すっかり忘れていたが、昨日は梶井基次郎の命日「檸檬忌」だった。
彼と初めてであったのは高校時代である。
教科書に載っていた「冬の蠅」という小説。
何とも暗く辛気くさい話である。
まだ光の中にいたボクには、とても耐えられない内容だった。
授業でなければ、真剣に読み通せない。
でも描写の精緻さには圧倒された。
再び出会ったのは大学時代である。
脳天気な高校時代は既に遠く、大人に近づいた分だけ光は影に浸食されていた。
悩ましき日々。
影の部分に、梶井の世界はするりと忍び込んできた。
「課せられているのは永遠の退屈だ」という悪魔的なフレーズに、悩めるボクはコロリとやられたのである。
その出会い以来、ボクの精神は光よりも影に寄り添うようになる。
ニヒリズム。
これが文学の魅力であり怖さなのだ。
そこに太宰や安吾が加われば、碌な青春時代は過ごせない。
過ごせるわけがないのだ。
だがそんな季節もいつかは終わる。
熱病もやがては快癒する。
青春は遙か遠く、脳天気な中年オヤジは、今夜の酒のことしか考えていない。
レモンでも搾ってみようかと・・・。
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