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2015年06月03日20:13

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習近平の9号文件(イデオロギー秘密統制)

■ニューヨークタイムズのスクープ「9号文件」=「小毛沢東」習近平と李克強改革■

記事の要点

・ニューヨークタイムズのスクープ。中国共産党の
イデオロギー統制秘密文書・9号文件の内容が明らかに。

・左派色を強める「小毛沢東」習近平、その真意はまだ分からない。

・9号文件の新自由主義批判は李克強改革批判に通じる。


■秘密文書・9号文件

2013年8月20日、米紙ニューヨークタイムズは記事「China Takes Aim at Western Ideas」(中国、西洋の理念を標的に)を掲載しました。NYT中国語版にも翻訳記事があります。2013年4月付で地方党機関・政府に配布された秘密文書・9号文件、「現在のイデオロギー領域の状況に関する通報」の内容を明らかにしたものです。

秘密文書といってもその存在自体は広く知られており、ウェブを検索すると「**市政府**部局は現在のイデオロギー領域の状況に関する通報をもとに勉強会を行った」的な記事がごろごろヒットします。政府の偉い人たちが何かを勉強しているのはよくわかるのですが、その中身についてはさっぱりわからないというのが中国流。ニューヨークタイムズはその中身を入手した!というのがスクープのポイントかと思われるのですが、8月上旬に出版された香港誌・明鏡月刊43号には全文が掲載されているそうで。ニューヨークタイムズの報道を受け、ウェブ版でも秘密文書の大半を読むことが可能です。

9号文件では以下のとおり、7つの西側思想を指弾しています。

中国共産党中央弁公庁9号文件「現在のイデオロギー領域の状況に関する通報」(2013年4月22日)
1 :西側の憲政民主の喧伝。現在の指導者と中国の特色ある社会主義政治制度を否定する狙い。
2:“普遍的価値”の喧伝。共産党執政の思想的・理論的基礎の動揺が狙い。
3:市民社会の喧伝。共産党執政による社会的基礎の瓦解が狙い。
4:新自由主義の喧伝。我が国の基本的経済制度の改変が狙い。
5:西側の報道観の喧伝。我が国の党によるメディア管制の原則と新聞出版管理制度への挑戦。
6:歴史的ニヒリズムの喧伝。中国共産党の歴史と新中国の歴史の否定が狙い。
7:改革開放に対する疑念。中国の特色ある社会主義の性質に対する疑念。


■世界を騒がせた「七不講」も9号文件絡み

中国関連報道を読み続けている方には「7つの禁止項目」というネタにぴんときたかもしれません。今年5月、上海華東政法大学の張雪忠講師が「大学で話してはいけないこと7項目を通達されたよ、とほほ」とマイクロブログでつぶやき、世界的ニュースとなりました(5月時点の日本語報道の一例として。福島香織「北京も「乱」になってきた」)。

「七不講」と呼ばれた、大学関係者向け通達は以下のとおり。

普遍的価値を語るべからず
報道の自由を語るべからず
市民社会について語るべからず
市民の権利について語るべからず
中国共産党の歴史的過ちについて語るべからず
権貴資産階級(権力者・資産階級)について語るべからず
司法の独立について語るべからず

前述の9号文件とかなりかぶっています。この「七不講」ですが、9号文件に関連したものと言われています。また本サイトでも取り上げた5月の反憲政キャンペーンもこの9号文件絡みとみて、まず間違いはないでしょう(参考記事:「共産党を信仰せよ」「中国に憲法はあるが憲政は要らない」官制メディアの怪論文ラッシュから習近平政権の性格を考える)


■8月には新たなキャンペーン、有名ブロガーも誓い

また記事「権力を檻に入れるために、中国の処方箋は憲政かそれとも毛沢東か」で取り上げましたが、8月に入り、再び反憲政キャンペーンが起きています。またネットが守るべき「7つの守るべき一線」という不思議なキャンペーンも(新華網)。

法律法規の守るべき一線。
社会主義制度の守るべき一線。
国家利益の守るべき一線。
市民合法的権益の守るべき一線。
社会の公共秩序の守るべき一線。
道徳・気風の守るべき一線。
情報の真実性の守るべき一線。

すべて7項目にそろえてきているのがにくい演出(?)ですね。この守るべき一線についてはネットメディアだけではなく、「大V」(フォロワー数10万人以上の認証アカウント、ネット有名人の意)も対象。ネット有名人は社会的責任があるのだから慎みたまえ、というのは中国共産党のかねてからのお達し。政府の求めに応じて多くのネット有名人が誓いを立てるなど仰々しいキャンペーンを実施しています。


■習近平は真性左派なのか?

