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2019年10月18日22:52

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「笑えシャイロック」/中山七里

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この人の作曲家シリーズばかりを追いかけてきたが、
なんだか面白そうなタイトルに惹かれて、つい手に取った。



就職氷河期、帝都第一銀行への入行を果たし、
同期の出世頭で都内大型店舗へ異動した結城真悟は順風満帆、
のはずが、配属されたのは渉外部=銀行の裏道 回収業務。
付いた上司は、シェークスピアの産んだ最強の金貸しから
「シャイロック山賀」と呼ばれる回収の鬼、「山賀雄平」だった。
着任早々、山賀は回収業務に結城を帯同する。

一 わらしべ長者
債務者:株売買で借金を作った51歳男無職。
自宅を訪問しただけで夫婦仲まで察知。
妻に離婚を薦め不動産を売却させ、回収。

債務者:町工場の社長で技術者。
技術、従業員ごと会社を売却させ、回収。

結城は、回収のスゴ技を眼前で見ることとなった。

山賀が幼少時、両親が不当な貸し付けを受け、煎餅屋を潰した。
その経験から、山賀は言う。
「真っ当な貸し方をすれば、真っ当に返済される。
真っ当に返済されないのは、最初に真っ当な貸し方をしなかったせいだ。」
「この世で一番大切なものはカネだ。」
「一番は命では?」という結城に、
「違うな。命も愛もカネで買える。
 金額の問題があるだけだ。」
「バブル崩壊の兆しがあった時きちんと回収し先送りにしなければ、
 経済は、あんな崩壊の仕方はしなかった」
この辺りまで読んで、中山さんのお仕事小説?と思ったら…

山賀が刺殺された!
やっぱりミステリーか?!

短期間ながら密に山賀の指導を受け、
少なからず傾倒し始めていた結城は、
山賀の抱えていた案件を全て引き継いだ。

二 後継者
債務者:創業者の長男でバカ息子な社長。
結城は社員の職を失わせまいと会社温存を図り、
社長が友人と自慢する芸能人の覚醒剤事件をからめ慌てさせ、
銀行の関連会社に借り換えさせ、回収。

三 振興衆狂
債務者:怪しい新興宗教教団。
お経をCD-R化し8万人の信者に買わせ、回収。

四 タダの人
債務者:落選した元議員
実質数百万ていどなのに10億円と評価した絵画が担保。
元議員の人脈を使い、絵の値を上げる画策をし、10数億で転売し、回収。

五  人狂(にんきょう)
債務者:指定暴力団のフロント企業。
バブル期の再開発計画が崩壊。
その筋の仕事に活用できる建築への展開を提案し、回収。

と同時に 山賀刺殺の犯人も浮かぶ。

エピローグ
人事が刷新された。
結城はいつの間にか渉外部のエースと謳われるようになっていた。
笑顔が山賀に似てきた結城。
今の彼の陰の呼び名は「シャイロック結城」だった。



お仕事小説として、充分楽しめる作品。
刺殺事件は不要!と断言する。
むしろ、シッカリ山賀さんを活躍させてくれたほうが
もっと話が拡がったと思う。
山賀さんの「融資と回収論」、もっと聞きたかった。
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