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2019年08月23日17:59

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「昨日がなければ明日もない」/宮部 みゆき

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なんとなくお気の毒な男「杉村三郎」が
不本意ながら探偵となって、
ごく普通の人々の“悪意”が少しずつ溜まって、溜まって…
イッキに表層化した犯罪と対峙していく物語のシリーズの5作目。
(「誰か Somebody」「名もなき毒」「ペテロの葬列」
 短編集「希望荘」「昨日がなければ明日もない」)

「希望荘」以来2年ぶりの杉村三郎シリーズ!
図書館でも大人気で、待たされ待たされ待って待って…
期待はどんどん膨らみ…

やっと手元に届いた、
中篇3本を収録する本書のテーマは、
「杉村vs.“ちょっと困った”女たち」。
自殺未遂をし消息を絶った主婦、
訳ありの家庭の訳ありの新婦、
自己中なシングルマザー、の3人を相手に、
杉村が奮闘するというキャッチコピー。
コミカルミステリー寄りの作品? 
実は、あまり好みでは無いな〜と思いつつ、
表紙をめくった。


  絶対零度
杉村探偵事務所の10人目の依頼人は、50代半ばの品のいいご婦人。
一昨年結婚した27歳の娘「優美」が、自殺未遂をして入院したらしいが、
婿に阻まれ、1ヵ月以上も面会ができず、メールも繋がらないという。
母親と婿の関係がこじれたのだろうと調査し始めた杉村は、
陰惨な事件が起きていた事実を暴いてしまう。


  華燭
どうしても「娘の婚約者にイヤな感じをぬぐえない。」という父親の依頼で、
男の身元調査を終えた後、(何の問題も無い男だったが…)
杉村は、ご近所の小崎夫人に、
中学生の娘「加奈」に付き添って、姪「静香」の結婚式に出席してほしいと
頼まれる。 小崎夫人は妹(姪の母親)と絶縁中で欠席するのだ。
そんな当日、2つの式と披露宴が行われる予定だったが、
思わぬ事態が発生する……。



  昨日がなければ明日もない
杉村は、事務所兼自宅の大家である竹中家の関係で、
29歳の朽田美姫からの相談を受けることになった。
美姫は16歳で娘「漣」を産み、後
別の男性との間に息子「竜聖」をもうけ、
今は、別の“彼”と一緒に暮らしている奔放な女性。
今、離れて暮らしている6歳の竜聖の命が狙われていると言うのだ。
調査の結果そんな事実は見つからず、一方、
美姫(実は三姫)が中学時代から周囲に散々迷惑を掛け続け生きてきたことが
美姫にそっくりな妹の三恵から語られた。
そして…
竜聖を使って金銭を要求できないと悟った美姫が消えた…


3編とも、宮部さんらしく(笑)
読後感がドロリとした、いわゆるイヤミスなのだが、
これまでの、イヤ〜な読後感の“苦み”や“えぐみ”が旨味に感じられてしまう、
構成の巧さや、展開の妙味が…  残念ながら、無い!もうやだ〜(悲しい顔)バッド(下向き矢印)

絶対零度は、途中から読めてしまうのだが、まさかそれが本当に?
と、動機があまりに醜い。

華燭は、どうしてソコまで?と…
新婦2人、他に解決策は無かったかな〜?
それでも、微笑ましくてイイなと思ったのは、
後で判明した、始めに登場した父親の婿候補を嫌う理由。

そして表題作、昨日がなければ明日もない
これ、色々伏線をチラつかせ、
特に三恵を美姫にソックリとした設定、
それらを駆使してもっと凝った中編にできそうなのに、
安易にコーしちゃう?

宮部さんだからこそ膨らませた期待は、
しおしおと萎んだ。

ただ、杉村(もう小泉くんしか頭に浮かばない)が、
離れて暮らす娘を折に触れ想い、
さまざまな事象に絡めて心配するのが、
なんとも愛おしい。
この魅力で、次号を待ってしまう。
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