さて問題は9号文件と関連の政治キャンペーンをどう位置づけるかです。「中国共産党中央宣伝部はいつもどおり粛々と仕事をしているだけ。いつもどおり」という見方もあれば、本サイトが常々主張しているとおり「ここまで気合い入っているのはおかしくね?習近平が左派路線、すなわち良き共産党の復活によって統治の正統性を回復しようとしているのでは?」という見方もあるでしょう。

どちらの見方が正しいのか。それはもうちょっと先を見なくては分からないと思います。中国共産党の新たな政治キャンペーンである群衆路線キャンペーンが来夏まで続くことは決まっているので、それ以降も同じ事を繰り返すならば、習近平に真性左派認定証をプレゼントしても良いかと思われます。


■9号文件の新自由主義批判は李克強批判か

というわけでしばらくは決着を見ない政治キャンペーンの意味はひとまずおいて、別のポイントをシメに使わせて頂きます。今回の9号文件の7項目でちょっと面白いのが4番、新自由主義批判なのです。七不講や七つの守るべき一線には含まれていない内容というだけでも、その新鮮さがわかっていただけるのではないか、と。

明鏡の報じた9号文書全文によれば、新自由主義批判は以下のとおりです。

4:新自由主義の喧伝。我が国の基本的経済制度の改変が狙い。

新自由主義は経済の絶対的自由化、徹底した私有化、完全な市場化を主張し、国家による経済への干渉と調整にすべて反対する。米国を首とする西側諸国はグローバリゼーションの名の下に世界に新自由主義を押し広げようとしており、ラテンアメリカやソ連、東欧などの国々に災厄的な結果をもたらした。さらには自らも国際金融危機の苦難に陥り、抜け出せずにいる。新自由主義は中国において以下のような形態で表現されている。「市場万能論」を吹聴し、中国のマクロ調整が市場の効率と活力とを押し殺していると主張する。公有制に反対し、中国の国有企業は「国家独占」であり、効率を低下させ市場経済秩序を破壊する、「全面的に私有化」するべきだと主張する。こうした論調は実際のところ中国の基本的経済制度を改変し、政府による国民経済の命脈に対するコントロールを弱めるものである。

新自由主義の定義はこれでいいのか?西側諸国は今、新自由主義を広めようとしているのか?といった疑問はとりあえず置いておくとしても、この項目をまじめに読むと、政府の関与を減らし市場システムの導入を目指す李克強改革とは明らかに真反対の性格を持っていることは間違いありません。

上述の「習近平は真性左派か?」との問いと根本的には同じ話なのですが、習近平と李克強の関係についても、「習近平は左派の振りをして共産党元老たちをなだめて、右派的改革を進めようとする李克強を支援している」という読みと、「習近平は真性左派で李克強とは相いれないが、国内行政は首相の役割なのでとりあえず李克強改革を放置している」という読みがあります。

これまた現時点では結論は分からない話なのですが、習近平の左派的振る舞いやイデオロギー管制への力の入れようが尋常ではないので、後者じゃないかなと私は思っています。少なくとも9号文件が明鏡の報じたとおりの内容であるならば、この文書は李克強改革批判をする材料となりうるでしょう。

李克強が名宰相の器かどうかはわかりませんが、中国が今、重大な岐路に立たされているのは事実です。改革が必要なタイミングで李克強を後押しするべき習近平がイデオロギー遊びに惚けていたり、あるいはイデオロギー優先の視点から国内の実務的改革の足を引っ張るようなことがあれば、大変残念な結果をもたらすことになるでしょう。

「小毛沢東」と揶揄されるようになってしまった習近平が今後、どのような動きを見せるのか。私の予測を裏切ることを願ってやみません。
(執筆者:高口康太)

引用終わり。





中国が内側から崩壊する原因が、ここに書かれている。
すなわち、西側(現代)の普遍的価値である
「報道の自由を主張実行」
「市民社会を実現すること」
「市民の権利を主張すること」
「共産党の歴史的な過ちを総括すること」
「権貴資産階級(権力者・資産階級)を告発すること」
「司法の独立を擁護実行すること」
が、市民に行き渡ると、共産党中国は崩壊すると考えているわけだ。
共産党は、チュニジアで起きたジャスミン革命や、エジプト革命(市民が独裁ムバラク政権を倒した)を固唾を飲んで注視していた。
そして、香港の市民運動を制圧した。
独裁者や中国共産党のような強権がどの様なメカニズムで崩壊するかが、自身、よく解っている。

結局は、この様な文献が出回っても、インターネットのブロガーに圧力をかけても、隠せば隠す程、遅かれ早かれ、共産党の虞れている様な事態が到来するだろう。
つまり、市民運動によって、権力者や特権階級が糾弾されて、民主化運動が抑えきれなくなる。
毛沢東時代の中国の英語の教科書は、最初の一行がこうだった。

We learn English for revolution.






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