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2020年02月28日17:59

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お金を知らない子(11)

健司は稔の言葉に唖然とした。
からかっているとは思わないけど何だかなぞなぞ
の問題を投げかけられているような気になった。


「仕事は少ないけど多いってどういうこと?」
健司は改めて聞いてみた。


「やらなければいけない仕事は少ないんですよ」
「やらなければいけない仕事って?」
「生活に不安がないように必要なものを生産して
 流通させることが大切なんだって習いました」
「あ〜、そういうことね」
健司は納得した。
そして改めて聞いた。


「たしかに必要なものだけなら労働者は余るね。
 それで労働時間が減るのは納得するんだけど、
 多い仕事って何だろう?」
「それは、みんなが楽しく暮らせるように新しい
 仕事を工夫して作るんです」
「新しい仕事ってどんな仕事?」
「それは冬なら冬のレジャーとか人によって楽し
 み方が違うでしょ?それをみんなで考えるんで
 す。自分の趣味や楽しみ方を一緒に考えること
 が仕事としているんです」
「なるほどね〜。遊びや趣味がみんなの暮らしに
 役立つから仕事として成り立つんだね(笑)」


生活に必要な生産と流通が満たされれば、残りの
時間を楽しく生きていけるようにみんなが考える
ことで時間を有効に使う。
健司は労働という概念が違うことに驚いた。


「それで通勤ラッシュというものがないんだね」
「通勤ラッシュって?」
「あ〜、さっき言った朝の通勤の混雑だよ」
「そうなんですか」
「会社員って朝出て夕方まで働くのが仕事だから
 毎日出勤することに義務感を感じているんだよ」
「それで給料をもらって生活するんですね」
「お金がないと生きていけないからね」
「お金って大切なんですね」
「お金は便利な道具だと昔から言われてきたけど
 稔君の話を聞いていると情けなくなるよ」


稔は「情けなくなる」という言葉に反応した。
なぜ情けなくなるんだろう?
お金のない世界のほうが便利だと思うけど。
稔は健司に聞いてみた。


「どうして情けなくなるんですか?」
「今までお金を使って助け合うことが素晴らしい
 と思って生きてきたんだけどね。なんだかな〜
 って感じなんだよ」
「なんだかな〜って?(笑)」
「お金のある世界って物々交換の世界なんだよ」
「物々交換って?」
「昔はね、自分が欲しい物は自分が持っている物
 と交換しないと手に入らないんだ。それを物々
 交換と言っているんだけどね、それでは不便だ
 から物の代わりにお金というものを使って交換
 しているんだよ」
「それで人生ゲームの理由がわかりました」
「どういうふうに?」
「お金が無くなったら借金してでもゲームに参加
 しなくっちゃいけないって」
「そういうことだね(笑)」




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