか(強調は原文)。
日韓の対立を喜んでいるのは、中国である。華夷秩序の特徴は、まさに国家を「道徳や倫理の実現」として語ることだ。中韓の「歴史問題」への執着は、彼らがいまだに華夷秩序の中にいることを示している。今回の日韓会談は、韓国の「近代の嘘」を明らかにしただけでも、安倍外交の勝利と評価していいと思う。
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