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2019年03月25日17:01

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押し寄せるは万の軍勢

風に翻る、軍旗と、軍勢の放つ暴威が押し迫る。

対するは、唯一騎。

いや、一人と呼ぶべきか。

嘲る笑う、男共に、慈悲を乞えと蔑む目。
彼らの獲物は、唯一騎、一人に向けられる。

そうその命は風前の灯火でしかない。
取り囲まれ、進退窮まる彼。

一笑に付して、咆哮す。
地を震わし、天を揺るがす咆哮に、たじろぐ軍勢をよそに、彼は万の軍勢に飛び込む。
その刃が、敵を切り裂き、敵の獲物が彼を捉える。

しかし、彼は一向にひるまず刃一つで包囲網を悔い破り、残った敵を殺し続ける。
どれ程の血が流れただろう。
どれ程の血を流したのだろう。

骨はくだけ、手は崩れ落ち、その足は歩を刻めぬ程になろうとも彼の殺戮の宴は終わらない。
既に刃は折れて、敵はもう彼を人とは捉えられず、逃げ惑う。

大地がおびたたしい死でうめつくされた時、彼と呼ばれた魂は消え果てた。

汝、それなるか?
我、かくありなん。

天より声が聞こえ。
地より返答が響く。

何故、彼はこのようにり果てたのか?
余人知る者無し。
余人知る者無し!

ただ、彼だけがわかればよい。
彼だけが満たされればよい。

ある哀れなる、狂える戦士の死。

万の軍勢は今目前にあり。
魂を震わせよ。
血肉は全て贄とせよ、全てを狂気に委ねて、刃と化せ。
汝、死を呼ぶもの也。
生を捨てて、勝利を得よ。
勝利の先にあるは、栄光ではない。
誇るに足る死也。

いざ、戦場へ。
死して、宮殿に名を刻め。
忘るるな、先を見てはならぬ。
今を見て、その命を投げ捨てよ。

汝、刃也。
全てに等しく、死を与うる、刃也。

対価は命にして、誇り也。

そして地を震わし、天を揺らす咆哮が鳴り響いた。
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